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ジャンさんの帰還とエルフという種族と

「康紀様」


 少し強めに呼ばれ、はっとなりアステスさんを見る。


「お二人とも宜しくお願いします」


 僕は席を立ち二人に頭を下げた。

こうして基礎トレーニングと勉強以外に、

剣の修行と魔術の勉強も追加された。

僕にとってはどれも初めて知る事ばかりで、

新鮮だった。

侯爵とグルヴェイグさんは僕にも分かるように

丁寧に教えてくれる。

二人曰く、教える時はどんな人にも分かるように

教えるのが本当の教えだ、と言う事で

本当に分かりやすくまた僕自身も

もっと知りたいという気持ちにさせてくれた。

初めて先生と呼びたくなる人に出会えた気がする。



「剣を振るう時は、己の迷いを断ち切るように勢い良く振り斬りたまえ。相手がどうこうより君自身の心の問題だ」

「感覚を内から始まり外へと広げる。粒子を感じて呼応させ、貴方の成したい事と繋げなさい」


 筋肉痛と頭痛の日々が続いたものの、

暫くするとそれにも慣れてきた。

時間が無い中での鍛錬はもっと

自分の中でじれる気がしたけど、

そんな余裕は全くなくて。


「おぉ……久しぶりに見たけど誰かと思ったぞ」

「ジャンさん!」


 久しぶりに屋敷に現れたジャンさんは、

髭を蓄え狩人のような恰好をしていた。

握手を交わし中へと導く。

話はジャンさんの体を気遣い次の日にとなった。

仲間が無事に帰ってきた事がこんなに嬉しい事なのかと、

僕は初めての事に戸惑いつつも喜んだ。


「ほう、思いの外冷静な太刀筋だ」

「はい。心は熱く頭は常に零度を保つように心掛けています」


 剣の型は最初のうちだけで、その後は剣戟を交わし合った。

ファウスト侯爵からすれば子供相手なのだろう。

片方は後ろ腰へ添えてレイピアを使う様に剣を振るっている。


「武はあった方が良い。だが文官の方が長生きできる」

「それはどうしてですか?」

「上に立つ人間からしたら、武は粗暴な者たちの持ち物で軍はそういう物たちを管理する入れ物。指揮するものに武はそれなりであればいい」

「……平和になれば疎む対象になる……と」

「そういう事だ。能ある鷹は爪隠すという言葉は実に正しい。猜疑心の塊である王などに目を付けられれば、良いように利用されて戦いが終われば処分される。それが救国の英雄だとしても、だ」

「アダガ王はどういう死に方をしたんですか?」

「どういう風だと思う?」


 侯爵の剣筋は乱れなく僕の剣撃を丁寧に捌く。

恐らくそれまで先陣を切って戦った王だ。

襲われて斬られたというのは考えにくい。

そして平時はカリスマもあっただろうから、

周りにも腕の立つものは居たはず。

となるともう一つしかない。


「毒ですか?」

「そう、毒だ。毒は実に楽で良い。どうやったって手に入る。犯人が必要なら目障りで部下の多い将軍に嫌疑をかけ、王の近くの医者も共犯で吊るせば終わる」

「えげつないですね」

「だろう? 悪魔より余程恐ろしい事をやってのける。だがね、それこそが終わりの始まり。自ら終わりの鐘を鳴らす行為に他ならない」

「統一を成し遂げた王を毒殺なんてしたら、統一という偉大な行為を成し遂げても誰かが気に入らなければ毒殺される。そんな国じゃ誰もが何かを成し遂げる事を諦めてしまう」


「建国の王ともなればそれだけ敵もいるが味方も多い。結局のところ首謀者諸共地獄へ一直線さ」

「もしかしてグラディウス国はそこを……いやその毒は」

「まぁ興味は尽きないがね。ただこれだけは言える。我々と同じような動きをする諸侯もいる」

「返事待ちですね」

「ああ。座して待つだけじゃなく、我々も示さなければならない」

「組むに値する力を有している、と」


 確かに今の僕たちは個だ。

それでは幾ら巨大な力を持っていようと、

共に国に相対する事は考えられない。

数は力である現実は変えがたい。


「中々もどかしいですね」

「そうだねぇ。でも焦ってどうにかなるものでは無いし、今はしっかりと地に足を付けて来たるべき時に備える。商団を追い返すのは良い練習になる。それと並行して原住民との交渉もしていく。私は諸侯と連絡を密にしていくから」


 そこから暫く剣を交えて終了となった。

が、僕は基礎トレーニング後、

グルヴェイグさんの授業が待っている。


「前にも話したと思うけど、南側は特に未開地なんだ。それこそゴブリンのように話にならない奴らも居れば、ボブゴブリンのように話になるものもいる」

「食わせ者も居るって事ですね」

「そうさ。人間と変わりない。康紀はこれからそういうのと交渉していく訳だから、気を引き締めて行かないとね」

「はい」

「この地域で問題なのは蛮族もそうだけど、エルフが一番厄介さ」

「エルフ……」

「耳がピンと尖っていて色白。細身で高身長、細面の金髪で目が細く鼻筋が皆通っている」

「それだけ聞くと美男美女の集団ってだけですが」


「それを聞けば彼らは喜ぶだろう。兎に角自尊心が高く、エルフこそがこの世で一番賢く世界で最初にこの大地に根を下ろした生物だと自負している」

「……それって何か根拠があるんですか?」

「何もない。ただ彼らの貯蔵する書物が多岐に渡って多くあり一番古い、そして何より彼らの里にある大樹が傷一つ付かずエルフと共にあるのが証拠だと言っているだけさ」

「樹齢が凄い樹の根元に住んでるんですね。でもそれだけで最古の生き物って難しいですよね」

「この世界には大昔に何度も消滅の危機が訪れているが、大樹が滅びず彼らはそこにずっと住み続けている」


「と言う事はまんざら嘘でもない、と」

「ただし彼らは外との接触を極端に嫌っている。知的欲求はあるだろうに自らの貯蔵する書物にのみこだわっているんだ」

「調べもせずに一方的な主張をするなんて大分拗らせてますね」

「兎に角大分癖がある種族さ。正直交渉するのも難しいと思う」

「そういえばダークエルフも居るって聞きましたけど」

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