領地の加護
「進めば答えが分かる?」
僕の問いに口を開いて答えようとしたけど、その途端体が揺れ始め徐々に崩れ始めた。
「あ、ちょっと!」
「どうやら時間切れらしい。最後に一つ、力を貸せて良かった」
「まだ聞きたい事が」
「後は自分で調べるが良い。ではな”D.E.M” 同じ事を繰り返さぬ為に我が力を使うが良い」
崩れて体は土に帰った後、光の珠が中に浮いていた。それはゆっくりとこちらに近付いてくる。その光はとても温かで強い光を宿していて、僕とデムの周りをゆっくりと飛び回った後に僕の胸の前で止まった。その光の珠を両掌で包むと、強い光を放った。そしてその時像の記憶を垣間見る。像は昔この地区の人たちを守護する為にここに根を下ろした。
それから地殻変動などがあり、部族たちは東側に退避する事になり像はここに残されたようだ。ただ部族たちはとてもこの像を大事にしていたし、御祈りや供物を捧げていた。別れの時も盛大な祭りを行ったようで、像の満たされていた気持も伝わった。
「そっか……満足だったんだなぁ」
―エネルギーを吸収。変換します―
エネルギーを吸収……何か能力がアップしたりするのだろうか。光の珠はいつの間にか消えていた。
「良かったわね」
「何が?」
「この地区の加護を得たわ」
「そうなの!?」
「そりゃそうでしょ。この土地で長年守り神として聳え立っていた像を吸収したんですもの」
「……分らないんだけど僕が守り神みたいな存在になったってこと?」
「神様代行みたいな?」
「……益々人間から離れて行く……。知能も神がかったりして?」
「神様が皆賢いならラグナロクなんてないのよ」
「この世界でもラグナロクってあったの?」
僕が問うと、フェンとヴィトが同時に吠えた。辺りを見回しても何もないようなので改めて二匹の顔を見ると、ジッと僕の顔を見ている。ラグナロクはあったって言いたいのかな。
フェンとヴィトは僕の言う事を理解しているような気はするし、行動がただの動物には思えない。ラグナロクがなんであるか理解までしていたら、この子たちは一体……。
「兎に角これでここは私たちに有利に働くわよ」
「私たち? 僕だけじゃないのならそりゃ助かる!」
「仮に押し込まれてもここでゲリラ戦をやりつつ立て直しっていうのが出来なくもないってのは大きいわね」
「なるべくそうならないようにしたいけど、切り札が出来たのは本当にありがたい……やった」
「勿論味方と思ってた奴らに襲われた時もここで陣取れば有利になるわ」
「嫌なこと言うな……」
「エルフに襲われたのに懲りないわねぇ」
「それは言わないで……」
しょんぼりしながら僕たちは周辺を散策する。昔家族で見に行った縄文時代の跡地みたいな、生活の痕跡が残る村跡地を通り更に奥へ。ただあちこちに人がいた痕跡がある。少し壊れかけてるけど橋も掛ってるし、家畜を放牧していたであろう柵もあった。
「しかしここ良いなぁ仮拠点とか作りたくなってきた」
「良いかもね。ここは康紀が譲られた領域。御隣の領主もおいそれと手を出せないわ」
「隣って結構簡単にこれそう?」
「無理ね。尾根があるから。そういう意味でこの地域はそこが強み。その上未開地だもの、誰も手を出したがらないわよ」
周囲を散策しつつ、雑草を抜いたり動物とかが居ないかどうかも調べたりして回りながら喋る。
「うーんホントに穏やかな木漏れ日が心地良いなぁ……」
「昼間だからね。ひょっとすると夜が怖いかも」
「取り合えずここまでにしとこうか。明日には階段もある事だし」
「そうね。気分転換にはなったでしょ?」
「気分転換どころか大きな一手を手に入れて大満足だよ」
シルフとフェンとヴィトと共に、来た道を引き返す。初めて来たところなのに、像が土に帰った後は庭を散策するような気持ちの軽さで歩けているのが不思議だ。
それから何事もなく屋敷まで帰って来て鍛練をして遅い昼食を頂く。




