苦肉の策
私が新町長になり、最初の仕事がやってきた。
そう、貴族との挨拶だ。
「この町の、町長様に就任の挨拶に来ました」
と、青年貴族が言ってきて、来客室へ案内したそうだ。
私も来客室へ移動し、今回の主要人物がこれで揃った。
来客室にいる、私の目の前に、様々な問題の対象の太った貴族がいる。
その隣には褐色の肌の少女がいて、それと一度面識のある貴族の息子ボルグがいた。
「この度はわざわざ遠い所まで、リストア様に御足労頂きまして誠にありがとうございます」
「ほう、お前が今度のこの町の町長か?
思っていたより若造だし、噂通りの商人には見えないな」
「いえいえ、まだまだ若輩者でして商人として力不足を実感しておりますよ。
噂など周りの過大評価ですよ」と、受け答えたら。
副町長とボルグが、顔を歪ませていた。
「そうか、そうか。
未熟者だろうが精進して、少しでも町の発展に尽せよ。
ワシのようになガハハハ」
「はい、リストア様のご高明は、この町にまで聞き及んでおりますので」
「ははは、今度の町長は謙虚な良い町長だな元町長殿」
「そ、そうですね」と、ミルコさんが答えた。
まぁ、いろんな含みを入れての、ミルコさんへの嫌味だろう。
「よし、お前が作ったという施設の見学を、直々にしてやろうではないか」
「申し訳ありません、リストア様。
この会談に不備が起きてはならないという事もあって、店舗二つを本日は店休日にさせていただいてます」
その言葉に対して貴族はこう言った。
「それなら明日まで、この町に滞在するとしようか……」
内心ヤバいと思ったが、[ポーカフェイス]の効果で顔にでる事はなかった。
「そうですか。
それでしたら、リストア様を一般人と同じ施設を利用させるわけにはいきませんので、明日は、貸し切りという形で三号店の営業をさせていただきます」
「貸し切りか悪くないな、なぁ元町長。
今度の町長は、分をわきまえてるみたいだな。ガハハハ」
ミルコさんへの口撃が、ちょくちょく入るのは色々あったせいだろうな。
副町長は、クソ貴族扱いしてたし……。
「明日、リストア様が宿泊されている施設に副町長のミルコを迎え向かわせますので、それまでこの町をお楽しみいただければと思います」
「そうか、そうか」
今回の会談では、本性らしい本性は出してこなかったが、すでに若い少女を連れ回してる時点で、軽くアウトな気もするが……。等と考えていたら。
「それでしたら、今回の町長就任の会談をこれで終了します」とボルグが会談の終了を宣言して、貴族連中が、来客室から出て行った。
「ふぅ……」
無事に、ひと段落ついたな。
「なぁ、町長。
あそこまであの貴族に、卑屈になる必要はないんじゃ?」
「あの方とは、初対面ですから。対応もそれなりの対応をしないとね……」
腰が低い男だと思わせておけば、あの貴族は、確実につけ上がるだろうからな。
むしろ、それが狙いだし……。
「明日は、ミルコさんあの貴族を迎えに行くんだから、丁寧に対応して下さいよ。
キャリーをお店に呼べないから、私が、風呂の準備することになるからさ」
「そういうことですか……。貸し切りっていうのも、意図があってだよな?」
うんうんと、頷いておいた。
「あの貴族が、怒り出して何をするのかわからないし。
そんな中に、お客さんを入れるわけには行けないでしょう」
「二号店は、閉店のままなのは?」
「二階にエミリー達が居るんだ。
彼女達に極力近づけたくないし、どちらか片方の施設は見せないと、あの貴族も納得しないだろう。
あの貴族の事だ、貸し切りだと分かれば悪癖が始まるさ。
それで、あの貴族を評価させてもらうよ……」と、言って。
この場を離れた後、二号店のお休みの旨をコッペに伝えに行ったら、社員全員で店舗の大掃除をしますと、息巻いていた。
一日分の、経費とかは大損だが、これも必要経費と思って割り切ろう。
そして、そのまま自宅へ帰宅した。
「ただいま」
「「「おかえりなさい」」」
三人から、出迎えられた。
「お兄さん、疲れた顔してますよ」
「そんなに、顔に出てる?」
「ハジメさんは、すぐ顔にでるからわかりやすいですよ」
「うそん、シェリー。俺って、感情顔に出てるか?」
「出てるよー」「そうか……」
俺が商人として通用しているのは、スキルのおかげみたいだ。
なんか、軽くショックだ……。
「ハジメさんは仕事の時と私達といる時は、気持ちを切り替えてるからだと思いますよ」
「そうだよね……。ある種、商人失格の烙印押されたかと思ったよ」
「あれだけ、大商いの連発しといてそれはないかと……」
確かに、[ポーカフェイス]のスキルなくても、商談成功させてきたしな。
少し、気持ちを持ち直せた。
今日あった出来事を三人に伝えて。
明日も貴族が滞在するため、三人にはここにいてもらうことにした。
「三人とも、退屈かもしれないけど。明日まで我慢してね」
「「はーい」」
「お兄さん、明日の三号店の店長業務は?」
「私がするから大丈夫、安心してて」
「一人の為に、しかも無料で作業する。大赤字確定というね」
「「「凄く嫌そうな顔してる」」」三人からの総ツッコミだった。
「あはは、これは私にもわかるな」と、苦笑した。
こんな日常を守れるよう頑張ろう……。
その日は、狩りにいかず。
そのまま眠りについた。
……。
…………。
朝だ、あまり乗り気ではないが起きるしかないな。
いつも通りに身形を整えて、寝室をでる。
三人が、椅子に座って待っていた。
「おはよう、みんな」
「お兄さん(お兄ちゃん)おはよう」
「ハジメさん、おはようございます。朝食準備できてますよ」
「ありがとう、頂いてから。三号店に行くとするよ」
料理を食べ終えて、仕事に行こうとした時に、「いってきます」と、言ったら。
「「「いってらっしゃい」」」と、三人から送り出された。
徒歩で歩きながら、三号店へ向かう。
とりあえず、今日、私ができることは、風呂の準備くらいのものだ。
ある程度、お湯を浴槽に入れて、温度を安定させとかないとな。
一応、お付きの女性もいたので、女湯と男湯両方にお湯を張るとしよう。
貸し切りの浴槽で、あの少女と、あの貴族を同じ風呂に入れてしまうと、その先の展開は読めてしまうが。
私の予想では、あの貴族は女湯にあの少女と一緒に入るのだろうと予想していた。
褐色の肌に垂れる白いシャンプーの液体、凄く良いと思うが。
当店は、そういうお店ではないんだがな……。
施設の鍵を開けて、蛍光灯のスイッチを入れて浴槽にお湯を入れる準備を始めた。
まず金樽のお湯を45度に調整して。
男湯と女湯にお湯を流す。
まず男湯に向かい、掃除道具を使い洗い場の掃除を行う。
その次に、浴槽だ。浴槽の掃除が終了し。風呂のお湯を溜める為の水門を降ろす。
これで、男湯の掃除と湯張りは完了だ。
これと、同じ要領で女湯も掃除を行った。
この施設は、女性しか入らないので、少し背徳感を感じながら掃除をしていた。
女湯も同様に掃除と湯はりを終えて。
本日の勤務スタッフと件の貴族を、待つばかりとなった。
[クリア]の魔法で、一応身綺麗にしておき、カウンターでスタッフ一同が集まるのを待った。
スタッフに集まってもらってもらった後に、本日が貸し切りの特殊営業であることを伝えて、女性スタッフには、貴族様の悪癖が出た場合は、こちらに連絡を下さいとだけ伝えた。
正確にいうと、権力による強要が起きたさいに連絡が欲しいというわけだ。
女湯のスタッフは、女性なのでそういう強要が、想像できないわけではない。
前もって、最悪のパターンを潰しておく必要があるからだ。
「あー、社長さんよ。今日だけうちの店の女を店員として使わねーか?」
とロイズさんが提案してきた。
「それは夜の女性を、見回りスタッフとして使うってことです?」
「まぁ、そういうこったな。
高額になるだろうし、やりたがる女はいると思うが?」
「ロイズさん、それお願いできますか?」
毒をもって毒を制す。
これくらいの立ち回りして見せてこそ、商人ってもんだ。
こういった部分は、世の中の暗部と付き合いがある、人間が身内にいた方がやりやすいのだ。
人間綺麗事だけじゃうまく回らないのも事実な訳で、どんな物事も上を目指すつもりなら清濁併せ呑む覚悟がいる。
「支払いが、行われなかった際は、私が自費で支払います」
「それじゃ、店のスタッフ連れてくるぞ」と、ロイズが言ってきた。
しばらくして、ロイズが見覚えのある一人の女性を連れてきた。
「ウチの、一番人気の娘だ。社長も知ってるだろ」
ざわ……ざわ……。場がざわついた。
「あら、お兄さんが相手じゃないのは残念だけど。
大きい獲物なんでしょ、頑張るわよ私」
「いや、頑張らないで下さい。最悪を想定した場合の人員ですからね」
「けど、貴族様が噂通りの人だったら、その最悪展開しかないと思うけど?」
酒場のお姉さんが言ってきた。
……ごもっともである。
だからこそ、金で割り切れる、女性を使う必要があるのだ。
「私も不本意だけど、お兄さんに頼られてるからやるんだからね。だから♡お兄さん本番できるようになったら指名してね」
ざわ……ざわ……。
(おい、社長あの子と本番だってよ……。社長不潔よ!!私がいるのに……)
といろんな声が聞こえてきたが、このザワつきは仕方ない。
清濁併せ呑むとか考えてた以上、この辱めを受け入れるしかない。
社内の評判を犠牲にしながらの、苦肉の策が今始まろうとしていた。




