Ⅰ 1-7
「南方貴教とかだったか…」
そう発しつつ、頬杖を付く方の手と足を組み替えながら“徹”もとい“和也”は言い放った。
「お前を逮捕する」
「ふあっ?」
思わず奇声を発してしまった。
「ちょ、ちょい待ち。な、何を言っているんだ? お前は」
「だからお前は逮捕されたんだよ。南方貴教」
「ふあああっ?」
全身が硬直してしまい立ち尽くしていると、
「…何だ? ミランダ警告の件でもやって欲しいのか?
ああ。知らねえのか。ミランダ警告」
「知ってるわ! 『C〇I』めっちゃ観てるわ!」
「じゃあ、手錠でも掛けて欲しいのか?」
!
「安心しろ。今はまだ手錠はしない。
ほれ、とっと仕事に行け。遅刻するんじゃあないのか?」
訳がわからない。
「まあ、せいぜい自分の行いに思い巡らせてみるんだな」
全くもって、何が何だか全然わからない!
「さーて、撤収撤収」
そう言うと、“和也”は立ち上がりすたすたと玄関の方に歩いて行ってしまった。“テ〇アイ”の構成員も後に続き、やがてバタンと乱暴にドアが閉められる音がした。
貴教にはわからない。
というよりも知らない。
何故ならば、聞いてさえもいないのだから。
自分が何故逮捕されたのか?
自身が一体何の犯罪を犯したのか?
己が逮捕された罪状が何なのか?
何も、何一つとして、全くもって聞かされて等いない!
知らぬ間に硬直が解け、あまりの出来事にぽかんとしていた貴教であったが、
!
時計を見た。このままだと本当に遅刻してしまう。
貴教はエリートビジネスマンでもある。時間厳守、タイム・イズ・マネーは長年に渡る社長業で骨の髄まで染み込んでいる。其れ以前に生真面目な事この上無い事は謂う迄も無いのであるが。
貴教は愛車に乗り込み、キーを差し込み、エンジンをかけた。
「いくぞ。アウディ」
断っておくと、貴教の愛車はア〇ディでは無い。アウディというのは彼の愛車の名前である。犬や猫に前者に対してはイヌ、後者に対してはネコと名前をつけない様なものてあり、「蒼◯流星SPTレイズナー」劇中にて、主人公であるアルバトロ・ナル・エ◯ジ・アスカは、愛機であるレ◯ズナー、厳密には搭載されている(表の)AIをレイと呼称しているのであるが、若し貴教が同じ立場ならば、そんな在り来りな名前をつけるのは理解が出来ない。実際の貴教の愛車はポル〇ェ――緑色のポル〇ェ930ターボ(ー)である。因みに人工知能の類は表も裏も最初から付いてはいない。大体からして、オートマどころかマニュアルだし。




