Ⅰ3-17
「ステージの周りを見ると、制服警官数人と私達の自前の警備員達が立っていた。人目を引きながら、落ち着かない様子で何をすればいいのか分からない様子だった。キューが振り下ろされる度、警官達は仲間にアドバイスを求めているのか小声で話し合っていたが、実際に暴力を止めようとはしなかった。 ステージ裏に立っていた、ひどく不安そうな顔をした制服警官に話し掛けた。
『なぜ、ケンカを止めようとしないのか』
警官は持っていた無線機を見せてこう言った。
『一時間からずっと応援を依頼しているのに、会場を巡回するように指示されただけなんだ。万が一の時に緊急車両を会場に誘導する為には渋滞を解消させる方が先なんだと。ここにいる連中を相手に出来る程の人手がない。こいつらは狂っている。地元の警察に対応できる体制は整っていない。機動隊を出してもらった方がいい。俺達にはお手上げだ。どうにもならない』
それから辺りを見回してから耳打ちした。
『ここにいるバカどものことなんて知ったこっちゃない。こいつらのことなんてどうだっていい。こんな狂ったヤツらに我慢してつき合ってやる筋合いはない』
こうなると後はもう“襲ってくる”だけである。
(そして、「緑のスーツを着た男」か叫ぶ…)
そうなのだ。テ○アイはイ○ズマロックフェス(・オルタ)の主演監督を貴教だと言った。ならば、オルタ○モント・フリーコンサートの“主演監督”は誰だ? 其れに当たるのは誰だ? オルタ○ントの悲劇に於けるハイライトとは? クライマックスとは何だ?
「そ、そうだ」
貴教は両腕に精一杯の力を込めて上半身を起こして叫んだ。
「ス○ーンズはどうなった!」
「んっ?」という顔でファイル持ちのテ○アイその一が貴教の方を見た。
「『ロ○リングス○ーンズはどうなった?』って言ってんだ!」
テ○アイその一はファイルを閉じた。
「テメエで企てた悪だくみのためにテメエの命をはったってか?」
その一はぺたんと頬を打つと、そのまま顎をひとなでした。
オルタモントの悲劇に於いて最も象徴的なシーン。其れは何と言っても――
貴教は早口で語ってやった。
「ス○ーンズが一曲目をかき鳴らした途端、乱闘に火がついた。『ア○ダー・マイ・サム』の一小節目が会場に鳴り響くやいなや、いきなりステージ前で殴り合いが始まった。ビリヤードのキューを持った少数の若者は観客に襲いかかり、それを止めようとする人々に喰ってかかった。
ス○ーンズは一端演奏を中断し、観客に落ち着くように促し、演奏は再回されたが、演奏が進むにつれ乱闘はどんどん増えていった。それはまるで暴力が音楽の一部になっているみたいだった。若者はキューを振り回しながら群衆に突入した。群衆は真っ二つに割られた。
演奏は再度中断され、今度はキ○ス・リ○ャーズがマイクロフォンに向かって叫んだ。『暴力がこれ以上続くなら演奏はしない』と。ミ○ク・ジ○ガーはオーディエンスに呼び掛けた。『もし俺たちが一つなら一つになろうじゃないか!』と。
ラブ&ピースさ! まさにラブ&ピースだったとも! だけどムダだった! ス○ーンズは演奏を再開したんだけどな!
で、どうなった? だけど、どうなった?
何が起きた? 何が起きたんだ!
言ってみろ。言ってみろよ!」
テ◯アイは其の一も二も三も何も言わない。
「答えは、『あいつ、銃を持っているぞ!』、だ!」
あと2話てⅠの3は終わりです。




