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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第三百十五話 誰にも知られたくないことは、誰にも口にしないこと!


「あれ? エルマー先輩、帰るの早くない? もう帰るの?」


 学園の授業終わり、部室――というよりは研究室といった感じの技術開発部に顔を出したルディは、荷物を纏めるエルマーの姿に首を傾げる。そんなルディに、エルマーは肩を竦めて見せた。


「ああ、すまないなルディ。今日は少し用事があってな? そろそろお暇しようかと思っているんだ。悪いがクレア嬢にも言っておいてくれないか? 今日の部活は休みでも良いし、此処でのんびり過ごしてくれても良い」


「用事? 用事ってあれ? 第二近衛騎士団関係の話?」


 首を捻りながらそういうルディに、エルマーは少しだけ疲れた顔で首を縦に振る。


「広い意味ではそうだな。第二近衛騎士団にジムという男が居るんだが……知っているか?」


「ジム? なんかどっかで聞いた事がある気がするけど……」


 そう言って脳内メモリーをたどるルディ。やがて、何かに気付いたかのようにポンっと手を打って見せた。


「ああ! その人、あれだよね? 『燃える水』を発見したっていう!!」


「そうだ。『燃える水』は可燃性の物体でそのエネルギーは凄まじいものがある。これは今俺たちが作っている『飛行機』を飛躍的に進化させることの出来る新発見だ。技術院も注目しているしな」


「確かに『燃える水』があれば飛躍的に飛行機は発展しそうだね」


「まあな。勿論、飛行機だけの話では無いが。これから先は民間利用も進むだろうし、国民生活も豊かになる。まあ、その功績でジムを小隊長に昇進させたのだが……」


 一息。


「……この男、なかなかに優秀でな? まあ、平民出身で元大工なので所謂『学』は無いが……頭の回転が速い。正直、平民でよくぞここまで目端が利くと感心するな。貴族のパーティーにも幾度か出席しているが評判も上々だ。第二近衛にその意図は無かっただろうが……やはり、平民にも素晴らしい人材はいる」


「へぇ。そうなんだ」


 エルマーの言葉に、ルディは少しだけ驚いた様な顔を見せる。それは終ぞないエルマーの姿であるからで、詰まる所。


「エルマー先輩がそこまで褒めるって凄いね? 自分以外、全員バカとか思ってそうなのに、エルマー先輩って」


 これである。そんなルディの言葉に、エルマーはものすごーくイヤそうな顔を浮かべて見せる。


「……失礼な事を言うな。別に俺は全員をバカだとは思っていない。実際ルディ、お前やアインツは賢いと思っているしな。全員が全員、バカだとは思っていない」


「エディやクラウスは?」


「エディは……昔は賢いと思っていたんだがな? だがアイツ、『やらかした』だろう?」


「……まあ」


「ルディの前で言うのもなんだが、クラウディア嬢にも問題があるパターンなのは分かる。分かるが……流石にアレはやり過ぎだろう?」


「……それも、まあ」


「まあ、我慢出来なくて爆発したと思えば情状酌量の余地はある。あるが……もう少し上手く立ち回れば良いのに、とは思うぞ?」


 呆れた様にそう言ってため息を吐くエルマーに、ルディ、言葉もない。完全に正論です、ありがとうございました。


「……一刀両断じゃん、エルマー先輩」


「それだけの事をしているからな? 一応言っておくが、あいつの軽率な行動でアインツの父君は徹夜続きだったんだぞ? 仮にも王子ならば、自らの影響力の大きさを考えろと言いたい」


「……」


「そういう意味ではルディもだがな。お前の場合、自己評価が低すぎる。過信はダメだが、自信は無いといけないぞ? だから――」


「く、クラウス!! クラウスは!!」


 エルマーのお小言に、慌ててルディがカットに入る。今からエルマーに叱られても敵わないと思ったルディの言葉に、エルマーは冷めた目で。



「あいつはバカだろう、どう考えても」



「……」


「無論、アホではない。頭だって悪くはないだろうが……それを全部差し引いてもあいつは『バカ』だ。そもそも、脳筋が過ぎる」


「……こっちも一刀両断だね、エルマー先輩」


「そもそも合わないから、性格的に。まあ、それは良い。ジムの話だ。正直、信賞必罰と平民でも出世できる、というモデルというか、宣伝係にしようかと思っていたのだが……先ほども言った通り頭の回転は悪くないし、クラウス並みとは言わんが運動神経も良い。手放すには惜しい人材だ。その人材から少しばかり、『お願い』されてな。今日はそのお願いを果たすためにちょっと街に出るんだ」


「へぇ。お願い、ね。そのお願いってなに? 機密に関することなら聞かないけど……」


 そんなルディの言葉に、エルマーは真面目な顔をして。


「ルディ」


 一息。




「誰にも知られたくない秘密を守る方法はな? 誰にも言わないことだ。それが信頼できる人間であっても、な?」




「え? なに、エルマー先輩? 国家機密かなんかなの、今日のお願いって!?」


 幾らルディと云えども、エルマーも言えなかったのだ。『後輩の【女の子】を助けてあげてください!』というお願いをされている、なんて。何処にユリアの存在があるか分からないのだ。


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