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平凡王子は今日も密かに悪役令嬢の『ざまぁ』を志す……けど、愛がヘビー級の悪役令嬢に溺愛されている平凡王子はもう、まな板の上の鯉状態ですが、なにか?  作者: 綜奈 勝馬


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第三百七話 イジメられてはいない、イジメられては


 ドン引いた表情でクレアとリーナをみつめた後、まるで何かを誤魔化すようにジムはコホンと一つ咳払いをして見せる。そんなジムの姿に、クレアもリーナも気を取り直したように居住まいを正す。


「え、えへへ~。すみません、ジム。ちょっと調子に乗ってしまいました」


「……ちょっと?」


「だ、だいぶ……で、でも! ジムだって変じゃないですか!! いや、変って言うのはあれですけど……なんていうか、キャラが違うって言うか……」


 口の中でモゴモゴとそう喋るクレア。そんなクレアにジムは『ふっ』と小さく笑って見せる。その笑顔は何かに疲れた様な笑顔であり、そんなジムの表情にクレアもリーナも息を呑んで。



「……そりゃ、そうだろう」



 ジムの言葉に、二人してぽかんとした表情を浮かべて見せる。そんな表情の変化に気付かないのか、ジムは言葉を継ぐ。


「……俺、今までレークス領暮らしだろう? お嬢もリーナも知ってるけど、礼儀作法なんて必要ない田舎の村出身な訳だろう?」


「……実家の領地をド田舎とまで言われると若干、むっとしますが……まあ」


 そう言ってジムの言葉に頷いて見せるクレア。ちなみにだがジムは『田舎の村』といったがド田舎とは言っていない。完全にクレアの被害妄想である。


「そんな田舎の村出身の俺が、急に貴族の前で礼儀作法を完璧に身に着けて、ウィットに富んだ会話をして、貴族令嬢をやれ、キレイだ美しいだ――怖い顔するな、リーナ。社交辞令だから!!」


 ハイライトの消えた目でジムを見つめるリーナに大慌てで両手をぶんぶんと振って否定するジム。そんなジムにジト目を向け続けた後、それでも話が進まないと思ったか、リーナが目のハイライトを戻す。


「……どんな目をしてんだよ、リーナ。ハイライトが自由自在って……ま、まあ! ともかく、そんな訳で貴族のパーティーとかに呼ばれたらよ? 俺だって演技の一つや二つは必要だろうが!! 何時までもガキの時みたいに、虫だ蛇だときゃっきゃしてて見ろ? 第二近衛の品格……なんてものは無いも当然だけど、流石にザマが悪いだろうが!!」


「……まあ」


 俺から私に変わる様に、大人になれば場面場面で必要な立ち居振る舞いが求められるのである。まあ、ジムの暮らしていたレークス領では然程重要ではないが、貴族社会ではそうも言っていられないのだ。結果、ジムは貴族社会でのお付き合い様の、『ジム貴族仕様』の自分自身を作り上げて。



「――恥ずかしすぎるだろうが、流石に。完全にキャラクターを変えて行かなくちゃ、途中で素に戻るんだよ。『俺、なにやってんだろう……?』って」



 机に両肘をついて頭を抱えるジム。不憫である。そんなジムの頭をリーナがよしよしと撫でた。


「そ、そうなんだ……た、大変だね、ジムも」


「……ああ。貴族のパーティーなんて、美味いもんが沢山あるよ? あるけどな? そんなもん、ガツガツ食ってたら『あら、あの方は……やはり、お生まれが悪いと……』みたいな目で見られんだぞ? 張り付いた笑顔で、腹鳴らさない様にしながら……美味そうなものを眺めるだけなんて殆ど拷問みたいなもんだぞ!!」


 残すのが美徳――というより、食べ過ぎるのは意地汚いと思われるのが貴族社会だ。まあ、メンツ商売の所もあるし、『喰える時に食っとけ。いつ、腹いっぱい食えなくなるか分かんねーぞ?』と言わんばかりの貧乏領地であるレークス領にない発想なのである。そりゃ、キツイ。


「……でも、お嬢様はそういう所ないよね? よく食べて、よく寝て、よく遊ぶ元気っ子のイメージだけど……」


 ジムの頭を撫でながら、視線をクレアに向けるリーナ。そんなリーナの視線にクレアは肩を竦めて見せる。


「まあ、我が家はですね~。貴族の中でも諸侯貴族の分類ですし? 近衛に選ばれたりパーティーに呼ばれたりするのは宮廷貴族の皆さまですから」


「違うの?」


「最近はそうでもないですが……肌感覚的には洗練された所作は宮廷貴族の方の方がある気がしますね」


 まあ、ディアの様に諸侯貴族でも所作の綺麗な令嬢はいるし、クラウスの様に宮廷貴族でも粗野な人間もいるが、割合として、という話である。


「そうなんだよな。俺も貴族令嬢って言えばお嬢しか知らなかったからよ? こう、パーティーで見る令嬢に比べてお嬢が異質っていうか……そう思っていたんだよな」


 そう言ってジムは視線をクレアに固定して。



「お嬢……大丈夫か? お嬢、スタンダードな貴族令嬢からだいぶ外れているから……イジメられたりとかしていないか? 俺、心配でさ……」



 真摯な瞳で見つめるジムの視線から、クレアはそっと視線を逸らす。流石に、心配してくれているこの兄貴分には言えなかったのだ。『どっちかっていうと腫れ物扱いというか、ともかくいじめられてはいません。いじめられては』とは。クリスティーナとディアの『活躍』のお蔭で、どっちかっていうと危険物扱いだし、最近のクレアは。



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