第四十三話 作戦会議
41話の続きの映像ですね。
前の話は実質的には閑話みたいな感じです。
サタナはこれからも引き続きダンジョン攻略を進めつつ特別講師を演じるとして、だ。
「メアリさんはこれからどうするんだ? 例の秘密の部屋にでも?」
「はい。学生時代の噂を思い出しましてね。当時は成績に囚われそれどころではありませんでしたが、その噂はこういったものでした」
この学園には秘密の部屋があって、そこには、錆びれた古書が存在する……。
「噂の出所も真偽のほども確かではありません。ですが情報が少ない以上、縋れるものには縋らないとですから」
そのことなんだがと。
俺はふう、と一息ついてからノエルのことを告げた。
「メアリさんは覚えているかな? 出会った当初、メアリさんは俺の相談に乗ってくれたろう? その時ちょっとしたトラブルがあったじゃないか」
「トラブルとな!? それはなんじゃ?」
目を輝かせながら前のめりに迫るサタナ。
やはり胸元が強調されているが、その程度で俺をどうこう出来ると思うなよ?
「ああ、あの時の騒動ですか。覚えていますよ。眼鏡の青年が酒代を全部支払うと言った時は驚きましたね」
「ああ。その件なんだが、もっと驚きのことがある。あの時の金髪眼鏡の妹がこの学園の生徒なんだ」
俺が言うと「まあ!」とメアリさんは口元を抑えた。
「それはとんだ偶然ですね! 不思議な巡り合わせもあるんですねぇ」
「それだけじゃない」
ちょっと勿体付けすぎかな? 内心でそう思いつつ、俺は核心に触れた。ノエルの言った「エイミュ」という言葉をそのまま発音したのだ。
メアリさんはおろか、サタナも首を傾げている。
「のう、レインよ。その「エイミュ」というのはなんなのじゃ?」
待ってました、と言わんばかりに俺は口にした。
エイミュという言葉の持つ意味を。
「古代文字で、光という意味だ」
想像していた通りの光景が俺の目の前に広がった。
と思うや否や、突如としての笑い声。カラドボルグだ。
「あははは! なによアンタたち、そんなにあんぐりしちゃってぇ。まじウケるんですケド~!」
「いや、驚くに決まっているじゃないですか」
「そうじゃそうじゃ! レイン、どういうことか説明せい!」
俺は求められるがままに説明した。ノエルという少女と出会ってから今までのことを。
その結果、ノエルが古代文字を読めるにとどまらず、レイウス家には【エイミュの書】なるものが眠っているということ。そしてノエルのが物憂げに口にした、あの言葉も。
「あんなものは誰も知らなくていい。ノエルはそんなことを言っていたぞ」
「これは少し事情が変わりましたね」
「うむ! そのノエルという少女をここに連れてくるのじゃ!」
断る。俺はそう断言した。
「あの子の魔法属性は闇。故に、この学園では酷く差別を受けてきた子だ。いくら俺と友達になってくれたとはいえ、「古代文字がどうのこうの」と捲くし立てられたら不愉快に決まっているだろう。それに起因してか、家庭環境も複雑みたいだしな」
なるほど、とメアリさんは神妙な面持ちを見せた。
在学していただけあって、闇属性の異質さを理解しているのだろう。
だがサタナは。
「闇属性? それがどうした。妾の友、魔王・エルゼムの属性も闇なのだが? あっ、ちなみに友は友でも戦友だけどのう。お互いを高め合う良き友なのじゃ。エルゼムの方は妾と違って人間を毛嫌いしておるがな」
はあ、話が通じないな。
そんな俺の心情を代弁するかのように、カラドボルグが言った。
「アンタ、マジもんのおバカさんね。人間と魔族の文明なんて同じな訳ないじゃない。魔族は闇属性を信仰しているけれど人間はそうではない。むしろ忌避している。そういう話デショ~?」
「なんだと!? おバカさんとはなんじゃ、おバカさんとは! 妾は何とか運動という方法を考案し、レインのためにいくつものダンジョンをクリアした天才頭脳の持ち主なのだが!?」
草の根運動な。
ていうか、やはりこいつらが揃うと騒がしいな。
まあ、こういうのもたまには悪くないんだけど。
「とりあえず!」
俺は手パンパンと二度鳴らした。
「メアリさんは予定通り、魔法史科の臨時講師として活動しつつ秘密の部屋の古書とやらを探してくれ。サティも同様。この学園で教師を演じつつ、引き続きダンジョンの攻略に挑む! もしかしたらなにか見つかるかもしれないからな」
「レインさんはどうするのですか?」
メアリの問いにサタナも追従する。
愚門だな、と俺は笑った。
「俺はノエルとの親睦をさらに深めるよ。お互いに信頼関係を築き、ここぞという場面で俺たちがこの学園に来た目的……つまりは、古代魔法・リェーイスのことについて尋ねようと思っている。もしかしたらノエルは、リェーイスという言葉の意味を理解できるかもしれないからな」
各自納得したところで、タイミングを見計らったかのように鐘の音が響いた。これにて昼休憩は終了である。
「じゃ、これにて一旦解散ってことで」
そう言って立ち上がった俺の元に。
ドンッ! と何者かがぶつかってきた。
「うおっ!?」
驚きつつ振り返ると、そこに居たのはノエルだった。
「ノエルじゃないか。どうしたんだ?」
問うなり、ノエルはいきなり俺に抱きつき、
「レイン君、助けてっ!」
などと言いだしたのだった。
ちなみに、この光景を見ていたサタナが絶句していたのは言うまでもない。後にメアリさんですらそうだったと聞いた時には少しばかり驚かされたが。
「どうしたんだ?」
「わ、私の……私の友達が!!」
言いながら、ノエルは懐から一枚の肖像画を取り出した。妙にリアリティが高く、色彩も判別できる。おそらくは魔道具によって作られたのだろう。
そして――。
「……そんな」
そこに映されている人物の姿を目に、俺はその肖像画を落としてしまったのだった。あまりのショックに、全身が急激に脱力してしまったのだ。
「ああ、なんてことだ。ノエル、君はこの子と友達なのか?」
俺が聞くと、ノエルは涙目で頷いた。
「私、レイウス家の動向を探るために信頼できる情報屋を探していたの。そんな時に出会ったのがその子――リリルだったのよ!」
言いながらノエルは一通の手紙を取り出した。
「私の部屋に届けられたけど、宛先は何故かレイン君になってて……」
緊迫した空気を感じ取ったのだろうか?
メアリさんもサタナもカラドボルグも。
誰一人として、口を開こうとはしなかった。
俺はノエルから手渡された手紙を受け取り、ゆっくりと封を切った。
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