兄姉の思いと
「ところでこの話を聞いて、
あなたは怒りも悲しみも大きく表さずに
暗く深く湖の底に沈んでいるかのように
静かにいるのは、どうしてですか。」
失礼だとは思った。
だが、素直に思ったことが、
言葉と出たようだ。
この場において、
傍目からは確かに違和感を感じ得よう。
それは冬桜の夢で、
姉達が伝えてくれたもの故だからだろう。
「私はあの時、もうあの日々が
戻ってこない事を知りました。
その日々を奪った者たちへの
怒りなど全く起こらず、
あるいは感じ取れないほど
大きな失望感に、
思い出と共に死のうと感じるほどでした。
全く食べられず、全く動けず、
ただ庭先を眺めて思い出に
耽っていたある晩、
夢の中で、みんなに言われました。
『ここで死んではならない。』と。
そう言われて、
私は、この人たちを殺したくない。
家族をを居なかったことにしたくない。
みんなの願いを誰かに伝えなければ。
ふと、そんな感情が湧き起こりました。
それ故にそう感じるのでしょう。」
「つまり、
使命のために生きるということで。」
「私の家族が願っていたのは平和です。
でも、私が世界を見た限り、
それは一時のものです。
永遠に叶うはずもありません。
ですから、私は平穏を願います。
あの家族と共に過ごした日々のように、
多くの人に安息を与えられるようにしたい
と考えています。」
「もし、
その平穏を脅かす者がいるとしたら。」
「容赦はしません。」
「ところで、そろそろ本題に入りませんか。
貴方が、そのような畏まった
言い方をしているということは
そういうことでしょう。」
魔法使いは、目論見が暴かれたのか
決まりが悪そうに此方を見た。




