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冬花  作者: 忘憶却
第二章 家族(冬)
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夢幻

 その年の冬は明けることは無かった。


 私は縁側から庭を眺めている。

 白が全てを覆い隠す。


 土も水も木も草も生き物も、

 全て全て覆い隠す。


 みんなとの思い出。

 

 ここに来ていつも見てくれた春風。

 厳しくも鍛えてくれた秋月。

 自分を見つめる事を教えてくれた夏鳥。


 この庭で話した事、見た事、感じた事。

 どれも、消えることは無い。


 けれども、何故なぜなのか、

 気持ちも感情も

 失ってしまったように沸かない。


 ずっと、庭を眺めている。

 また、私は失ったのだ。

 ようやく手に入れた暖かな場所、家族。


 ずっと庭を眺めている。

 あの時を取り戻せないかと。

 もう一度。

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