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第5話 迷宮の主【前編】

いつのまにか700ptを超えてました!

沢山の応援ありがとうございます!!


更に最高日間総合135位・ジャンル別26位に浮上出来ました!

これからもランキング上位目指して頑張ります(о´∀`о)


今回は前編・後編の全2編構成です。

 ───嗚咽を吐くほど強烈な異臭。

 亡者の迷宮の奥深くで群衆が蠢いていた。



 彼らをよく観察すると、人型はしているのだが……

 腐った肉、剥き出しになった臓物、中には骨だけの者もいる。



(…ズイブント…増エタナ……)



 そう呟くのは彼ら──アンデットたちを従え、生み出した張本人の男である。


 彼は人だった頃、伏見 一生と呼ばれていた。



 しかし、今の彼に───かつての面影を見れる者がいるのだろうか。



 人を辞め、亡者の迷宮の一部に自らの拠点を構えた彼は、

 訪れた冒険者を殺しては死霊魔法によって己の眷属に加える。



 この数日間繰り返し繰り返し地道に増やした眷属たちは今では100を優に超へ、

 彼が構えた拠点だけでは抑えきれないほどの大世帯となっていた。




 ──拠点の拡大。



 この解決が当面の問題だった。


 上の階層に新たに拠点を増やすことも考えたが、

 現状、自分の存在はまだ秘匿したい。


 その為、俺はリスク高い行動を出来るだけ控えたかった。




 頭をよぎるのは…今拠点を構えている14階層の更に下。



 聞く話によるとこのダンジョンは14階層までしかないらしい。

 しかし俺の感知系スキルが、14階層より下の存在があることを告げていた。



 ならばすぐにでも、下の階層に拠点を拡大すればいいと思うかもしれない。


 しかし俺は手をこまねいていた。


 何故なら感知系スキルが教えてくれたのは()()()()()()()()()()()()()()()からだ。



 俺はこのダンジョンに来てから初めて恐怖を感じる。

 それは初めてソイツを…『()()()()()()()()()』を知覚した時だった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ヤハリ…避ケテハ通レナイカ…」



 ダンジョンマスターと遭遇せずに下に向かえる様々なルートを何度も模索し検証を続けるが、

 どうやら下に向かうにはダンジョンマスターのいる15階層目を避けることはできないようだ。


 俺は覚悟を決めてダンジョンマスターと戦うことを決意する。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 …シャ……カシャ…カシャ、カシャ、カシャ……骨の軋む音が暗闇の中で反響する。

 俺は今15階層へと繋がる隠し通路を歩いていた。


 そして15階層目へと到着すると…


(───デカイ…)


 誰がこんな場所に作ったんであろうか、

 自分の身の丈の3倍以上はある巨大な門がそびえ立っていた。


 しかし軽く押してみると、見た目に反してそれ程重くないようだ。



 聞こえる。

 門の向こうで無惨にも殺された者たちの後悔や怨嗟の叫び声が。


 恐らく15階層目は辿り着いた者がいない訳ではない。

 辿り着きこの門をくぐった者が全て殺らされただけのことであろう。



 その事実を知って尚、俺の手は門扉から離れることはない。




 ───俺は自分に嘘をついた。

 ダンジョンマスターと戦うより

 素直に上の階層に拠点を拡大した方が遥かにリスクが低いことを。



 ───俺は自分に嘘をついた。

 ダンジョンマスターと遭わずに下に行ける可能性があるルートがまだいくつかあったのに気づかないふりをしたことを。




 背筋をゾクゾクと震わせ、

 存在しない心臓の鼓動が早まるのを感じる。




 ───俺は喜んでいた。

 初めて出逢う強者の存在に。



 ───俺は知っていた。

 この戦いが避けれないことを。





 何故なら俺の魔物の性が──狂戦士(ベルセルク)の性が───逃げることを許さなかったからだ。




 ────()()()()()()()()()()

 本当は望んだのだ。

 戦うことを。

 自分の今の力をぶつけることのできる相手を。





 両の手を扉に当て、思い切り力を入れる。

 門は勢いよく開き、まるで俺を歓迎しているようだった。



 俺は躊躇なく門の中へと足を踏み入れる。…()()()()()()()()()()()()()()()()()()




 俺と眷属が完全に中に入ったことを確認したのか、

 門はひとりでに動き出し、閉まると共に「ガチリッ」と鍵の掛かる音がする。


 どうやら帰す気は無いらしい。


 俺は連れてきた眷属に隠れて待機しているよう命令を下す。




(……シカシ…ココハ………玉座ノ間カ?……使ワレテイル気配ガナイガ…)



 辺り見回すと15階層目は玉座の間の()()()()()をしていることが分かる。



 ()()()()()…と思った訳は、かつてレミール王国で見た玉座の間と比べるとはるかに不出来で、

 まるで素人が想像だけで無理矢理作った………

 そんな風に見えたのだ。




(…或イハ……ココノ…ダンジョンマスターガ…作ッタノヤモ…シレナイナ…)




 そう思って、いる筈のダンジョンマスターに意識を向ける。

 ──いる。確実に見られている。



 しかしこの空間には感知系スキルの妨害工作が施されているようで、

 それが干渉しているせいで相手の正確な位置までは中々推し量ることができないでいた。



(──ドコダ。───ドコニイル?)



 相手はこちらを襲うタイミングを見計らっているようだ。




 しばし静寂が訪れる。



 こちらがアクションを起こさずに5分程時間が経過した頃だろうか。


 痺れを切らしたのか突然煙のようにあらわれて、

 脱兎のごとき素早さでこちらへ向かって来ようとしていた。



(────ヒダリ…カ!!)


 俺は地面を蹴り上げて咄嗟に身を翻す。

 おかげでダンジョンマスターの急襲を間一髪で回避することができた。



 元いた場所を確認するとそこは地面が抉れ小さなクレーターができており、

 土埃が派手に舞い、直撃していた時の凄惨さを示していた。



 次第に土埃が薄れていき飛び込んで来たダンジョンマスターの姿が露わになる。




 まず目に付いたのは大きな口にズラリと並ぶ鋭い牙。

 そして白地に黒い縞がかかった体と二股に分かれた長い尾だ。


 視線は常に俺を捉えており、鬼にも勝る形相で睨みつけてくる。



 かつて日本にいた頃も動物園で似た動物を見たことがあったが、

 それよりも一回りも二回りも身体が大きい。




「ゴオアアアアアアアアアアアアアアア!!!」



 ない耳が裂けるほどの大きな咆哮が玉座の間に響き渡る。


 ダンジョンマスターの正体は白虎の外見をした巨大な魔物であった。





 個体名=不明

 種族 デス・タイガー


 B−級脅威度の上級魔獣


 スキル・ユニークスキル

 詳細不明


 称号

 ダンジョンマスター



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




『───久しきかな、久しきかな…吾輩の攻撃を躱した人間は──いや、アンデッドと言うべき方が正しいかの。』



 ──白虎は口を開く。

 正確に言えば口は開いておらず、直接心に語りかけてきていた。



(…念話カ……シカシ何故俺ガ…アンデッドトワカル?)



 今の俺の見た目は冒険者から奪った黒いローブで身体を隠し、

 顔もフードですっぽりと埋もれている。



『フッ、簡単な事よ…お主からは生気が全く感じられない。

 したらば、お主をアンデッドと想像するのは造作もない事だ。』


 白虎は得意げにそう言うと続け様に喋る。


『このダンジョンは儂の庭のようなものじゃ……他にもお主の事は色々と知っておるぞ。

 ここ最近吾がダンジョンを荒らし続け、

 吾に許可もなく眷属を増やしている不届き者という事をなッ!!』


 白虎は一段と声を荒げて、今にも噛みつきかねない剣幕である。


『……しかし飛んで火に入る夏の虫とはこの事なり。

 わざわざ死地に飛び込んで来てくれるとは嬉しいぞ!

 この迷宮の主が一体誰なのかその身をもって教えてくれるわ!!』



 白虎は最後にそう言うと、俺目掛けて躍りかかる。


 一直線に飛び込んで来た白虎をひらりと横に躱すと、

 体勢を立て直す為距離を取ろうとはかるが、

 白虎はそれを許さない。



 俺は白虎の追撃をローブに隠していた剣で受け止める。


 爪と剣が激しい音を立ててぶつかり合い、

 散る火花が両者の顔───骸骨と虎と言うなんとも奇妙な組み合わせを照らしていた。




 右、左、左、正面、そして左に見せかけて正面…と思いきやまた左に前脚を振り下ろす。


 追随を許さぬ猛攻に空気が震え始める。



 戦いの主導権を最初に握ったのは白虎であった。

 対する一生はと言うと白虎の攻撃に防戦一方。


 今まで同格の敵と相対してこなかった一生にとっては初めての経験である。



(クッ…!コイツ……タダノ馬鹿デハナイ……)



 今まで戦ってきた敵とは比較にならない程のパワーとスピード。

 そして時折フェイントをかましてくる魔物とは思えない狡猾さ。



 今はなんとか凌いではいるが、

 攻撃を受け止める度にミシミシと剣身から悲鳴が上がっており、

 このままでは剣が持たないことは明白であった。


 剣は今手にしているモノを含めて2本しか持っておらず、

 持久戦になれば確実に不利である。




 しかし白虎が焦ってきているのも事実。


 思うように決定的な一撃を与えられない所為か、

 少しずつだが攻撃のリズムが単調になりつつあった。



(ソノ程度カ?…迷宮ノ主ヨ…!

 ココニアル玉座モ…タダノ飾リノヨウダナ!!)



 俺は白虎の焦燥に漬け込んで挑発する。

 白虎は思惑通り顔を一層厳しくさせ激しい怒りを露わにした。



 正面から大振りの一撃が降りかかる。

 俺はその一撃を剣の腹で受け止め…

(──閃光(フラッシュ)ッ!)

 光の初級魔法を白虎の眼前で発動する。


 閃光(フラッシュ)は攻撃力のない魔法だが、一瞬の間眩いほどの光を放つ。



 白虎はあまりに突然の出来事に視界を奪われ、体勢を崩す。



 ───千載一遇のチャンス。


 俺は隙だらけとなった白虎の体を前に全力を込めて剣を振りかざした。




 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



(…ナニッ!?…マサカ……霊体ニナレルノカ!!)


 霊体とは肉体の依り代をなくしながらも現世に魂を存在させている状態。

 ──そして霊体中は魔力を通さない全ての物理攻撃を無効化する。



『御名答。ククク…まんまと騙されおって…挑発して隙を突こうとしていたらしいが……

 油断を誘われていたのはお主の方じゃよ─── 』




 白虎の強烈な一撃が右半身を直撃する。

 ピキッ…バキッ……グシャリ…!

 骨が砕け、ひしゃげる音とともに俺は宙へと吹き飛ばされた────。

種族 デス・タイガー


B−級脅威度の上級魔獣


スキル

詳細不明


ユニークスキル

不老不死─

霊体化─



《備考》

数十年という、普通はあり得ない時間を生きた虎種の魔獣が、

稀にデス・タイガーに進化することがある。


虎のような見た目をしているが、

尾が二つに分かれており、白地で更に体格は従来の虎と比べると遥かに大きい


またデス・タイガーは広義にはアンデッド種だと言われている。



《強さ》

デス・タイガーのほとんどは高い知恵を有しているケースが多く、

中には人語を理解するデス・タイガーも確認されている。


またその大きな体格から繰り出される一撃は大岩おも軽々と破壊し、

動きは風のように早いとも言う。



しかしこれらはデス・タイガーの強さを表す付属的な要素でしかなく、

デス・タイガーの最も恐ろしい特性は別にある。



それは霊体化だ。


そもそも霊体とは肉体と言う依り代を無くし、

魂だけが裸となって現世に存在している状態。


その為通常の物理攻撃などを完全に無効化し、

魔法や魔力を通した攻撃でしかダメージを与えることができない



ただし、メリットばかりがあるわけではなく、

肉体と言う鎧が無い分魂が剥き出しになっている為、

魔法攻撃に対する耐性が激減している。

また、霊体中は自分から相手に触れることはできないという弱点を持つ。


(ちなみに代表的な霊体の魔物は

ゴーストやレイスが有名だ。)



この弱点を克服したのが霊体化というユニークスキルで、

これは肉体のある状態から霊体に瞬時に切り替えることを可能とするスキルである。


戦況によって霊体になるかどうかを決めることができる為、

非常に強力なスキルである。




・ーおまけー・


ダンジョンマスターの称号を獲得すると自動的に不老不死の効果が与えられ、

また食事や睡眠などの必要をなくし、

一部の状態異常などに完全な耐性がつく。






ここまでお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m


良ければ最後にブクマ、pt評価の方もして頂けると作者のモチベーション非常に上がりますので是非お願いします!

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