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水の流れ
「水の流れ意外に何か見えたか?」
雨月の問いに雪はコクリと頷き、雪解け水の流れを幼い指でやんわりと指差した。
「光が見えます。キラキラとしていてとても綺麗なんです」
「・・・そうか」
雪の答えに雨月は微笑み、光を放つ小さな水の流れを注視した。
確かに小さな水の流れは春先の温かな日差しを弾き、キラキラと輝いていて綺麗ではあったが、それを半刻近くも見ていられるかと訊ねられれば雨月は首を傾げてしまう。
「あの・・・僕は何かいけないことをしていたのでしょうか?」
困惑を含む雪の声音に雨月は苦笑しつつ小首を振り、その場に屈み込んで雪の顔をそっと覗き込んだ。
雪のその大きな黒い瞳に雨月の顔がぼんやりと映り込む。