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遠慮。
曼珠沙華の花が夜風にそっとうち揺れた。
雪はそれを面白いと感じ、それをじっと見つめ見ていた。
「雪。どうした?」
雨月の問いに雪はクスリと笑いもう一度、見事に咲き揃った曼珠沙華の花を注視した。
「実は僕・・・雨月様に会う前、この曼珠沙華の花を怖いと思ったんです。けれど、今は怖くない。それが何だか可笑しくて」
雪はそう答えて自分を抱き抱えて歩いている雨月の首にそっと抱きついた。
嗚呼、本当に可笑しい・・・。
前はこうして雨月様に抱きつくのも遠慮しなきゃと思っていたのに今はどうしてか遠慮しなくてもいいと思える。
遠慮しなくてもいいと思えることはこんなにも気持ちが楽なことなんだ・・・。
「・・・雪」
雨月の呼び掛けに雪は『はい』と答え、無意識のうちに微笑んでいた。




