41/65
涙声。
「何があったかは知らんが少し落ち着け」
雨月はそう言いつつ雪の細い背中を片手で撫で、もう片方の腕で雪を抱いていた。
「ッ! ごめんなさいっ! 僕・・・」
雪は涙声で謝りつつ、雨月から離れようと身動ぎをしたがそれもすぐに諦めた。
雨月はしっかりと雪を抱いていてそれを振りきれるほどの力を雪は持っていなかったからだ。
「何故、謝る? 雪は何も悪いことなどしてはいないのに・・・」
二重に聞こえていた雨月の声はいつもの声に戻っていた。
恐らくは妖の姿の時だけ二重の声になるのだろうと雪は了解した。
雪は今まで雨月の妖の姿を見たことがなかったし、雨月が獣の姿になれることも知らなかった。
なので、二重に聞こえる雨月の声を聞くのも必然的に初めてのことだった。
「僕・・・もうこれ以上、雨月様にご迷惑をお掛けしたくありません。だから・・・だから今日でさようならをしなくちゃと思ったんです」
雪のその言葉に雨月はひゅるりと息を呑み込み、僅かに身動いだ。




