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僕は捨てられた。けれど、僕は幸せだ。  作者: 小鳥遊 雪都
雪と妖。
38/65

赤く染め上げる。

ざわりと曼珠沙華まんじゅしゃげの花が夜風にうち揺れた。


血の波がうねったようなそれにせつはたじろぎ、立ち止まってしまった。


曼珠沙華まんじゅしゃげをうち揺らす生ぬるい、ねっとりとした夜風は立ち止まってみれば僅かに血の臭気を含んでいた。

それにせつは顔をしかめ、目を細めた。


その時だった。


おぞましい獣の咆哮が辺りに響き渡った。


ドクンとせつの小さな心臓は脈打ち、せつはそれに弾かれたように再び走り出した。


おぞましい獣の咆哮は続いていた。


獣のそれは悲しみと怒りを含んだ鳴き声だった。


せつはいつしか泣き出していた。


せつの視界は滲み、呼吸は苦しく、何度も転けた。


それでもせつは走り続けた。


早く、早く、もっと早く・・・。


転けた痛みも滴り落ちる血も苦しい呼吸ももうどうでもいい。


自分はどうなってもいい・・・。


だから・・・早く・・・。


せつはその滲む視界の中に一匹の獣の姿を認めると戸惑うことなく、その獣の首に飛び付いた。


ぬるりとした鉄臭い液体が飛び付いたせつを赤く染め上げる。

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