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僕は本当に・・・。
「一応、言っておくが俺は人間だ。化け物のコイツとは違うからな?」
男はそう言うと意地の悪い笑みを浮かべ、まだ何も頼んでいない雪のために小さなむすびをこしらえていた店主を不躾に指差した。
それを店主は笑顔で受け止めただけで男のその無礼な言動を咎めることはなかった。
ただ、仲がいいだけじゃない・・・。
雪はまた心の内でそう呟いて店主がこしらえてくれた小さなむすびを遠慮がちに口にした。
塩加減の丁度いいそのむすびは雪の細い食を駆り立てた。
「・・・人の世に帰りたいとは思わねぇのか?」
男の唐突な問いに雪は瞬き、口に入れたばかりのむすびを噛まずに飲み込んだ。
それなのに詰まったり、むせ混まないのが不思議だった。
だが、今はそんなことはどうでもいいことだ。
「僕は本当に・・・本当に・・・人間なんでしょうか?」