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侍の端くれ。
雪は店主に抱き抱えられたまま店に連れ帰され、この男と出会った。
男は店の前でつまらなさそうに煙管を燻らせ、その紫煙を鋭い目付きで追っていた。
腰に差した刀は二本。
それは長い刀と短い刀だった。
二本差しは武士の証だと雨月は言っていた。
「あの・・・お侍さん・・・なんですか?」
雪は遠慮がちにそう訊ねて男の鋭い瞳を恐る恐る見つめ見た。
雪のその様子と質問に男は苦い笑みを浮かべると鋭い瞳をいくらか柔らかなものへと変じてみせた。
「胸を張ってそうだとは言えないが違うとも言い切れない。強いて言うならば侍の端くれだろうな」
そう言って笑った男の顔はどこか幼く、先ほどまでの鬼気迫る鋭さは微塵もなく掻き消されていた。
男のその変化に雪は瞬いた。
それと同時に雪はこの人の言っていることは嘘だと確信させられた。
この人はお侍さんの端くれなんかじゃない・・・。
雪は心の内でそう呟いて密かに生唾を飲み込んだ。




