手伝い
店主は捌いている魚から目を離さずに言葉を続けた。
「何も悪いことなど起こりはしないし、雨月は貴方を残して消えたりもしませんよ」
店主のその言葉に雪は戸惑いを隠せなかった。
雪は店主の言葉に本当に何も心配しなくてもいいのだと感じたし、安堵もした。
だが、そこまではっきりと言い切ってみせた店主が不思議でもあった。
雪の戸惑いの原因はそれだった。
店主の言葉は雨月と離れたがらない雪をただ、安心させるためだけに言い放ったようには聞こえなかった。
店主の言葉からはこれから起こる全ての事柄がわかっているかのような響きがあり、自信のようなものが感じられた。
それ故に雪は安堵させられたし、不思議な気持ちにもさせられた。
「もし、よろしければ雨月が帰るまでの間、私の手伝いをしては頂けないでしょうか?」
店主のその言葉に怪訝気な反応を示したのは雨月だった。
「・・・手伝い?」
雨月は低い声で店主に問い返すと店主の端正な顔を目を合わさずに注視した。
店主はそんな雨月に柔和な笑みを投げ掛けた。
それを見て、雨月はさらに怪訝気な顔をする。
「店の手伝いです。もちろん、危険なことはさせません」
「雨月様、僕からもお願いします」
珍しく会話に割って入って来た雪に雨月は小さな溜め息を吐き出した。
それを見た雪は僅かに俯いたが雨月から目をそらすことはしなかった。
珍しいこともあったものだと雨月は心の内で呟き、今も柔和な笑みを湛えている店主を注視した。




