表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

第7話 【悲報】 後輩聖女は見ていなかった。 至高神の笑顔を

神の領域には先客がいた。 至高神エトゥワと向かい合って、応接セットのソファーに腰かけている。 リゼットからは後ろ姿しか見えないが、セザール王国の聖女の制服 ――白地に青のラインが入った絹のワンピースだ―― を着ている。 リゼットの後任として聖女の地位に就いたマリアンヌ・ヴァランタンだろう。


応接セットのテーブルの上にはカードが散らばっていた。 エトゥワはマリアンヌを相手にカード・ゲームをしている。 だが肘掛けに頬杖を付く彼の表情は、これまでにリゼットが見たことがないものだった。 まぶたは半ば閉じられ、目の焦点が合っていない。 口元は、締まり無く開いている。


(これは―― もしかしてエトゥワ様は物凄く退屈していらっしゃる......?)


退屈していたエトゥワは、自分の領域への侵入者にすぐに気付いた。


「リゼット!」


手にしていたカードをテーブル上に放り出して立ち上がり、いそいそとリゼットに歩み寄る。 退屈に光を失っていたアイスブルーの瞳は喜びに満ち溢れ、(たる)んでいた口元は笑みを湛えている。


リゼットの登場に、マリアンヌはビックリ仰天。


(ラングロワ先輩っ!? 何故ここにっ? ......あり得ない。 だって、この人は――)


セザール王国の "公式発表" によれば、リゼット・ラングロワは不貞を働き、それを追求されて雲隠れした。 ――思いもしなかった。 聖女にあるまじき行いをした先輩と神の領域で出くわすとは。


後輩聖女に失礼な勘違いをされているとも知らず、リゼットはエトゥワの両腕にふわりと包み込まれる。


「1日に2度もお前が尋ねてきてくれるとは。 今日は良い日だ」


リゼットを抱擁するエトゥワを見て、マリアンヌは衝撃を受ける。


(エトゥワ様がデレデレ...... なんてこった! 至高神が楽しそうな顔をするなんて、至高神が抱擁するなんて、これが100年に1人の聖女と呼ばれたラングロワ先輩の真の実力――!?)


マリアンヌの前でエトゥワはいつも、冷淡で不機嫌。 至高神の表情のバリエーションに笑顔は無いと思ってた。


エトゥワの腕の中で、リゼットはマリアンヌを気遣う。


「あ、あのエトゥワ様。 他の子の前でこのようなコトは――」


「ん? そうか。 私は構わないが、お前がそう言うなら。 さあ、こっちに来てソファーに座るがいい」


エトゥワはリゼットの手を取り応接セットへと(いざ)なった。



             ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


エトゥワはリゼットを自分の隣に座らせた。 2人の対面に座るマリアンヌが、リゼットにキラキラした目を向ける。


「お久しぶりですラングロワ先輩」


「ええ、久しぶりね。 みんな元気にしてる?」


「はい! それより先輩、例の "お相手" って誰なんですかぁ? 王太子様を袖にするんだから、さぞかし素敵な殿方なんでしょう?」


リゼットはマリアンヌに曖昧な笑みを向ける。


「お相手って? 何の話?」


果てしなく長引きそうな女の子のお喋りを、エトゥワが遮る。


「そんなことよりリゼット、モフモフと出会ったか?」


「はい。 山猫を助ければ良かったのですよね?」


「そうだ」


「ですが、あの山猫が私の運命にどう関わるのでしょう?」


悪代官に全財産を没収され妾になれと強要される現状を、一匹の山猫がどう変えれるのか?


「そう心配するな。 あの毛玉は、すこぶる付きの切れ者。 お前が置かれた状況を既に察し、お前を助けるための算段を練っている」


「切れ者?」 モフモフが?


「ふふ、とにかく心配するな。 あやつに任せておけ。 冷徹だが公正。 奴が最も嫌うのがイポリットのごとき悪代官だ。 侯爵に処分させるか、自分の手で始末するかは分からんがな。 さあ行け。 日が暮れる前に森を出るのだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ