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異世界で目が覚めたらゾンビだった、死にたく無いのでお金を貯めて復活したい。  作者: 葵卯一
次の舞台は多分海、きっと海になると思う。
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ゾンビ的異世界屋台グルメ・・毒はいかんよ、毒は!

 神殿からほど遠く、平地を越え山を越え谷を越えた峠の屋台。

 何とか生き延びた?ゾンビ・ロメ雄は、だれかの無茶振りに振り回され、

こんな所まではる~ばる・来ぜ!東方?


 犬鳴かせ峠の屋台は、人通りの少ない谷の脇に有りながら営業している、

[異世界に繋がっていない]屋台。

 

 お?「らっしゃい」

 ロメ雄が暖簾[のれん]をくぐりオヤジの前に座る、ゾンビであるロメ雄に驚く事も無く屋台の向こうでオヤジさんが挨拶をする・・・なんて器の広さでしょう。


 屋台のサイズとは反比例した度量、1度・一流店を任せれば☆を取れること間違い無でしょう。


(ゾンビが衛生的にどうか?という部分は有りますが)


「オヤジさん、この屋台はなんの屋台です?一体何を出しているんですか?」


 屋根と椅子はあるが、外から見てもナニ屋さんか全くの不明。

一応はお酒を出す感じはありますが・・酒だけでは屋台の意味が・・


「その日取れた物・この辺の名物や旬の野菜を使った料理・大体の物が出せますが。一応は[おまかせ料理]となっておりやす。ですがどれもお安く、味は保証しますぜ」


 なるほど、オヤジさんの自慢料理と酒ですか。

[不味ければ、御代はいりません]そう言う気概すら感じます。

 休憩がてら、なにかいただきましょうか。


で?「今日のおすすめはなんです?大体の物は喰えますが、不味い物を出されたら

ちょっとパンデミックの一つも起こそうって・・・」

 緊急事態宣言が出ちゃいますよ?

 

 私はゾンビですが、美味い不味いの解る男でありたい。

違いの解るゾンビ男と?珈琲党では無いので珈琲の違いは解りませんが。


「へ!パンデミックとか、止めて下さいよお客さん。

 最近は、保健所も目が厳しいんで、なんか起こされたら直ぐに

[営業停止]になっちまいますから」


 異世界の保健所も、こんな辺鄙[へんぴ]な場所には目が届かないでしょうが、

心配症ですねぇ・・・それだけいろいろ食中毒とかに気を配っているなら

とんでもない物は出ないでしょう。


 軽く笑い「オヤジさんの料理しだいですね」そう料理の催促し目を閉じた。

 一人前の大人は、料理人の腕を信じて黙っているのがマナーですよね?

 

 そう言えば異世界に来て、初めてまともな物を口にする気がします。

 食べる事に執着の無い・空腹の感じない体は[取りあえず]程度に物を欲する。


 生前の習慣でしょうか、蟲・樹皮や木の根、葉、茸にコケ、動物性タンパク質は

鶏や蛙・爬虫類だいたい食べました。

  

 料理は人類最大の発明、火を通し・茹で・揚げ・蒸す。


 調味料、下ごしらえ。只の肉と野菜の固まりを美味しくするなんてすごい。

[素材の味を生かした]では無く、素材の味しかしない料理は料理では無い。


(蜂の子は結構いけましたが・・)


「へい!お待ちどうさま[川魚のカルパッチョ]で」

 木の大皿に笹の葉、その上に並んだ透明で透けるくらいになるまで薄く切られた白身の切り身。


「オヤジさん!!・・・[ルイベ]ですか?冷凍過程が見えなかったですが?」

魔法ですか?


???「ルイベ?なんですソレ。ソイツは今朝そこの川で取った、新鮮その物。

腐ったりしてねーんで大丈夫ですぜ?」


 ルイベを知らない?!で・・では

「オヤジさん・・コイツは料理失格だ、少なくとも人間の喰う物じゃありません・・」

残念ですが・・


 川魚は寄生虫を持つ物がある、無論全てでは無いが。

どれほど薄く切ったとしても、卵や休眠状態の蟲は見つけ辛い。


 川魚は火を通したり完全に塩や味噌・醤油につけ込む。

 このカルパッチョは一見・酢を使って安全性を上げているように見えますが、

魚の身深くまで酢が浸透している訳では無いでしょう。


 それに酢を利かせすぎると、ソレは逆に魚の風身と味わいを損なわせる事になる。この魚が川の女王ニジマスだろうと、鮎であろうとソレは変わらない。

 

 残念です、久しぶりに人の食い物がいただけると思ったのに。

・・・・・・・・・

 

 席を立つロメ雄の隣、赤茶色で4枚羽根の鶏が赤い鶏冠を反り立て、一心不乱に皿を突く。一枚・また一枚と嘴に挟み「ごくり」と喉を鳴らす。


「お客さん、どうやらコチラのお客様は満足していらっしゃりますが?」


「ひよこさん?確かにゾンビ鶏の相棒は寄生虫にまける事はないですが」


 仕方無い私も一口いただく、『この世の全てに感謝をして』「いただきます」

手を合わせ、一切れ指を伸ばした。


 痛っ・・・この鶏、なんで噛んです!ヒドイなぁニワトリのびっくり箱ですか!



「折角・勇者の聖剣を手に入れパワーアップしたと思ったら・・」

神さまはロメ雄の持つ光る剣を奪って、どこかの空間に放り込んでしまった。

多分・・・掃除用ロッカーでしょうけど・・


[ゾンビ・勇者装備で無双狂想曲]の始まりですか!と思っていたのに。

 出尽くした【オレ強ぇぇぇぇーーーー】は許さない神様。


 ゾンビがモテモテには・・・フッ、遠い夢でした。


「でもなぁ兄ちゃん、あのまま行けば、兄ちゃん持っている剣に焼き尽くされて灰になってたで?」

 神殿に住み着いていた人面犬のオッサンに慰められた・・すこしショック・・


 [勇者の腕]を装備する事で使えるようになっていた剣が、なぜか徐々に熱を持ち、鞘の上からでも解るほど神気を放つようになっていた。


「お前の体にその腕が馴染み過ぎた、聖剣がその腕を勇者の物と認めない程にな」


 なら上司の優しさと言うか考慮とか良い感じの都合で、使えるようにしてくれても、私には変態黒鎧で十分ですと?


「・・・神の力で怪物[クリーチャー]でも使えるようには出来る、だが・・・・

[勇者の腕を引きちぎって聖剣を自分で使う]なんて事、人間のする事か?」

 

 グロい・余りにもグロ過ぎる。コレを許せば魔物とかが勇者の皮を剥ぎとって、

勇者装備で暴れ回でしょう。


 確かにメキシコの神[シペ・トテック]がソレに近いでしょうが。

 かの神も自ら望んで人間の皮を剥ぎ取り、着込んだ神では無い。 

 


 少々長く回想してしまった、[いきなりの過去回想は、打ち切りの予兆である]とあれほど打ち切り委員会が検証を重ねたと言うのに。


「オヤジさん、コレは・・コイツは何の胆だ!」コクが有り、口の中に魚の美味さが 口いっぱいに広がる白く柔らかく湯通しされたソレ。上等な絹ごし豆腐よりも、

しっとりとしてきめ細かい舌触り。コイツも川魚とでも?


「ソイツは[川魚の胆]を軽く酒で洗って湯通しした物を、柑橘と発酵味噌の絞り汁で味付けした物でさぁ、この辺りでは[ぽん酢」と言いやすが。


 そもそも[ぽん酢]てやつは、海の向こう和蘭陀国の橙を搾った物[ポンス]の当て字で。まあ橙より酸味と香りの強い、酢橘や柚子を使った物が段々と主流になり始めて・・・


「[ぽん酢]の説明は置いておき、橙では甘すぎて料理に合わせるのが難しくて、とかどうでもいい。コイツだ、胆を持つ魚の種類を聞いているんだ!」


・・・・・


「へへへ、どうやらお前さん達には毒が効かねーようだな!ソウヨ、

お前達が口にしたその魚は、寄生虫なんぞよりもっと恐ろしい禁断の果実よ!」


 河豚と言う魚を知っているだろうか?かの魚は何故、川の豚と当てられるのか。

それはそもそも河豚という漢字が当てられる事も解るように、大陸では川に生息している川魚の一種であった。

 

 大体・海に遠い大陸から渡ってきた魚類漢字の殆どは河川の物が多く、それ故、海の大国・日の本国で魚類の漢字が多く生まれた。


 日の本国には川に河豚がいなかったので、現状そのまま使われているのである。


[テトロドトキシン]通称[河豚毒]とも呼ばれる毒は、河豚が微量に毒を持つ生物を摂取しその毒素を体内にため込む事で卵巣・肝臓・などに含まれるようになる猛毒である。


「まさかとは思うが・・無菌状態で完全飼育した河豚などとは言うなよオヤジ」


へへへ、「そんなわけねーでしょうが、オレは町でちょっと修行した程度で逃げ出した半端者ですよ・・こんな辺鄙な所でやっている喰い物屋なんてのは、まあそれだけ裏があるってわけで・・」へへへ。

 

 つまり[流行りの異世界ご飯]では無く、毒を盛って旅人を殺す少し毛色の違う山賊だった訳で・・・なんてヒドイ落ちだ!


 記憶がリフレインしたのもこの生かよ!


「葉っぱは三裂け・花は濃紫青色で円錘帽子状・・・」

 ロメ雄がオッサンを軽く料理した後、テトロドトキシンの効果を中和出来る筈の植物を探し人面犬の後に続いて山を登っていた。


「お前さん、毒に耐性が有るんやろ?なんでそんなヤバイ植物探すねん?」


「昔・むかしの事じゃった・・当時その植物の毒で保険金殺人が事件になった頃に話しで聞いたんだ」


 その手口は最初、体内でゆっくり解けるカプセルを使った犯行かと推理されたが、実際は、河豚毒と植物毒を混合させる事で致死時間をコントロールしアリバイを作る科学的毒殺事件であった。


「つまり、その植物の根っ子を摂取しておけばゾンビの私でも毒の効果を緩める事が可能な筈!」


「でも毒は効かんのやろ?」とか言いわ無いで下さい。

全く解って無いのですね。


「ゾンビの身体には効かなくともだ、[私は毒で死ぬかも知れない]と言うだけで

ストレスを感じるのです!」


 繊細な胃に穴が開いて[河豚毒]が漏れ出せば正しく【悪魔的ドクドクゾンビ】

に進化してしまうでしょう。


 社会に、言論と思想の毒を振りまく可愛いゾンビちゃんから。

人にも自然にも有害な、面白ゾンビのできあがりですよ?

そんなのは嫌でしょう!


 人間に戻るまえに、頭潰されて

 紫とか緑の体液を薔薇撒く面白ホラーはゴメンでしょう。


「【ゾンビ】の【個性】を持った普通の人間設定が好ましいと、思うのです。

そしていつの日か学校に通って【ヒーロー】になるんです」


 もしくはヴィラン【悪役】に、そして少年誌に先頭カラーで連載スタートして

アニメ化・・・はどうでしょうか?


「【個性】ねぇ、どんな【個性】も認める社会はとても優しいと思うけどなぁ。

実際の所[差別]と[区別]の違いもわからん奴らの作ったマニュアルなんぞは、

社会に適応されて無いのが現実やで?」


「そんなメタ発言はいいのです!時代は個性を必要とてます、どんな違いも劣りも欠点も個性で乗り切れるはず!」

 

 そして全く個性の無い少年が、最強の個性を手に入れて

『所詮は力を持つ者こそが主役』と世界の子供達に絶望を与える物語の主役に

そして『無個性などは話しにならんよ!』と言ってやるのです。


 泣き落とし・虚言・空回る正義感、なにを使ってでも【力】を手に入れる事が

絶対必要だ!と世界に訴えてやりたいのですよ!


クッ・・これが河豚の毒か!なんて強い毒だ・・・



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