勇者っぽいのと、戦うゾンビ。[本気]
爆発と閃光、舞い上がった煙が時間と共に薄れ、ロメ雄の目の前に男が立っていた。
(だれ?・・いやな気配ですね・・とてもいやな感じの・・)
黄砂色のマント・目立ちたがり屋に逆立った頭髪・分厚い黒革の手甲のガキ。
いや主人公か?!
ソイツはロメ雄の前立ち塞がり、一瞬も振り返る事も無く
「大丈夫ですか?オレが来たからにはもう心配ありません!」とかのたまわった。
この男が勇者とかでしょうか?嘘でしょう?
異世界だからそんな人間もいるとは思っていましたが。
ゾンビを庇う?いやいや多分ですが、
一般人をその辺のオブジェクト・モブ・背景くらいにしか見ていない。
『こんにちは・始まりの町へようこそ』
としか言わない市民A,の認識でしょう?普通は。
だって・・私の方には一切振り向きませんし・・
(少なくとも、私のようなゾンビをかばう理由がないです)
彼の世界では、敵と美女と自分しかいない。
そのほかは背景とか風景と同じ扱いなのでしょう。
スフィンクスの前に立つ私を、人間が襲われているとでも思ったのでしょうね。
口にマスクをしてますし、遠目に見れば私も人間に見えなくも無いですから。
「じゃぁそう言うことで!」
町長のスフィンクスを一撃で退治するような人間です、ゾンビなんて瞬殺ですよ。
神様にはお目玉くらうでしょうが命は大事ですたらね。
はい、今回のミッションは失敗。私は帰させて貰う!
『こんな殺人者のいる所にいつまでもいられるか!』
仮にもスフィンクスはピラミットの守護者。
人間と戦う事も、そして退治される事も運命なのでしょう。
私には関係無い。町長が倒されても、ゾンビ1匹くらいは見逃されてもいいはず。
私は雑魚ですから、[スフィンクス]のような大物とはちがうのです。
死体なのに気配を殺し、埃と煙に紛れて・・・抜き足差し足・・・忍び足。
静かに1歩ずつ後退・後退。
すでに頭上の相棒は姿を眩ませている事ですしね・・・っっっって!
(なんでしょう?)
足元がぬかるんでしめり、つるつるの大理石で足が滑る。
光が煙に絡み取られてようすが見えてきましたけど、足元が何かで濡れています。
(そう言えば・・・いきなり来ましたよ?警備の人面犬は何やっているんです?)・・・・・
通路には壊れた柱と血塗れの道、折れた街路樹とぶら下がる死体の数々・・・。
侵入者のマントは返り血でよごれ、床には靴跡がつくほど濡れています。
コイツ!
と思う前に私の身体は動いた。
焦らず・静かに・人間の影にコソコソ隠れ、煙と共にソイツの首筋に歯を立てた。血も呼吸も無い事が幸運だったのだろう。
渾身・顎の力に集中した感情はじゅbL・・音を立て肉を食いちぎった。
咀嚼[そしゃく]する必要も無い、肉塊を嚥下し背後から押さえ付け。
ソイツの首に二度目の歯をいれた。
動脈か?静脈か?ナニカ堅い管をガジガジ歯を擦り合わせて噛みちぎる。
(糸切り歯の有効な使い道に人生始めて知りました)
感動しながら、堅いパスタの様な物に歯が届く。
「””$$#&($*+`@;」」
首を抉られても流石は強者、裏返ったソイツが何かわからない事を言ってます。
力だけは強くて元気ですが・・既に体勢は私の物ですよ?
口から泡が吹き出すだけで、何を言っているのかわかりませんが。
「何だと!貴様ゾンビか!」程度の事を言っている気がします。
つまらない事ですよ。
ええ私はゾンビです!キミが蹂躙[じゅうりん」してきた人面町の彼等と同じ化物ですね。戦いに関係無い生物を巻き込んで来たんですよね?
私みたいに背景とか、オブジェクト扱いで何人も壊してきたんですよね?
私はその辺に転がっている死体のようなモノでしょう?だから、
それがどうかしましたか?
床に転がった光る剣は、私の身体を焼くような光線を飛ばす。
・・・だから・・・それがどうかしましたか?
魔物・化物、殺しまくったのでしょう?
男の射ぬくような眼光は、化物を憎み殺せる圧力があります。
だからなんだ?
本来のキミなら拳一つ・一振りで私はミンチ肉か、壁の染みにクラスチェンジ。
だから何だっていうんです?
そこに転がって居るだけの剣の光は、私のお腹を焼き、貫きチリチリします。
私を焼くなら心臓でも狙っみててください、
動いているのか、それどころか、あるのかさえ解りませんが。
まだまだ元気に暴れる男に私は防具の隙間、防御力弱そうな二の腕に噛み付く。
汚れた指で首を押さえる腕を捉えて邪魔します。
(そんな慌てる事はないですよ?高々動脈が千切れた程度じゃ無いですか)
男が暴れて私の右腕が吹っ飛んだ。
おおっ?衝撃が強すぎて、空中で私の腕が爆散しました。
スゴイね勇者ですか?キミは?
羽交い締めていた足を蹴り飛ばされ、下半身がすっ飛んでいく。
膝下が壁にあたり、赤黒い汚い花を咲かせ粉々になった。
さすがは私、最弱のゾンビボディです。
防御が豆腐と同等なのでしょうか?まあ別に構いませんが。
ゾンビとはそういう作り・そんなものなのでしょう。




