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2-5-01 DMかな?…根回しは大事だよね 22/1/18

20220118 加筆修正

7423文字 → 8263文字




 ルナベースでは、司令官控室が昴のプライベートルームになっている。


 今、そこの中央にある応接セットでは、昴とキャロライン女史が対面で座り、ハコが昴の後ろに立ち、アルキオネと見慣れないメイドがお茶の用意をしていた。

 昴の膝には白猫(白虎)が丸くなり、足元には陸ガメ(玄武)、天井近くのポールに赤いクジャク(朱雀)、目の前の立派な執務デスクの上には青い角に手足の生えたヘビ(青龍)…!?


「お茶の用意が出来たら、ハコ、アルキオネ、セントラルも話に加わってね。他の皆んなにも出来るだけ話に加わって貰っていいかな。セントラルも結局その格好に落ち着いたんだね」


[[[[肯定][了解]致しました][クルック~][はーい]ナ~ン]……]


[この義体(インターフェース)は、素晴らしい出来上がりですね。常にアップデートされるこの義体からはルナベースの全システムをコントロール可能ですよ]


 セントラルが嬉しそうに右腕を振ると、次々に空間モニターが浮かび上がりルナベースの各種情報を写し出した。


「気に入ったなら良かったよ。その調子でみんなのフォローをお願いね。それじゃ揃った所で会議を始めようか」

 

 今回のプロジェクトで大事なのは、どうやって混乱を避けるかという所にすべてが掛かっている。

 引っ越しの挨拶にいったら殺し合いに成りましたでは、笑うに笑えない。

 後で難癖つけられないように、1つの事故も許されないという事だ……難題だよね。


 ある日、貴方の家の隣に得体のしれない怪物が引っ越してきました。

 そんな存在が玄関でピンポン鳴らして挨拶に来たら、貴方はどうしますか?


1 ジョークとして冷静に対応、シェイクハンド後はご近所付き合いをする。

 (こんな理想はまず無い)


2 ドアが開くのと同時に、発砲。

 (アメリカ辺りでの日常、ハロウィンで射殺事件あり)


3 ドアを開く前に確認、変質者が居ると警察に通報される。

 (これが一般的な普通の対応)


4 無視、居留守を装う。

 (無難な事なかれ主義の日常、日本の都心では多そう)


5 ドアも開けずに罵声を浴びせる。

 (おととい来やがれ……)


6 対面と同時に余りのショックに心臓麻痺、軽くて失神。

 (ご愁傷さま、割りかし多発の可能性・大、田舎で多発しそう)


 こんなところだろうか。

 出会いは大事だが地球上で異種族の出会いに良い出会いがあった(ためし)がない。

 外見の違いや言葉や意志の疎通の出来ない状態での接触は、お互いに不幸な結果を生む場合が多い。

 相手の言葉を理解し事前に理解できる形でメッセージを送るのが理想だろう。

 同じ人間同士でさえ理解できないメッセージを送って喧嘩になる昨今だ……エッ、あれワザとやってんの? 悪質だね~。

 事前に知らせてショックを和らげるのが常套手段だけど……今回の様なケースだとどこに知らせれば良いのだろう。

 下手なところに知らせて戦争始められても困るし……国連辺りが無難なのかな?

 大体、地球には主権国家が多すぎるよね、早う1つに纏まれよと言いたいところだけどそうすると戦争しか無いのが人類だ。

 イキナリ『宜しくな!』なんて声を掛けられたとして、あんな二足歩行で喋るヌイグルミを信用する地球人がどれだけ居るだろうか。

 お前みたいなのが少なからず居るだろうって? イヤイヤイヤ、俺の場合は自分でも特殊なケースだと自覚は有るんだよ、ほんとだよ。

 ここで必要なのは、一般的な常識で考えた場合だよ、分かるだろ?

 下手に手を抜いて地球で一斉放送なんかしたら、侵略戦争か只のヤラせだと取られて流されるか無視されるだろう。

 ……新聞の折込宜しくチラシでも世界中にバラ撒くか? ……うん、良いかもしれない。


1 未知の素材でハイテクなチラシを作って要所にバラ撒く。


2 分析出来たとしても今の地球では作れない様な高度な素材を使うところが味噌。


3 時間が立つと自然消滅、ゴミにはならない、エコロジー万歳!


4 新素材だヒャハーと躍起になって掻き集める守銭奴には、ザマア!


 多分2の(あたり)で色んな所が騒ぎ出すと思う。

 そして、チラシに記載された情報の信憑性に注目するだろう。

 ここまで行けば後は、大々的にご挨拶すればこのプロジェクトも終了かな。

 それでいつ頃から始めようか?


「良いですか? 昴くん。今年のクリスマスに引っ越しの挨拶をするのは、決定事項なんですね?」


「うん、そうだよ」


「……(これだから世間知らずは……頭痛がしてきた……)」


「何か不味い事が有るなら言ってね、その為に仲間になって貰ったんだから」


「まずは現状を整理しましょう。実行日のクリスマスまで残り丁度2ヶ月ですね。出来れば年内に地球人類にバクーンの存在を知らしめて、外宇宙の脅威に対する耳目を世界中に広げたい。だからクリスマスプレゼントとして、ある程度の情報を公開する意向である。で、間違ってませんね?」


「そう、間違ってないよ。ついこの間、天の川銀河連合の支配3種族の内2種族が押し掛けてきてね、阿修羅族とデーヴァ族の王族だったんだけど、それは何とか接待して帰って貰ったんだ。だけど残りの今も天帝位についてるブラフマー族(三只眼)は、先史文明を滅亡に追いやった一族で天の川銀河連合として乗り出してくる前に地球を逃げ出すか、先の2種族の手を借りて先の汚名を(そそ)いで天の川銀河連合に復権を果たすか……ってところなんだけど、余り時間は残されていないと思うんだ。ただし、復権する場合もそれなりの力を相手に示さないと、先史文明の主星のように星ごと踏み砕かれるだろうと予想されるんだよね」


「ウ~ン……色々と詰んでる状況よね、それって……」


「出来ればもっとユックリと地球の技術レベルを上げてから、全人類が宇宙に出られる様にする予定だったんだけどね、そうも言っていられない状況になってきてさ、ここはショック療法に方針を変えるしか無いだろうとなった訳さ。最初は、身内だけで逃げ出す算段をしてたんだけど、段々と仲間も増えたし余裕も出てきて……」


「……欲が出たって事よね。君は、人類の救世主にでもなるつもり?」


「俺は、出来れば何にもしたくないんだよ。星を眺めながらゴロゴロしていたいだけなんだ。ただの中学生に一体何をやらせたいんだろうね? うちの船達は……」


[肯定。必然です。諦めてください。(そんな事は決まっているじゃ有りませんか。健気に頑張るマスターを愛でるのが楽しいからに決まっています♪)]


(……沸々とこの少年を手伝いたいと思ってしまうのは、私の勘違いじゃ無いって事ね。多分みんな同じなんだわ。この子は天然の(たら)しなのよ! それも機械まで誑し込むってレベルの……)


「兎に角最初にやらなければいけないことは、世界各国の王族や国家元首宛に親書を出すこと。当然国連やその他関係するだろう機関の長にもね。出来れば少しハッタリが効いた方法がグッドだわ。地球上の誰にも真似の出来ないような方法……手紙?」


「フムフム……それじゃこんなのはどうかな……」


 昴がおもむろに両の手を合わせてユックリ開くと、その間から和紙にも見える厚手の紙片(カード)が宙に浮かび上がりました。

 そして、指で摘んでテーブルの上に置いた後、昴が指でトントンと叩くと紙片は仄かに光りはじめ10cmほど上に立体映像を映し出しました。


『こんにちは~、僕は~バクーン。よろしくね~』 映像のバクーンは手を振って居ます


[[[[[[[「…なッ…」]]]]]]]


 ……ダッ…ダダダダッ……バタン……ジィーー

 いきなり部屋に飛び込んできたのは、男装の麗人サーベイヤーでした。

 (かぶ)り付きでテーブルの上を凝視しています。


「やあ、サーベイヤー久しぶり。どうしたの? もしかしてこれが欲しい?」


[是非!] コクコクと頷いていますね。


「ああっ、持っていっても良いよ」


「感謝♪」 ヒョイッ


 バヒュンッ……と、サーベイヤーはカードを持って消えてしまいました。

 やっぱりパートナーの事が大好きなんだね~。


「……今のは?」


「あれがバクーンのパートナー(宇宙船)のサーベイヤーⅠ世、のインターフェース端末だよ。やっぱりバクーンが大好きなんだね。それで、今みたいなカードなら良いんじゃないかと思うんだ。マルチ翻訳機能つけるから地球上の何語でもOKだよ」


「(ここは、変人ばかりだ……)昴くん、君、無駄に高性能ですよね。皆さんにお聞きしますが昴くんは普段からこんな感じですか?」


[[[[[[肯定]こんな感じね♪]そうそう]クルック~]……]ウナ~ン]


「ハ~、分かりました。常識が通用しないという事が良~く分かりました」




 ◆




 キャロライン女史の提案で、特別製の親書(カード)を各国の国家元首や国王、国連をはじめ主だった国際機関のトップ宛に送ることになった。

 送ることになったんだけど郵便でなんか送れないので、父さんに頼むことにした。

 父さんの得意技は、アポートとアスポート。

 そう、画面越しでも見えている所の物、質量が1kg以内の物なら転送できるんだ。

 大量の親書(カード)を作らされた俺も大変だったけれど、配達させられる父さんはもっと大変だったと思う。

 そう、俺達は親子して頑張った!

 けど誰も褒めてくれないのはなんでだろう、釈然としない。


 まず、ケラエノが世界中にばら蒔いているスパイプローブから映像を入手、リアルタイムの映像を見ながらアスポートで特定の場所に親書(カード)を配達した訳だ。

 いきなり目の前の空間に突然手紙が現れて、パサリッと落ちたら……人はどんな反応を示すだろう。

 そりゃ~誰だってビックリするよね、当たり前だよ。

 俺と父さんは、その瞬間の映像を見て相手のリアクションが一々面白いもんだから、わざと目の前に転送して二人で笑い転げていた。

 流石に200通を通り越した辺りで流れ作業になり、500通を送り終わった頃には、親子でもうやりたくないと後悔したのは良い思い出だ。


 キャロライン女史は、この時の親子の様子を端から見ていて頭を抱えていたらしい……。

 紹介された昴の父、(ゆずる)は温厚そうな紳士で天文台に勤める技師と紹介された。

 うん、お父さんハンサム!

 昴くん、将来が楽しみだわ♪

 しかしその後が酷かった。

 親子で笑い転げる様や、楽しそうに作業しながらも送り先の国の手紙の様式に合わせたりして無駄に芸が細かい所なんか親子揃(おやこそろ)って常識が無かったんだと理解した。

 いやいや、理解させられたのだった。


 ……お母様は、どんな方なんだろう。会うのが怖い……。




 ◆




 今回のプロジェクトに於ける直接の助力は、地球人が関与しない形で実施しなければならない。

 これを異星生物からのメッセージとして印象付け、人類の耳目を宇宙に向けさせなければならない。


 その第一弾として、人類側のそれぞれの代表へメッセージを超常のパワーで送った。


 2003年10月26日、国連事務総長をはじめ各国の国家元首及び国王や皇室の元へ届いた手紙は、何もない虚空から現れ届けられた。

 人々は、その瞬間を直に目撃した者が多数に上った。

 中には監視カメラなどの映像にも残っており、間違いなく何もない空間から湧き出すように現れたことが証明された。

 国連では、この手紙(メッセージ)の内容を鑑み国連加盟国全てに臨時の国連総会の実施を通達した。

 そして、通達の折りに確認された件の手紙が、現存するすべての国家や国際機関の責任者の元に現れ、更に使用されるすべての言語でメッセージが伝えられた事を確認するに至った。

 それまでの事実を照らし合わせ、各国で出来の良い悪戯か荒唐無稽な法螺だと思われていたメッセージに、俄然信憑性のある情報で有るとした評価が付くまでには然程時間はかからなかったのである。

 公的な歴史上、人類初の異星生物からの直接の手紙(メッセージ)に、人類はどの様に対処すれば良いのだろうか?

 手紙(メッセージ)にて予告された運命の日は、今年のクリスマス!


 国連の臨時総会で各国首脳が泥仕合をしている頃、当然のようにマスコミ関係者も事の重大さに頭を悩ませていた。

 どこから漏れたのか、ネット上ではすでに多彩な憶測が飛び交っていたのだ。




 ……あるサーバの掲示板よりの抜粋……


【敵か】 エイリアン総合対策スレ 【味方か】


  1:通りすがりのUFO

   このスレは、エイリアン来襲を想定して対策する為のスレです。

   忌憚のない意見をお聞きしましょう。



  2:通りすがりの自宅警備員

   2ゲット

   侵略ですね、対策は万全です。



  3:通りすがりの会長秘書

   3ゲット♪

   うちの会長の所にエイリアンから手紙が来ました!



  4:通りすがりの平社員

   3ゲット 出来なかった (´;ω;`)

  ≫≫3 それ、悪質な唯の悪戯だよ(笑)



  5:通りすがりの外交官

  ≫≫4 悪戯にしては手が込んでいる。

   世界中で同じ事件が起きているんだ、きっと本物さ!



  6:通りすがりの国連職員

  ≫≫4 そんな事で国連は動かないよ。

   手紙の内容は、異星人による地球来訪の予告だったらしい。



  7:通りすがりの自宅警備員

  ≫≫6 そんなうまい話の訳無いさ、挨拶を装った宣戦布告だろ。



  8:通りすがりの主婦

   異星人なんて居るわけが無い、詐欺でしょ。



  9:通りすがりの平社員

   それじゃ、どうやって全世界にメッセージを届けたのさ?



 10:通りすがりの外交官

   そう言えば何もない虚空から手紙が降って来たらしいよ。



 11:通りすがりの平社員

  ≫≫10 転送装置! まるでSFだwww



 12:通りすがりの自宅警備員

  ≫≫10 ウッソだ~、どうせフェデックスが配達したんだろ。



 13:通りすがりの国連職員

   立体映像がその国の言葉を喋ったとも聞いている。



 14:通りすがりの一般市民

   そりゃ~随分と金の掛かった悪戯だな、きっと犯人は大金持ちだ。



 15:通りすがりの女学生

   メッセージ送って来るなんて随分と礼儀正しい侵略者ですね。



 16:通りすがりの一般市民

   異星人が全部侵略者とは限らないだろう?

   美人の金星人希望ww



 17:通りすがりの自宅警備員

   どうせ俺たちは頭からバリバリと噛じられるのさ。

   きっとタコ足の火星人だろう、期待するだけ馬鹿を見る……



 18:通りすがりのジャーナリスト

  ≫≫10 国連がどんな答えを出すのか興味が尽きないよね~。

   ま~理事国主導で国連軍が組織されるって所だろうけど。



 19:通りすがりの自宅警備員

   戦争ですか、そうですか!



 20:通りすがりの一般市民

   どっかの国が抜け駆けして交渉したりしてな。



 21:通りすがりの平社員

   寝返りですね、アルアル。



 22:通りすがりの一般市民

   だいたい想像できるだろ?

   きっとあの国がやらかすさ、期待は裏切らないと予想汁。



 23:通りすがりの平社員

  ≫≫22 人類の裏切り者ですね、ごちそうさまです。



  ・

  ・

  ・



824:通りすがりの主婦

   メッセージが来たって事は、運命の日は既に決まってるって事?



825:通りすがりの平社員

   その日を祝日にしよう、そして誰も居なくなった。



826:通りすがりの自宅警備員

   人類滅亡の秒読みですね、1、2、3,ダァ~。



827:通りすがりのUFO

  ≫≫824 決定事項です、ご期待ください。  

  


828:通りすがりのジャーナリスト

  ≫≫827 御宅随分と情報に明るいな~、何者?



829:通りすがりの自宅警備員

  ≫≫828 それを聞いちゃ販促 

  ≫≫827 でっ、御宅何者?



831:通りすがりの外交官

   御宅何者?



832:通りすがりの一般人

   御宅何者?



833:通りすがりの警察官

   まさか犯人!?



834:通りすがりの大学教授

   まさか~♪



835:通りすがりの平社員

   マサか~w



   ・

   ・


 ……もうグダグダ……、 UFOはその名の通り……




 ◆




 2003年11月1日、国連総会議場ビル、会議は紛糾していた。


『件のメッセージに対し我が合衆国は、友好を持って答えたいと思う!』


『そんな事を言って、これは貴国のヤラセでは無いのか? 以前にも軍艦で転送実験を行っているじゃないか』


『フム、軍艦は無理でも手紙くらいは転送できるかもしれないね。その辺どうなの?』


『研究していないとは言わないが、現状では無理だ。分解されたものを再構成できない』


『これは神の御業に他ならない、皆さん天空からの使徒を迎える用意を……』


『御託は真っ平だ、殺るのか殺らないのかどっちなんだ?』


『我が国は、国連軍に迎撃を依頼したい』


『これは大日本帝国の陰謀だ、賠償金を……』


『混乱を来たす様な発言は控えて頂きたい。巫山戯ているのか?』


『今回の件は天災と同じだ。我が国に援助を……』


『徹底抗戦か敗北宣言かどちらにするのかね? そう言えば敵の連絡先はどこだい?』


『相手が相手だ。砲艦外交は、通用しないでしょうな』


『我々はどこに逃げれば良いんだ? 教えてくれたまえ……』


『結論を出すのはまだ早い、まずはあのオーパーツ(手紙)の分析結果から聴こうじゃないか?』


『ではご説明いたします。この一見何の変哲もないカードは驚くべきことに立体映像発生装置として稼働いたします。一般的なクリスマスカードと同じ大きさ同じ厚さのカードの形をしていますが、構成される成分は地球上に存在する(ペーパー)では有りませんでした。電子顕微鏡で分析した処、ナノメートル単位の微細な機械(マシン)の集合体であることが判明いたしました。使われているエネルギーは不明でありますが、地球の磁場によるフリーエネルギーによる物だろうとの事です……。カードから電波や磁気、電磁波等を完全にシールドした処、機能停止する事から判明いたしました』


『それで、誰がこんな物体をばら蒔いたのか分かったのかね?』


『それは分かっておりません。しかし現在の地球の科学では再現不可能だと申し上げておきます。先程USA大使の発言にも有りましたが、分解した物質を離れた場所で再構築する事は現在の地球の技術では不可能です。議長はオーパーツとおっしゃいましたが、正しく現代のオーパーツですね』

 

『そうすると、これは矢張りエイリアンからのメッセージと捉えて扱った方が良いということだね。諸君、このメッセージが伝える所では今年のクリスマスに、御近所へ引っ越しの挨拶に伺うと言った内容が世界中の言葉で記録されていた。立体映像に映された2足歩行の動物は、自分の事をバクーンと名乗っているが額面通りに地球外知的生命体として対応する必要が有ると認識する。このコンタクトに関して国際連合が代表して接触を持つという事で良いだろうか?』


『彼等のいう御近所とは、どこを指して居るのだろうか?』


 ……誰かが、ポツリと呟いた。

 するとどうだろう、議長の頭上の何もない空間が光り(禿げているからでは決して無い)、新たなカードがひらひらと落ちて来たではないか。

 今まで騒がしかった議場は、水を打ったように静まり返り、参加者は事の成り行きを見守っている。


『これは疑問に答えてくれたと見るべきだろうか、私が確かめて見ることに異議のある方は?』


『『『『『『……』』』』』』 


『……無い様だね。では異議は、無いものとしてカードを改めさせて頂こう』


 議長は、たった今頭上から落ちてきたメッセージカードを拾い上げ、テーブルの上でトントンとタップした、すると……。


 今までとは違い浮かび上がった立体映像は、実寸大なのかかなりの大きさのものだった。



【やあっ皆さん、お集まりのところを失礼するよ。1つ言い忘れた事が有ってね、引越し先を教えていなかった事を思い出してね。なんちゃって、実はワザとなんだけどね♪ だって住所は個人情報だし、急にそっちから訪ねてこられても困るからね。そうそう、アポ無しで訪ねてくるような礼儀知らずは、ここには居ないと思うけど、たまに居るんだ! 人んちに土足で上がり込んで荒らしていく盗っ人猛々しい生物が……。君たちはそんな礼儀知らずな事はしないと僕は信用しているからね。そうだった、また忘れるところだった。僕の別荘はね、地球の衛星に有るんだけどさ、1万年ほど留守にしている間に誰か来たらしいんだけど、知ってたら教えてね。しばらく留守にしてる間に、地球も随分と賑やかになったようで嬉しい限りだよ。それじゃ~またね~♪】 



『フム、USA大使にお聞きする。先方は、ああ言っているが何か弁解は有るかね?』


『……あれは、捏造映画で月に下りたのはほんのわずかな時間で……』


『そうか、あれはヤラセだったのか……』


『ハッ、卑怯だぞ、誘導尋問じゃないか!』


『ま~こっそり隠れて月に行ってる国家が他に居ない事を祈るとしよう』


 誰も発言はせず、そのうち大国の数か国は随分と挙動不審になっている様子だ。


『この件は、一先ず脇に置いておいてだね。諸君、聞いた通りだ。1万年留守にしていた隣人が帰って来たという事らしい……。この件に関しては、国際連合が代表に立つという事で良いかな?』


『『『『『『異議なし!』』』』』』  


『では各国大使は、それぞれの国に情報を持ち帰って頂き、次回臨時総会にて対応を決めたいと思います。次の開会は10日後、11月11日と致します。閉会!』







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