2-4-05 ヴァチカンからの使者…招かれざる客? 21/11/29
20211129 加筆修正
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世歴2003年10月7日、(株)タウルスの社長室。
「フ~ン、それで? 先方は、なんて言ってきてる訳……」
「ハイッ社長。ヴァチカンのローマ法王からダーリンへの招待状とは名ばかりの中身は召喚状でした。内容は、エチケットに則った物で強制的な内容ではありませんでしたので一応の礼儀としてお断りの礼状を返しておきました。ただ少し気になるのが、その手紙が速達で届いたのはダーリンが暴走して帰って来た4月7日の翌日、暴走から丁度1週間後です。メガフロートの最初の記者会見時期とも合致するのですがその事には一切触れた内容はなく……では、どういった理由に依るものか問い合わせてはみたのですがノラリクラリとはぐらかされるばかりでハッキリとした理由を言ってきておらず埒があきませんでした。そのまま平行線の交渉が半年ほど続いておりました。今回のメガフロートの一般公開もありまして、しばらくは多忙に付き御要望には添えないと昨日返答したところ……」
「返答したところ、どうなったの?」
「法王はローマを動けないので、No2である大司教がエスコートに伺いますとの連絡とともに既にローマを発たれ、現在こちらに向かっているそうです……。どういたしましょう?」
「どういたしましょうって言ったってどうなる物でも無いでしょう。チョット焦らしすぎたかしらね。向こうも実力行使に出てきたってわけね。お忍びでって事だと思うけど外務省と荒垣事務次官にはその旨を連絡しておきなさい。だいたい理由は想像出来るんだけど面倒くさい事になりそうよね~」
「なんでヴァチカンがダーリンに絡んで来るんでしょう?」
「宗教家って煮ても焼いても喰えない奴ばっかなのよね~。どうせ、今一番目立ってるから早いうちに昴の事を聖人にでも指定したいんでしょ」
「聖人!? ええ~~、どうしてそういう事になるんですか?」
「カトリックで聖人指定するためには、正式に洗礼を受けて入信してから列聖されなくちゃいけないから、その辺を法王自らやりましょうって事なんじゃないの? 有難迷惑よね~まったく……ほかじゃ呼ばれたらホイホイと出掛けて行くんでしょうけれど、日本じゃキリスト教を有難がっている人なんて絶滅種でしょ。おそらくはヴァチカンお抱えのサイキック能力者辺りが昴のサイコバーストを拾っちゃったんじゃないかしら~、それともそういうのを感知する聖遺物とかを保有しているとかかしらね……」
「社長……私も敬虔なとは決して言えませんが、一応はキリスト教徒なんですよ……もう少しオブラートに包んで頂けませんか。そんなホイホイって……ヴァチカンなんて言われると一般人は恐れ多くて対応に困るんですからね、確かに言われるままに応じちゃうでしょうけど……」
「何にしても、向こうが理由を言わない限り知らぬ存ぜぬで流してればいいわよ。だいたい説明責任を果たさずに自分の要件だけ進めようなんて、どこの不良政治家かっていうのよね~」
「ええ、ま~……仰ることは分かります……」
「でもね歴史の闇に葬むられ隠された幾ばくかの事実は、ヴァチカンの暗部に潜んでいそうでは有るのよね……。旧約聖書ってシュメール文書が元になってるって話もあるくらいだし……。ジェニー、その辺に興味は無いかしら?」
「興味が無いと言ったら嘘になりますよ。これでも考古学者の端くれですから……」
「それじゃ~上手いことやりなさいな。昴の事を出汁に使っていいから、情報を引き出してみなさいよ、あなたも知りたいんでしょ? これは多分、昴の為にもなるはずだわ……藪蛇ってことも考えられる案件だけれど『虎穴に入らずんば虎子を得ず』って言うし、頑張ってみなさいな」
「……イエス、サ~……」
◆
私は、現法王の後見人の一人、大司教を拝命しているパウロと申します。
みなさん気軽にパウロ神父と呼んでください。
私はたった今、日本の成田空港に降り立ったところです。
初めての日本……と言えば富士山と寿司に芸者……ウオッホン。
今回の私の任務は、お忍びで日本のある少年に直に会い、ローマに連れてゆくことです。
法王からは観光がてらその人物と能力を見極めて来いと言われております。
私が今回使える期間は2週間ほどですが、何としてもその少年と縁を結び、ヴァチカンへお連れしなければなりません。
しかし、気が重い事ですな~……。
事の発端は、今年の4月1日の深夜までさかのぼります。
ヴァチカン市国には、サン・ピエトロ大聖堂があり、その地下深くにはこの世に出してはいけないとされる物が厳重に保管されております。
所謂、呪物や聖遺物と言われる品々です。
呪われた物や祝福された物、どちらも一般の力弱き人には毒にしかならないとして、厳重に保管と言うより封印されているというわけです。
その中の1つ、力有る者が持つと予言が得られると伝えられている聖遺物が勝手に光り出したのです。
そこに光とともに浮かび上がったのは、古の予言の文字で有る様でした。
後に解読された予言は、古代シュメール語で『クリエイトマイスター・スバル・アマカワ』と読める文字であることが分かっています。
地下の封印庫の管理人はパニックを起こし、深夜にも関わらず一時サン・ピエトロ大聖堂が厳戒態勢に置かれる始末でした。
この異変はおよそ3時間ほどで治まり、その後この聖遺物は物言わぬ置物に戻ったのですが、この事実を無視できる様な人物はヴァチカン上層部にはおりませんでした。
すぐさま古の予言の文字の解読が行われそれが人の名であり、位か立場を表すだろう名称だと判明するまでおよそ半日。
予言された人物の特定を行なうに当たっては、其処に居た誰もが即座に思い当たったそうです。
この人物って、昨日テレビでニュースに出ていた日本の天才少年だろ!
それにしても、クリエイト(創造の)マイスター(王者・筆頭)とはどういう意味なのでしょう。
そのままに捉えれば創造主とも取れる言葉に、みな苦笑しか浮かばない様でした。
その場にいる誰もが導き出された回答に困惑を隠せぬ様子でしたが、法王がポツリと一言、『会ってみれば分かる』」とおっしゃったのです。
急ぎ日本に向けて、人物のヴァチカンへの招待状を出してはみたものの、先方は快く応じる様子も無く梨の礫。
再三の問い合わせにもこちら側の理由の開示を迫られ……聖遺物の事などは話せる訳もなく、平行線が続くこと半年あまり……。
こちらの要求は無視されたまま7月には、独自開発の飛行物体を公開テストして成功を収め、大々的にメディアに取り沙汰されておりました。
そして今回は、話題のメガフロートの一般への公開が行われたのです。
厳しい選考の上で抽選にはなるらしいのですが、技術者や研究者の受け入れも同時に開始され、一般人も現地一泊のツアーが組まれているそうです。
このツアー、既に向こう1年間は予約で一杯と聞いておりましたが、今回私はヴァチカンからの使者としてこのツアーに潜り込む事に成功いたしました。
しかし、これでは当人に会うのがいったい何時なることか……、痺れを切らした外交部の担当者が、ウチのおえらいさんを迎えにやるから会わせやがれと一方的にツアーに押し込んだらしい事を耳にして私は頭を抱えたのですが……。
全く、大人げないと思いませんか?
それで尻拭いにお使いに行かされる私って……これでも結構偉い人のはずなんですけど、仕方がないのでしょうね~……管理職の辛いところです。
いつもいつも尻拭いばっかり押し付けやがって……と愚痴もこぼしたくなるところですが、法王は法王で『くれぐれも先方に失礼の無きように、お願いいたしますよ。パウロ』と私に念を押す始末。
失礼な対応をしたのは、外交部の担当者だろう~! と思うのは私だけだろうか?
ハァ~、気が重い事だ。
図らずも昴がウンサンギガの頭首となる指輪を貰い、記憶の継承により昏倒するまでのおよそ3時間がぴったりと聖遺物の光っていた時間に合致する事は、この時点では誰も知らない。
◆
いつの間にか1周年だよ! アンタ、誰?
[マスター、マスター!]
「どうしたの? そんなに慌てて……。ハコらしくないよ」
[肯定。私達のお話が始まってから、今日で1周年になるらしいですよ]
「どういう事? 俺が君と会ってもう3年にはなるよね」
[肯定。どうも我々の行動がこの次元世界の事象に及ぼした出来事を次元の外側から観測している存在が居るらしいんです。そこでは、我々のことを創作の世界の住人として捉えているようですよ。昨今、多元宇宙論が当たり前に成りつつありますから、時空間を飛び越えてこちらを観測している存在が居ても可笑しくはありませんが、まさか直接メッセージが届くとは思いもよりませんでした]
「へ~、それでそのメッセージを送って寄越した次元の向こう側では、1年が経つって話なんだね?」
[肯定。そのようですよ。観測者から言わせると我々もそのうち、別の独立した次元を観測できる様になるだろうって言ってますね、向こうでもまだ自由に行き来は出来ないらしいので見ているだけとの事ですが……こっちに変な影響が出てないと良いんですけどね~]
ギクギクッ……そんな事あるわけ無いサ~~
「いま、誰かギクッとか言わなかったよね?」
[[[[[[[[[[言ってません]よ]ね]にょ!]……]]]]]今、噛んだのは?]
「ハァ~、今の所は信用しとこうかな。次元の向こうじゃ今はどうしようも無いしね……そうだよね? メローペ」
[……アハハハハ、ハッ、アハアハ……何の事ですか~? マスタ~、アッそうです、今度ルナベースを人形に変形させようかと思うのですが、ヤっていいですか?]
「ッ、それは駄目! 絶対に駄目だからね、良いかい分かった?」
[イエス、サ~♪]
どうして感づかれたんでしょう?
たま~にメローペに入って遊んでは居ましたが、痕跡などは一切残して居ないはずです。(メッセージ出してる時点でアウトの様な気が……)
昴君、きみ随分と勘が良くなって来ていますね。
ウンウン、我がマスターはスグレモノです。
お陰で誤魔化すのが大変です。
しばらくおとなしくしていましょうかね。
まだまだこの次元では遊びたりませんし、折角壊れない玩具が見つかったんです。
どうぞみなさん頑張ってこの次元を生き抜いてくださいね、うふふふふふ♪
……何かメローペに憑いてます……南無阿弥陀仏……アーメンかな?……




