1-5-01 村の分校では…あんた何者? 21/5/22
20210522 加筆修正
4584文字 → 4746文字
昴の居ない教室では、銀河が皆んなと学校集会を開いていた。
昴は、中学の入学式のあと校長室に呼ばれている。
希美おばさんも一緒だから、何かしらの説明をするんだと思う。
「皆んな、聞いてほしいの? 昴ちゃんが何か偉いのを背負いこんじゃったみたいなのは、一緒に見てきたから分かると思うんだけど、私は親が何と言おうと最後まで着いていくから!」
「双葉もだよ! 銀河姉ちゃんに独り占めはさせないの!」
「独り占めなんて……」 ポッ!
「俺も手伝うぜ! 面白そうだしな。愛子も連れてっていいんだよな?」
「どういう事? 健太ちゃん。説明してよね。それに、みんな1週間も何処行ってきたの?」
「うん? 後で説明してやるよ。人類に関わることだからな……」
「???なにそれ~」
「私もお手伝いしますわね、副会長ですし!」
「僕も昴くんには助けてもらったからね……」
「僕も僕も~~!」
「それじゃ全員で昴ちゃんを応援するわよ!いいわね」
「「「えいえいお~なの!」オ~ですわ」おぉー……」
「そんな力まなくての良いんじゃね~の♪」
「???」
「♪」
「後はセバスの爺さんに声かければ、何とかなるよな。実は愛子の分も貰って来てんだ♪ これ腕に嵌めとけよ……」
「えっ、これくれるの? 健太ちゃんありがと~♪」
「あんたも隅に置けないわね、やるじゃない!」
◆
昴ちゃんは、いつの間にか大人に混じって色んな物を作って、仕事をするようになっていた。
この頃は、仕事が忙しいらしくて一緒に遊んでくれなくなった。
校長先生は、大丈夫と言ってたけど、林先生は少し心配そうだった。
一緒に遊べないなら、一緒にお仕事できるように成れば良いんだよね?
多分、希美おばさんとハコさんに相談すれば何とかなると思うんだけど、セバスのおじさんが手伝ってくれるって言ってた。
この分校も今年から小中学共学になったから町の中学には行かなくてもいい。
今は、昴ちゃんを入れて8人だけど、村には人が増えてきて来年には新入生も入るらしい。
昴ちゃんは、双葉ちゃんが卒業したら廃校かなって心配してたけど、そんな事にはなりそうもない。
そうそう、愛子ちゃんは希美おばさんが天文観測所を辞めて、代わりに転属してきた相良さんちの娘さん。
健ちゃんが面倒見てたんだけど、どうやらくっ着いたみたい。
愛子ちゃんが転校してきた時には、昴ちゃんも忙しくなってて、他の女子ほど接触が多くなかったからね。
ライバルが減って、ガッツポーズをしてる双葉ちゃんが居たのは見なかった事にして置きましょう。
私達は、小さい時から一緒に居たからこの村が凄いことになってるのは当たり前の事なんだと思ってた。
だけど、校長先生の孫の裕美ちゃんや聖ちゃんに尊くんの兄弟、ダメ押しで愛子ちゃんが転校して来て、この村が尋常じゃないと知ったの。
校長先生は、ホホホって笑ってるし、林先生も諦めたような顔してる。
ああ、山田太郎先生がこの春から赴任してきて、中学の方を見てくれる事になってるんだけど、ひどく戸惑っている様子だった。
早く馴染んで欲しいと思う。
私達も行動を開始して、少しでも昴ちゃんのお手伝いが出来るようにならなくちゃ。
◆
昴くんが、とうとう大っぴらにやらかしたみたいね。
テレビ見てて吹いたわよ、島作っちゃったんですって。
ま~何か仕出かすとは思ってたけど、やることがデッカイわね。
今年の夏休みは、南の島でバカンスに決定よね。
彼処ならパスポート要らないし、昴くんに便乗していけばタダで赤道近くまで行けるって最高じゃない。
レンタルのプレジャーボートも有るみたいだし、クジラさん生で見られるって今から夏が楽しみだわ。
自宅の方にお祝いに伺ったら譲さんが出てきて、急な法事で昴くんと希美さんは出かけたって言うじゃない、これはマスコミから逃げたわね、一躍時の人だし、当たり前よね~なんて思ってたんだけど、中学校の入学式始まってからも、何か一人で考え込んでるのよね、一人前に男の顔してるし何か有ったのは間違いなさそうだわ。
「今日はおめでとう。ここで君が中学生に成ることが出来て私も嬉しいわ」
「ありがとうございます。今後とも宜しくおねがいします」
「それで、折り入っての話って何かしら? チョッとビビってるんだけど、希美さんの鼻息に!」
「校長、其れは無いんじゃないですか?こうやって手土産まで持ってきたのに、要らないんですね?」
「アアアア~、希美さん。私そんな事、一言も云ってないじゃない。それで其処に見えるのは新製品なのよね? 是非、頂きたいものだわ、お~ほほほほ」
「……この~業突く張り……」
「アラ、何か言ったかしら?……」
「まーまー、仲が良いのは分かりましたから、俺の話を聞いてくださいね」
「ええ、昨日まで皆んなと雲隠れしてたのと何か関係が有るのかしら? 君、先週と顔つきが違って居るわよ」
「勘が良いですね。チョッと皆んなで遠くまで行ってきました。それで、色々と分かった事とこれからヤラなくちゃいけない事が山積みなんです」
「あら、南の島で随分と苦労したのかしら?」
「先生、もしもあと25年後に地球が滅亡するとしたら、どうしたら良いと思いますか?」
「藪から棒に何を言い出すのかと思ったけど、昴くんはそんな事に悩んでいたのね。そうね~、人間なんて次の瞬間にどうなっているか分かんないものでしょう。出来るだけ後悔の無いように生きられれば、満足じゃないかしら。どんな時も全力で取り組めば、何かしらの答えが出るはずよ。それで、君の事だから何かあったんでしょ~?吐いちゃいなさい、聞いてあげるから」
「……チョットお耳を拝借、……ボソボソ…、カクカク……、シカジカ……」
「エエッ、エッ、ほんとに……、フムフム……、うわ~……こうしちゃ居られないはね。まず口の固い関係者を召集するわよ」
昴くん、いくつか確認するわよ。
この話、ご両親は当然知ってるのよね?
そう、知ってて其々に走り回ってるのね。
25年後の地球滅亡の根拠は?
エイリアンから接触を受けて、逃げろと警告された、ほほ~。
逃げる手段は有るの?
宇宙船と超技術をもらった、ホウホウ。
最近のアレコレはその超技術による所かしら?
フムフム、小出しにして基礎の水準を上げようとしたのね。
それであの騒ぎか~。
その超技術は誰でも使えるの?
使うには、改造されちゃうのね
改造されちゃうと……天河家のみんなみたいになるんでしょ?
どうして分かったかって、だって希美さんや譲さんが若くなってからでしょ、色々起こるように成ったのって。
そうよネ~、そのまま発表なんかしたら戦争に成っちゃうわよね。
寿命が伸びるだけでも殺し合いになるわよ。
エイリアンが来る前に人類同士で殺し合いって、馬鹿ばっかりしか居ないし、割と平和な日本でも馬鹿な政治家にこの事が知れたら、殺し合いが始まるわよ……。
兎に角、十年で宇宙に出ても不思議じゃないくらいになるまで宇宙船のことは秘密にしなさい。
そう、希美さんも同じ事を言ったのね。
フムフム、指揮をとってるのは希美さんかしら。
「今の処は私が采配振るうしかないじゃないですか!」
でも、要件の中心は昴くんよね、フォロー出来る人間が少なすぎるわね、テンパってるんじゃないかしら希美さん、あなた同じ趣味のリケジョしか友達居ないし。
「大きなお世話です、フンッ!」
昴くん、今年のゴールデンウイークに私の教え子や知り合い集めて、対策会議やるわよ。
ご両親とそっちの関係者も集めてもらえる。
場所は(株)タウルスの会議室を貸してくれると助かるわ。
彼処なら詰めれば500人位入れるでしょ、あんたの事だからセキュリティーはシッカリしてあるんだろうし、取り敢えず声を掛ける人間の名簿を渡すから、現在の裏とってもらえるかしら。
流石に、知ってるけどしばらく没交渉なんて教え子も居るから、怪しいやつはソッチでハネていいわ。
なるべく使えそうな奴をピックアップするからお願いね。
そして渡された1000人からの名簿には、現役の閣僚から各省庁の幹部に教育関係者や大学の教授を始め、医師、防衛族、警察消防関係者、有名企業の社長や幹部、マスコミ関係者まで名だたる名士が並んでいた、ウチの校長って何者?
それからの母さんの動きは早かった。
ピックアップされた名簿から、関係データベースが構築され公安にも協力(データを勝手に使わせて)頂いて裏を取り、ふるいに掛けて384名にまで絞られた。
そして、選ばれた者たちに送りつけられたのは、61歳になるのに30代後半にしか見えない恩師の着飾った姿の絵葉書に、一言『指定の日時に集まらないと、バラすわよ!』 だった。
いったい何をバラすのか、聞きたいけど最後まで聞けなかった。
だって、続々と集まってくる人たちの様子が鬼気迫るって言うか、ほんとにどんな秘密を握られているのか、悲壮感さえ漂っていたからだった。
本当に、校長って何者?
◆
新しい学校生活がスタートしました。
この村の分校も、今期から小中一貫教育校として新たなスタートを切りました。
私も定年を延長して今年は61歳。
関係所管を走り回り、村長と県の教育委員会に掛け合い、初代の兼任校長として65歳まで務めることになっています。
ハ~、去年定年で楽隠居出来ると思っていたら、この3年でこの村もガラッと様変わりしてしまいました。
その張本人は、今年中学生に成った天河昴くんの仕業らしいのですが、ひなびた田舎の村が今では最新の設備環境に成っています。
昴くんは、政府の重要人物に成っているので、校舎脇にも護衛警官用のボックスと官舎まで建っちゃって、なんというか。
校舎建て替えの許可を取って下さいと本人から言われた時には、この子は何を言っているのかしらと思いましたよ、ほんとに。
そうしたら国の方から圧力が有ったらしく、直ぐに県の許可が降りて、昴くんに話したらその週末に校舎は建設用の暗幕に覆われてしまったの。
しばらく授業ができなくなるんじゃないのと言ったら、金曜の夕方から土日の2日半で使えるようにするから大丈夫って言うんだもの、びっくりだわ。
月曜になって来てみれば、木造平屋でそれなりに広かった校舎は、その2日半で機能的な2階建ての建物になり、小さいけれど体育館まで設置されたの。
よく見ると今まで無かった、三階建のマンションが併設されて裏山だった所に駐車場ができてるじゃない。
校庭は綺麗に整地されて、端に見えるのはヘリポートかしら、これでドクターヘリがすぐに呼べるわねってそうじゃない。
慌てて天河家に電話したら『綺麗になったでしょ、マンションは護衛警官の官舎で一階に診療所も付いたから安心だよ』ですって、いくら掛かったのかしらこれ、一応建築確認が有るからと言うことで校長としてその日に立会をしたら、(株)タウルスが建てて県に寄贈したことになるみたい。
……ウチも建て替えてくれないかしら、えっやってくれる?
格安でリフォーム・工期は2日ですって、解体に一日、組み立てに一日。
リフォームなら建築許可は要らないから直ぐですって、ム~お高いんでしょ~?
エッそんな安くていいの! 是非お願いするわよ。
いつの間にか村道と私道はきれいに整備されて、県道と国道の方に老朽化が目立つように成ってるし、電気代が安いと思ったら、体育館の屋根は太陽発電パネルに成ってるんですって……。
停電に成っても大丈夫って言われたわ、実はウチも今は電気代払ってないのよ。
県の方から、各施設の電気設備の相談に乗ってくれって連絡が来たんだけど、こっちに言われてもね~。
色々とびっくりしたけど、ここまでされたら私だって頑張らない訳に行かないじゃない。
何だかんだと希美さんには外堀埋められてるみたいだし、しょうが無いわよね。
その代りと云っては何だけど、ノルンの情報は最優先でお願いね♪。




