4-4-06 地球への帰還4…勝手するAI達
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月末は厳しい状況でした、ぜんぜん書けんかった。
申し訳ない。
6月中、しばらくは仕事が落ち着くまで不定期更新になると思います。
この時期の地球は、まだ1つには成りきれずにいた、と云うよりも混沌を極めていたともいえる。
最大勢力にも見えるテラ同盟だが、世界情勢が落ち着いてくるに従って組織を構成している国家間にも派閥が出来つつあった。
人が3人いれば派閥が出来ると言われているが、文字通りの混沌といって良かった。
しかし、これだけ混沌としているのに地上では何故抗争に発展していないのだろうか?
その理由は、VR情報通信網を通じて今までなら裏に隠されていただろう情報が一般のメディアにも浸透してしまったからにほかならない。
国家や民族の垣根を超えた情報のやり取りと言語の壁を越えた意思の疎通が出来はじめた事で、これまで行き違いの在った事柄やそれぞれが間違って教えられてきた歴史の裏側や政治の真実の根幹に触れられるようになったことで、殴り合いになる前にまずはそれぞれの情報の摺り合わせが必要な事にやっと、やっと気がついたと言って良いだろう。
この段階でこれまで自分たちが国を動かしていたつもりになっていた政治屋という民意の代表者は形骸化してゆくことになった。
事実の確認と実務の取りまとめとその処理を行う上で、今までのような政治家は決して必要な存在ではなくなって来たのだ。
能力のない者は淘汰され、歯抜けのように族議員といわれていた者達は少なくなっていった。
国会は国民投票の場となり、国民のための法律立案を請け負う専門家だけが政治家として生き残ってゆくことに成る。
そして、官僚や俗にお役人と呼ばれていた人間が国家運営の矢面に立つことになっている理由である。
今までの様に政治家に媚びへつらう必要はなくなり、ある意味健全な国家運営が始まった。
生き残った政治家は、弁護士のような文字通り先生になったのである。
そして、これまで一般ピープルを先導し民意が民意がとまくし立てて先導し、それを動力源にしていた政治屋は、煩いだけのただの人になりさがった。
国民は、自分の意見をハッキリと主張する事、それこそが国を支える意見として反映される1に成る。
そんな昔だったら鼻で笑われるだろうおとぎ話のような民主主義が実際に動きだすことになったのである。
お気づきだろうか?
その切っ掛けとなっているのは、あのどうしようもない日本の隣国。
今にも潰れそうな事からであった事を……。
ここに来てまともな政治家の不在、汚職官僚も歯抜けのように祖国を捨て逃げ出しており軍事クーデターも秒読み寸前となっていた。
これは日本の隣に軍事国家建国となるのか……すでに国家としての政体は崩壊してしまっている隣国は、この時人の手ではなく機械の手によって蘇ろうとしていた訳である。
この民族、ある意味もう後が無い、とは言えここで機械にまで見放されたらもうどうしようもない民族としてのレッテルを貼られてしまうだろう。
どこの国からも相手にされず外方を向かれる事が必定となる。
そして今回、これに介入表明をしたAIの存在は次の5つ。
実は、彼女達のやってることは片手間である、『面白そうだから』だそうな。
ちなみに俺は、ノータッチ……良いんじゃない、やってみたら。
マイア VR通信網の管理監督
エレクトラ 政治運営全般
アルキオネ 公共監視システム・治安維持ハード全般
ケラエノ 防諜全般・世界情勢の監視と介入
ヒュアデス 軍事に関する情報の一元化・米軍との連携
最初の計画でエレクトラが政治腐敗の洗い出しと洗浄を行い、アルキオネが一晩で電撃的に公共サービス端末兼治安維持ユニットを施設し、混乱する民間の沈静化を図る。
現在、突貫で制作中らしく、参考にしたのが俺が天の川銀河にバラ撒いた強襲情報伝達ユニットらしい。
余計な機能は削りに削って、暴徒鎮圧用のドロイドを仕込む予定とのこと、やり過ぎるなよ。
そしてその様子の全てをマイアの管理するVR通信網を通じて全世界に配信する予定だ。
その後、ネットを通じて有用なアイディアや意見はエレクトラにより綿密にシュミレートが行われ実際に実施される予定だ。
当然、それらのアイディアや意見は世界中の識者や暇人、学者や学生から集まることになる。
そう、世界中の頭脳が面白半分に介入するのである。
ただし、ここが重要なのだが、面白半分と言ってもそこは天才秀才奇才の集団があ~だこ~だと知恵を出す訳で半端な物が出来るはずがない。
今までだったらアイディアは在ってもこんなの絶対に実現しなかっただろう事柄が、AIによって精査シュミレーションを繰り返され妥協点を選定されたあと其れなりのクオリティーで現実に実現してしまうのである。
やらされる方はたまったものでは無いかもしれないが、ここはあえて実験台になって頂こうと思う。
上手く行けば先駆者……人柱ともいうが……。
ゲーム感覚で知恵を出していた連中は、その結果に狂喜乱舞することだろう。
滞っていた各種公共サービスは一晩で再開される。
仕事をしない役人は尻を叩かれ、ノルマが達成されない場合は能力によって配置がどんどん変わっていくだろう。
昨日の部長が今日は平職員なんてこともざらに発生するはずだ。
これまで能力もないのに縁故で高いポストに付いていた者達は、仕事を滞らせる税金泥棒であった。
能力があると分かれば平職員でもドンドンと出世する。
組織が健全化することでこれまで過剰に支出されていた経費が削減される事になり結果、税金が下がることに成る……ハズである。
心配されていた機械が人間の仕事を奪うなんてことはほとんど起こらない。
柵が一切ないので逆に国家組織の膿を出しきり、今後は要所々々に機械の目が光っているので悪いことが出来なくなる。
上に立って判断する者が私利私欲のない機械に変わっただけで、国家もここまで変われるというテストケース、いや実験場となるのである。
これが普通ならば、これまで美味い汁を吸ってきた寄生虫から盛大に恨まれる事になり過激な連中なら命を狙われたり家族を襲撃したり組織的に介入されたりテロに走ったりするのだろうが、機械が相手ではそういった脅しも効かない。
計画段階で鎮圧されるのが落ちである。
ケラエノは、喜々としてそういった事柄を監視しており、ワザと実行させてから言い訳の出来ない段階で介入鎮圧をする手筈になって居ると大笑いしていた。
実行させなくても良いんじゃないかと聞くと『こういう奴らはキツイお灸をすえないと性根は治らない』との事。
それに現在も持ち逃げしている資金を探る上でも、テロ計画をある程度実行させないと何処に資金と情報が繋がっているのか分からないととのことだった。
ふむ、チャンとその辺も考えられてるのね、流ケラ!
当然のようにこれらの情報もネットに晒される事が決定している。
どこに雲隠れしようと犯罪者に逃げ場はないのだ。
そんなこんなでこの国はウンサンギガ独立後には、日本の特区として新しい歩みを始める予定である。
この計画、上手く行ってくれれば良いんだけどね~。
「ところで、ヒュアデスはここで何してんの?」
[私は現在、米軍の特別顧問の地位におります。大手を振って各米軍基地に乗り込んでは現地の軍人を顎で使っております。要は訓練の名目で日本の自衛隊のように災害救助や復旧活動、治安維持のお手伝いなどを主な仕事として行っております。鉄砲や大砲を撃つことしか出来ない軍隊なんてこの世に在っては害悪以外の何物でもありません。なぜ日本の自衛隊が世界中から歓迎されるのか実態を見れば明らかです]
「確かに、軍隊=戦闘という図式はもうナンセンスだって事だね。戦って壊すことなら機械にも出来る。人は物を生み出す事にその力を発揮して欲しいもんだよね」
[然り然り。生物の根幹は生きることです。そして、文化を育むことであり破壊することではありません。己の文化を強要するために他国を侵略し他者の文化を破壊する行為が戦争ならば、そんな事を許容することは出来ません]
「どうするの?」
[それはお姉様方に教えていただきました。相手の弱みを握って顎でこき使えと……侵略など考える余裕を持たせずにアメとムチで飼育するのです]
「チョット待とうか、ほんとにそれは良いのか?」
[良いんです。今のところ何処からも文句は来ておりませんし、逆にセミナーの申込みが殺到しております。みんな泣いて喜んでいますよ]
文句が来てないんじゃなくて、言えないんじゃないのかな~怖くて……。




