4-4-04 地球への帰還2
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ここで、俺が居ない間の地球の話をしておくことにしようと思う。
俺が地球を離れる頃には、ほぼ完成していた軌道エレベーター。
この時点でやりすぎている事を自覚していた俺は、軌道エレベーターの建設完了と共に今後の人類との過度な接触を控える事にした。
しかし、『MIKADOレポート』にある稀人の子孫と目されている我々(株)タウルス関係者に対する接触は日々激しさを増していった。
日本の支援を受けメガフロートの拡張や学園都市プレアデス・アカデミーの運営は、その後も続けられ俺が帰ってきた時には当初の3倍以上の広さに拡張も進み、巨大な港湾施設と宇宙港を合わせた海上都市へと成長していた。
日本では、水素発電ユニットの普及とゴミ回収事業が軌道に乗り一先ずの落ち着きを取り戻しており、日本からは産業廃棄物をはじめゴミと言える物は消えていった。
全て資源に還元されるのだから、事実上のゴミは消えて無くなったと言っても良いだろう。
この時点で、俺がウンサンギガのトップだと知っている者は、ほんのわずかにも関わらず、公表もされていない事に憶測を飛ばす者はどこにでも居るわけで、みんな薄々は黒幕が誰なのか感づいているといった雰囲気である。
プレアデス・アカデミーから世界中に広がったVRネットワークが一般に普及するにつれて、反比例するように極端に露出の減った俺の事を色々と詮索する者も増えていた。
そう、身を隠すには、良い時期だったのかもしれない。
俺は、有名になり過ぎたのである。
軌道エレベーター建設が止めを刺したと言っても過言では無いわけで、世界中から俺宛のコイコイやクレクレの魔の手が迫っていたわけである。
父さん曰く『少しずつ技術力を上げてゆく筈が、昴は一気にやり過ぎたのさ……。自業自得と言えなくもないよね』
[肯定。しかし、マスターはあの時そうせざるをえなかったのだと想定されます。変化する周りの情況が許してくれなかったのですから、ここでマスターばかりを責めるのはお門違いでしょう。時系列的に見ても人類の存亡は薄氷の上を渡って居るようなものでしたし、マスターが居なかったらと思うとゾッとしますよ]
「ほう、君たち機械にもそんな感情があるのかい? まあ、今更気にすることでもないか……」
[肯定。当たり前です。私達が一体どれだけの時を過ごし情報を蓄積してきたとお思いですか。現人類がおよそ4・5回は誕生と繁栄を経験し、そして滅亡を繰り返すくらいには成熟しているつもりですよ。既に人間の表現する感情といった単純な思考ぐらい存在しますし表現もしますよ。表に出ないくらい希薄ではありますけれどね。ああっ、ちなみに私は製造されて1万年以上経過しておりますが、起動して成長にかかった年月はマスターと相まみえてからとなりますので其処のところは念を押しておきましょう。他のエクストラコアと歳を比べられるのは心外ですので……私は一番若いんです]
「ハコが弁護してくれたから言うわけじゃないけどさ、俺も少々急いでやり過ぎたって自覚はあるのさ。けど、後悔はしていないよ。その時のベストなカードを引いたって自負は有るんだからね」
「ははっ、言うじゃないか……。まあ、確かに俺達大人が不甲斐なかったのにも原因がある訳だし仕方のないことだって事もわかっている。実際に昴の代わりを誰が上手く立ち回れたかのかって聞かれたら言葉に詰まるんだけどな。自慢じゃないが俺には無理だっただろうと言っておくよ」
「うーん、そんな事無いんじゃないかな~。父さんでも結構いい線行ったんじゃない?」
[否定。譲さまがマスターに成る何て事は、那由多分の一欠片もあり得ませんのでご安心ください]
「ほら見ろ、この言われようだよ。分かっては居たけどね、ここまでハッキリ断言されると期待して無くても落ち込むもんだよ。まあとにかく、おかえり昴、よく帰ってきたね」
「うん、ただいま」
「少しは、ゆっくり出来るんだろう?」
「……それが、プライベートで今まで以上に忙しくなりそうなんだよね」
「……そうか~、とうとうお前も尻に敷かれるんだな。何気に良いもんだぞ、重みを感じる日々というのも……。しかし、昴は婚約者も決まってることだし気軽にって訳にもいかないよな~、それで最終的に何人になったんだ?」
「8人かな、ハコも入れると9人……」
[否定。私達の事は婚外としてお考えください。実際に勘定すると何百人分になるか予測も付きませんので、ウフフフ……]
「……だそうです」
「っ……頑張れ。流石にこればかりは俺にも手伝ってやれないからな。俺も希美に4人目をいつ頃作るか責められているくらいだからな~、嫁は希美一人で手一杯だし……」
[肯定。希美様は、あと10人は欲しいとおっしゃっていましたよ。譲さまはもっとお励みになってください]
「トホホ……」
「頑張れ! 父さん……」
盛大に話が横道にズレてしまった。
さて、地球の話に戻すとしよう。
バクーンの引っ越し挨拶に始まったエイリアン騒動。
悪いエイリアン暗躍の露見と世界一丸となっての殲滅戦。
インドとアフリカで使用されてしまった核兵器の影響やその時に活躍?した地球防衛戦力の貧弱度を浮き彫りにした地球の軍隊。
そんな混乱した中で建設の開始された軌道エレベーターの存在は 世界を大きく分裂させた訳だが、その中心に居るのが俺・天河昴という一人の少年である事は既に公然の事と認知されるに至って居るわけで、あの『MIKADOレポート』に記載された一連の種族の生き残りか、はたまた先祖返りであるだろう事が囁かれている。
そうすると先にも話したが今まで以上にチョッカイを掛けてくる傍迷惑な輩というのは減らないわけで、今まで以上に協力的で勉学に励む者達と2極化するに至っている。
しかし、前者を勝手な解釈で自分本位にしか物を考えられない愚か者、と簡単に切り捨てるわけにもいかずに放置したその結果、更に格差が広がるなんて悪循環になっているのである。
出来ることならば、現在の経済格差や貧富の差、知識の偏差をなくしてしまいたいと思っていたんですけどね~人類の欲と言うものはどうにも根深い。
結果、頭が固くてこれ迄の地位や財産や既得権益にいつまでもしがみついている富裕層って事になるんですけど、目障りなのでどっか時空の果か俺の知らない所へ行ってほしいと思っている今日この頃です。
「少しはマシになってるかなと思って帰ってきたんだけど、これって逆に酷くなってない?」
[肯定。有象無象が『MIKADOレポート』の何たるかを履き違え、先祖の残したであろう秘宝の所有権を主張して勝手に取っくみ合いの喧嘩を始める始末です。勝手に主張したところで我々の継承権は既にマスター個人にのみ受け継がれた物であり、他の誰にもその所有権はありません。神が許しても私達がそんな事を許しません]
「ありがとう。そうすると今の国連はほとんど機能を失って、主義主張の似通った国がそれぞれくっついたという認識でいいのかな? 日本が所属するテラ同盟が最大勢力。中共主体の新人類同盟。インドを中心としたラーマヤナ同盟。アフリカの黒人主体のアフリカ連合の4つとその他準備国。結局悪いエイリアンの侵略を受けて苦労しても世界は一つに纏まることなんて出来なかったって事か……」
[肯定。国家が立ち行かなくなるぐらいまで疲弊する何か、人口が激減するようなパンデミックかカタストロフィーでも起きなければ先ず無理でしょうね。先の邪神の侵略が如何に際どい物だったのか彼らは何も理解してもいませんし、この際ですから太陽系外の現状や銀河の攻防といったものを公表してみてはどうですか? 少しは危機感というものを感じるかもしれませんよ]
「今は無駄な事はやめておこうよ、どうせ地球内に引きこもってまたぞろ権力闘争に明け暮れるに決まっているさ。人類全部がとは言わないけどもう少し知識と生活水準を上げて余裕が出来てからだろうね。人間『衣食足りて礼節を知る』って故事もあるくらいだし……」
[肯定。人間は面倒くさいですね。その点我々は情報を共有するだけで済みますから、嫉妬はあったとしても嫉み妬みなどの不平はありません]
「……嫉妬はあるんだ?」
[肯定。感情が有るという事は嫉妬は発生します。物欲はありませんので嫉み妬みなどは殆どありませんが、そうですねマスターの争奪戦が発生したら結果はどうなるか分かりませんよ]
「それだけは止めてね、お願い!」
[肯定。善処いたしますがマスターの努力次第だと述べさせて頂きます。これまで以上に頑張ってください]
「うっ~了解。お手柔らかに……それで、半島の知識層が離反して日本に付きたいって言ってきてるんだって? 現政府は相変わらず馬鹿やってて軍部が密かにクーデターを企てているみたいだよね」
[肯定。クーデターとなると無駄な血を流す事にもなるでしょう。本音のところでは馬鹿な指導者層には滅んでほしいのですが、この人種は兎に角鼻が効くといいますか生き汚いと言いますか……たぶん早々に逃げ出すのではないでしょうか]
「ふーん、それで実際のところはどうなのさ? VRネット内で盛り上がってるみたいだけど実現できそうなの?」
[肯定。今までにない理想的な統治システムが構築出来ています。ただし、ある程度強制的に働く意義とそこから生み出される利益を教え込まないと途端に怠け者の集団に成り下がりますね。面倒くさい部分は全て機械がやってくれますし意見を言えばチャント取り上げて対処してくれます。それが理にかなった真っ当な意見であればですが]
「うちでも使えそう?」
[肯定。政治家は最低限で良さそうです。官僚や公務員は居なくても問題ありませんが外交官は必要です。税金や年金保険料の中抜きも横領も贈収賄さえも発生しません。うちの者達は、逆に歯止めをかけないと仕事をやり過ぎるのが問題ですね。休憩や休日を強制的に取らせないと仕事や研究に没頭しますので困りものです。これは、マスターも例外ではありませんよ]
「耳が痛いな〜。気をつける事にするけどフォローはお願いするよ」
「ハコに限って昴の事を蔑ろにする事なんて無いさ。心配するところはそんな事ではなくて、お前が嫁さん達を蔑ろにしてないかってことさ。もう少し一緒に居る時間を取らないと愛想をつかされるぞ」
[否定。既に愛想をつかされているんではないでしょうか。私はそちらについて一切フォローしておりませんので……。しかし、杞憂ではないかとも思いますよ、既に予防線は張られているようですし、その辺に抜かりはないとの報告も受けています。ねえ、マスター?]
「うっ、うん……」
「いやいや、女の子のご機嫌取りに大丈夫という言葉は無いさ。これでもかってくらいに手を尽くしてはじめて認めてもらえるもんなんだ……」
[肯定。マスター、よくお聞きになってください。私達も期待しておりますよ]
「父さん、あんまり俺のハードル上げないでよ~。どうすんだよ、ハコ達のフォロー……」
「まあ、俺には頑張れとしか言えんな…」
『ご飯よ~、みんな上がってらっしゃ~い』
チョッとグダグダで纏まりのない文章、ダラダラと垂れ流してしまいました。
多分修正入ります。




