4-3-15 昴の独白…エッ愚痴じゃネーの此れ
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銀河達に終始ドナドナされている最中、ほうぼうから聞こえてくる声があった。
( )内は、大人達の心境や返事にツッコミです。
『相談もせずに一人で飛び出してゆくんじゃない』
(不甲斐ない大人で、力になれるかは分からないが……)
『行ったきり中々帰ってこないのはなぜだ』
(俺達には、迎えにも行けないのが辛い……)
『連絡くらい寄越せ! お前なら方法は幾らでも有るだろう』
(せめて情況くらい教えてくれてもいいじゃないか……心配くらいさせろよ)
御尤な御意見、身にしみるのでありまする……。
イヤー、耳が痛いのなんのって、ダジャレを言えるだけの余裕が有る……様に見えるかも知れませんが、俺はその度に身が細る思いなのですよ。
無駄に下らない事でも考えていないと、冷や汗ダラダラ、スルーするのもやっとの心境なのです、ほんと。
これが全部、俺の事を心配して言ってくれているのが分かるだけに、辛い!
(それが分かってるなら無茶をするな!) ……無理……
大人の方々は、俺が周りの事を何も考えていないと言うが、俺は俺なりに先のことを考えているつもりではあるんです。
一々巻き込まれる俺も悪いのかも知れませんが、こればっかりはどうしようもないのですよ。
(うーん運命だな……しかし、お前は明後日の方に突き抜けて行きそうだ)
それに、ブッチャケるとこんな面倒な事に皆さんを巻き込みたくなかった、と言うのが大きな原因なのです。
(なに水臭い事言ってんだ……だが、何となく分かるぞ~漢だよな~)
それは、傲慢だと言う者も居るでしょう、子供の我儘だと言われても仕方がないんです。
たしかに子供が一人で背負い込むには、大きすぎる問題ばかりなのかも知れません。
(何だ、分かってるんじゃないか……)
ですが、敢えてこんな行動を取っているのにもチャンとした理由があるんです。
だって、ハコ達を表に出せないじゃないか?
(確かに……)
バクーンの存在だってそうです。
(うーむ……)
俺達のルーツなんてその最たる物でしょう。
(言葉がないな……)
今は味方かもしれませんが、下手をしたら人類はバクーンやハコ達に滅ぼされていたかも知れないのですよ。
父さん母さんには、もう最初っから大変な迷惑を掛けていたし、他の大人の皆さんにも、大変お世話に成りました。
(それは、子供の特権と言うヤツだ。普通の親は喜んで手を貸すだろう)
(別に悪い事をした訳じゃないんだ、胸を張れよ)
これが言い訳にしかならない事は、俺にもよく分かって居るので、皆さんのお小言や苦情は敢えて黙って全部聞きますから、今後とも宜しくお願いいたします。
(よし分かった! 後は任せろ。なんとかしてやる……)
俺は、今までは親に保護されるのが当たり前の立場に居ました。
でも、世帯を持ったら保護する方に変わるのだから、どうしたって変わらなくてはいけないと思っています。
生活基盤を確立し(既に万全)、家族を守る為の備えを行い(此れも言う事無し)、己で決断し(いつも勝手に飛び出し)、行動し(やらかして…)結果を出す(出してるよね?)。
そして、最後にはその責任を取るという事だと思っています。
それが出来るのが大人だという事は俺にも分かるし、周りの大人達が良い見本だと思っています。
(悪い見本も盛り沢山だがな……)
しかし、これから国を作り国民を導き養ってゆくという事は、そんな大人達でも大変な仕事である筈だし未知の領域の話だと思います。
おじさん、おばさん……。 (何だ? どうした?)
お嬢さん達を険しいだろう事が分かっている、そんな運命に巻き込む事を許してほしいんです。
(……駄目だって言っても付いていくだろうな~。親としては反対したい)
(しかし、そんな事を言ったら親子の縁を切られかねん……)
王様達は、当たり前のように地球からの独立を俺に勧めてくれるけれど、本当にそれでいいんだろうか。
(普通なら勧めないけどね、君なら余裕でやってのけそうだよネ)
幸いなことに俺達にはハコ達もいれば、頼りになる大人や仲間がついています。
(うんうん、頼りになる大人ね。ドーンと来い)
やろうと思えばいつでも出来ると言ったら、地球人類は、大人達はどんな顔をするでしょうね。
(エッ、出来るの? ……どんな顔をすれば良いんだろう……)
でも、今の地球人類の進化を何時までもズルズルと待っていたら、俺達が宇宙で活躍する事が出来るようになるのは、いったい何年掛かるか予想も出来ません。
(君達、もう活躍してるじゃんよ……どの口がホザクんだい?)
だからといって、故郷を切り捨てて『ハイ、さようなら』と言う訳にも行かないでしょう。
(うん、分かる分かる……)
俺達が今、把握している地球の外敵からの干渉は、このほとんどを排除しました。
(ホウッ……それは凄いね)
地球人類の内輪の事には、俺は今後も直接手を出す気はありません。
(良いんじゃないの、勝手にやらせておけば)
それがどんなに地球人類からしたら、自分勝手な言い草かという事も分かっています。
(気にしなくて良いんじゃない?)
しかし、たまたま超技術を持ったからと言って1個人に強請るのは可笑しな話だと思いますよね。
(そうだよね~、でも人間の欲望には際限が無いからね~他人の持ってる物は自分も欲しくなるのさ。それがどんなに身分不相応な物で不幸を抱え込むものであってもさ……)
宝くじに当たったようなものでしょうし、ソレの見合った試練や困難にも遭遇してきた自負もあります。
(確かに宝くじみたいな物か……運だよね~)
そんな訳で、地球人類の不当な要求は、これを全て突っぱねる気でいますので、宜しくおねがいします。
(了解)
ただし、自分の身内は別ですのでご安心下さい。
(正直チョッとホッとしたかな、期待しないで待ってるさ♪)
ま~、この先どんな試練が地球人類に降りかかるのかは、俺にも予想できません。
(……エッ?)
ハコ達が居るとはいえこれから俺が相対するのは、神や悪魔が裸足で逃げ出す様な邪神やその眷属とも争う事になるでしょう。
(……何が相手だって?……)
出来得る限りの対策は取ります。
(……うん、期待してる……)
俺だって無駄に死に急ぐ様な真似はしたくないし、嫁を沢山娶って楽しいこともしてみたい……つい本音が漏れました。
(……ん!……フフフ……)
この先、俺の行く先は波乱万丈だと言うことが決定しています。
嫁さん達には、苦労を掛けることが分かりきっています。
でも、どうぞお嬢さんを俺に下さい。
どんな困難な運命も纏めて引っ繰り返してみせましょう。
駄目な時は、皆んなで逃げますので、そん時は宜しくお願いします。
(オゥ、任せろ)
(後始末と撤退準備、逃げ足には自身があるぜ!) ……誰だこれ……




