4-2-20 社長呼んで来い…なに、産休?
間が空いてしまいました、申し訳ない。
2921文字
こんにちは、先程コズミックドラゴンを迎えいれ、絶賛大宴会中のメイズスターです。
この大陸スペース、作るの割と苦労したんですよ。
あの図体(巨大な個体で全長10kmオーバー)のコズミックドラゴンに自由に闊歩されても大丈夫な堅牢性と広大さを確立して、当たり前の様に快適な空間を担保した人工の大地を用意するということがどんなに大変だったか……。
俺は更に、彼らの回復に必要な高濃度のエーテルを吸収する為の施設として、温泉仕立ての巨大なスパと言うよりもこのサイズだと海と言っても良いものを用意してやりました。
お前等、はしゃぎ過ぎてその風呂壊すなよ!
……それ作るの大変だったんだからな……
これで、しばらくは大人しくしているだろう……な~んて考えていた俺が甘かったんだね、悪かったよ。
あの方たちは、思ってた以上に活動的でした。
態々こんなところまで飛んできたんだから当たり前なんだろうな~。
もうね~、住居と疲労回復の目処が立った途端に我先にと仕事をしたがったのですよ。
もう少し大人しくしててよ、頼むから……。
それで結局どうなったかって言うと……面接ですよ! 面接!
急遽、持ち上がったドラゴンのリクルート活動にどう対処して良いものか……家臣にしてくれっていってきてる君達には悪いけど、今は『間に合ってます』としか言えないのよね、俺の判断じゃ。
うちの会社、異星人の社員も居ることは居るんだけど、役員や嘱託って扱いが殆どでとても正社員とはいい難いんだよね。
ちなみに、アーリア系の神さまや女神さまは、パートのアルバイトですので……あの方達気まぐれで良く消えるから正社員に出来ないんだよね。
みんな、別の仕事も有るみたいだし……深くは突っ込まないぞ!
仕方がないので、ここに来て初めて異星生物の正社員が誕生する運びとなったわけですよ。
地球のみんなには、どう説明したものか……。
『あら、割とすんなり受け入れるんじゃないかしら。直ぐに地球に行くわけでもないし影響なんてそんなに出ないわよ』
「母さん、そうは言っても身長10kmもある社員なんて天の川銀河連合でも初めてらしいよ」
『良いじゃない、箔が付いて♪ 社長の私が許可するんだから問題なし。採用の手配は任せたわよ、良いわね』
「……了解、社員登録をすすめるよ」
『それで、彼等に就いてもらう仕事は、主に力仕事になるのかしら?』
「ウ~ン、それなんだけどね……彼等とっても優秀なんだよ。流石に神に一番近い生物って言われてただけあって個の能力は高いんだ……ただし力が強過ぎてまともな成果が残らないってだけでね」
『あらまあ、それは困ったわね』
「それで、彼等のパワーを抑えるリミッター兼監視役の情報端末として、パートナー艦を用意しようと思うんだ。俺から見るとハコになるんだけど、そういう船を今こしらえている所だよ」
『……あんまりやりすぎない様にね。今更言っても遅いかも知れないけど、程々にしておきなさいよ。あんた、やり過ぎるから……』
「うん、分かった。それでさ母さん、体の方は問題ないの? そろそろ予定日でしょ、出産には万全を払ってよね」
『あんたも心配症ね~。大丈夫よ二人目だし、あんたが帰ってくる頃にはお兄ちゃんになってるから、無事に帰ってらっしゃい。それに業務連絡だけじゃなくてもっと豆に連絡しなさいよ、いいわね。それじゃ、又ね』
「了解。それじゃまた……」
[マスター。希美さまの出産予定日は、3日後だったでしょうか。経過は順調で、大変健康な妹様のようですよ]
「俺もお兄ちゃんか~、健太達男組を置いてみんなは帰ったんだよな」
[肯定。赤ちゃんの出産に立ち会うんだとワイワイと……私は、分体で立ち会います]
「父さんが居ればどうせ俺は追い出されるだろうし、よろしく頼むよ」
[肯定。それは間違いないですね。母親と入っても、大きな息子に見られて落ち着いて出産でもないでしょう。全てお任せください]
そして、この後すぐに産気付いた母さんは、予定日を待たずにアッサリと玉のような女の子を産んだ。
俺に年の離れた兄弟、妹が生まれたのだった。
◆
「希美、産んでくれてありがとう。そして、おめでとう」
「ええ、昴は手が掛からない子だったけれど、今度は娘だからお父さんは大変よ。頑張って下さいね」
「分かっているさ。しかし、どの辺から頑張るか……悩むところだな」
「あなた、昴の時にも同じこと言ってたわよ……まっ、何とかなるでしょ。今までもこれからも、それにみんなも居るしね」
[肯定。おめでとうございます、希美様。それに譲様、我々が付いているのです、大船に乗っているとお考え下さい。現在メイズスターでは、姫様の誕生をお祝いするために駆けつけるのだと数頭のドラゴンが騒ぎ出しており、マスターがこちらに顔を出されるのにはもうしばらく掛かる見込みです]
「あらあら、大変そうね♪」
「大船とは大きく出たな、言葉通りなのがちょっと癪にさわるが……家族のことをよろしく頼むよ」
[肯定。無論のことです、マスターは宇宙船も家族だとおっしゃいました。当たり前の事? なのだそうです]
「そこは、ハコさん。何故か疑問形なんだな……」
「昴の言いそうなことね。改めてよろしくね」
◆
地球の軌道エレベーターの管制ステーションでは、ある話題で盛り上がっていた。
此処を作った張本人は今頃どこで何をしているのだろう? という話題である
軌道エレベーターを実働状態にまで漕ぎ着けた中心人物であり、世の中を引っ掻き回して来た人物が、地球圏から忽然と姿を消してからそろそろ1年が経とうとしていた。
以前はどんなに忙しくても、少なくともプレアデス・アカデミーのVR教室の方には顔を出して居たのに、最近はパタリと見掛けていない。
どこに行ってしまったのだろうと話題になったのである。
「ハミルトン教授、何かご存知ですか?」
「あゝ、彼なら急遽卒業資格を貰って遠方に出張しているらしいよ。僕も詳しくは聞いてないんだけどね~」
「遠方って……」
「何でも、1万光年ほど離れた何もない宙域にコロニーを作ってるとかなんだとか……太陽系内で勝手をすると、まだまだ地球の連中は煩いだろうからとか…言ってたな~前回のゼミの時に……ブチブチと」
「スペースコロニーですか? また、夢のような話ですね。どうせなら我々のところにもコロニーを作って欲しいですね」
「君、それは間違った考えだよ。何もかも作ってもらって、全て他人から与えられて良いはずがないんだ。分かるだろう?」
「しっ、失礼しました。そうですよね~。我々が作り上げなければ意味がない……そういう事ですね」
「うん、レールは敷いていってくれたんだ。ここから先は、僕らが頑張らないとね。そうだろう」
「でも、人類が真理に辿り着く頃には、既に彼が銀河を征服しているんじゃありませんかね~」
「あはははっ、有り得そうだがそれはないと思うよ。彼がそんな面倒くさい事に血道を上げるとは思えないからね」
「勿体ないな~出来そうなのに……」
「出来るからってやるとは限らないさ、案外征服者なんてもんは退屈でつまらないかも知れないぞ。さあ、無駄口はこの辺にして観測を続けよう。我々は宇宙の謎に迫ろうじゃないか」
「「「「「ハイ、教授」」」」」
次でこの章も終わりです。




