4-2-09 拠点宙域…迷宮の星3
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迷宮の星とは良く言ったものである。
周囲の空間を歪め、引き伸ばし、押し縮め、反転させる。
勝手に迷い込めば、永遠に出る事は叶わず、相争うことも出来ない。
しかし、主に招かれれば、その距離を千分の一に縮める事がかなう。
そして空間を自在に支配し、広大な距離を一瞬で走破する道を造りだす。
茫然自失、唖然として小さくつぶやく竜の巫女がそこに居た。
「こんなの敵う筈がありません。御神体がどんな化け物でも、無理! 想定外です」
「分かっているではないか、レイナ皇女。トカゲが何匹居ようと到底無理な話なんじゃよ、旦那さまの相手はのう♪」
「っ、……あなた様は?」
「儂か? 儂は阿修羅王が娘、シャシじゃ。見知りおけよ。して、お主は何をしに此処にまいったのじゃ? 竜の巫女レイナ皇女よ……」
「……そ、それは……」
「まあ~、大方の想像はつくがのう……。旦那さまの人となりをみて、籠絡出来るようなら懐柔、出来ないようなら拉致か暗殺、またはお主がターゲットまでの目印というところじゃろうが、残念じゃな~……。何者も旦那さまとハコの目を逃れて此処に近づくことも、ましてや出てゆくことも出来ん。それに、如何にお主が竜を呼ぼうとも竜はこの迷宮を越えられんよ……」
シャシ姫の推理に、膝からくずおれるレイナ皇女……。
イヤイヤイヤ、何でサスペンス?
レイナ皇女が刺客って事? ないわ~……。
「茶番はそのくらいにして、お茶にしようか。みんな、いらっしゃい……」
主要メンバーは我先にとテーブルに座り、その他の勝手知ったるクルー達は、続々と転移してきて昴に来訪の挨拶をしたあと、探索に散ってゆくのだった。
もう完全にウンサンギガに染まりきっている、彼らだった。
一番に飛び込んできたシャシ姫を先頭にDr.や銀河達、何故かエンリル様まで来ていたのにはビックリだ。
一服して、落ち着いた所でゲートの話題から……。
『ニビルの直ぐ横に穴が開いてのぅ、太陽系では一時騒然としたんじゃが……こっちはのんびりじゃのぅ~……』
「アハハハ、すいませんDr.。試しに繋いでみたら出来ちゃいまして、消すくらいならこのままテストした方が良いかなと……」
『直ぐにハコから連絡が入ったからのぅ、大事にはならんかったが……そういう行き当りばったりな所はウンサンギガじゃな~お主も……、やっぱり血なのかのぅ?』
[ウナ~ン(人のことをとやかく言えるのですか? Dr.も随分とやらかしていますヨ)]
[そうよ~! 私が生きてる時なんて……『ヤメイ!』……]
『そこは笑ってスルーする処だろう、2人で突っ込むでないわ! だいたいエンリル、何故お前が此処に付いてきて居るんじゃ?』
[だって私って、太陽系から出たのはニビルがまだ健在の頃に公転軌道の端っこまでよ……良いじゃない、ここなら直ぐ戻れるし……アンだって呼ばれても居ないのにキシャールごと来てるじゃないの……]
『……たまにはこういう刺激もないとみんな仕事にも張り合いが無くなるじゃろうと思ってな……で、そこで項垂れておるドラゴニュートはどうしたんじゃ? 当主どの……』
[[ウナン(あからさまに話をそらしましたね……)]そらしたわね……]
君たち、いきなり賑やかに成り過ぎだよ~。
隣のテーブルでは、他人のふりして銀河達が大人しくお茶をしている。
って、俺達は見世物かい?
何だって? 下手な漫才より面白いって……勝手にしやがれ!
「まあ、彼女がどういった目的で此処に来たのかは聞かないでおいてあげて下さい。どちらにしろ此処では何も出来ません、というよりも思いっ切り羽を伸ばしていって下さるとありがたいと思いますよ」
みんな、小声で何、ヒソヒソと話しシテンノサ……。
『……ぼそっ……御見逸れした。懐にいれて味方にする作戦と見た……ご当主は侮れんのじゃ……』
[ウナナーン(ジゴロです、此処に女殺しが居ますよ。みなさん……)]
[……これは、イチコロね~……帰る頃には、孫が増えそうだわ……]
「……旦那さまは、相変わらずじゃのう……」
「……やっぱりそうなんですの? 私の帰省に付いてくると言った時から怪しいとは思っていましたが……」
「「「「「「「……昴ちゃ~ん!」増えんの?」えっ、また増えるんですか?」…」昴~」キャ」ア~アッ、知らないよ僕は……」
「!?……エッ…エッ…エッ…………ポッ♪……」
「お前ら、勝手に話を創るんじゃない。レイナ姫が戸惑っているだろう…」
もうグダグダである。
『では、その小娘は取り敢えずは放置ということで良いな?』
[[ナウン(異議なし)]…良いんじゃな~い…]
「「「「「「「うん」了解」ええっ」…」ラジャー!」!?」はふー」
「わたくしが連れてきておいて何ですが、いいんですの?」
「まあ、良いじゃろう。実害は皆無じゃしのう……」
「皆さん、お優しいのですわ~♪」
「………」
◆
コズミックドラゴンと追跡艦隊が此処に付くまでには、後10ヶ月ほどかかるだろう。
取り敢えず罠は出来上がったし、このままにしておけば勝手にデカくなる。
此処に来る為のゲートの設置にも成功した。
嗚呼っ、丸々2ヶ月以上も学校にも行ってない、怒られそう……。
ここらで一度、地球に帰るとしよう。
「みんな、俺はそろそろ地球に帰ろうと思うんだけど……」
「あっ、鷺ノ宮校長からこれを預かってきたわよ……」
銀河に渡されたのは、2枚の卒業証書だった。
何ですか? コレ!
「もう地球では教える事が無いから、文部科学大臣の了解を貰って特例で高校と大学の卒業資格の修了証を発行してもらったんだって。通信講座でいいからたまに講師をお願いしたいって言ってたわよ。一応、プレアデスアカデミーの取締役教授扱いに成ってるらしくて、お給料も出るって言ってたわ。実質はメガフロートのレンタル料の一部らしいけど……」
「学校には、ほとんど行ってないけど、もう卒業か~」 …ショボ~ン…
「立場は変わるけど、追い出された訳じゃないんだし、時間の有る時に顔を出せば良いじゃない。ちなみに私達はチャンと卒業しろってさ……勉強は教えてね、天河教授♪」
「「「昴先生~!」天河教授ですのね♪」先生…ィィ…」
「チャ、茶化すなよ、銀河~皆んなも……」
……俺をからかう銀河達とニヤニヤとそれを眺める健太達……
「っ! 何じゃアノ甘い雰囲気は、あれが幼馴染のアドバンテージというものか」
「あの間の取り方は銀河ちゃんならではですわね。流石、乳兄弟!」
オイッそこ、聞こえているぞ。 ……赤面……
「羨ましいですわ~、私にもアンナ事やコンナ事を教えて下さいまし~」
……リリアナが突撃してきた、カオスだ……
なかなか話が先に進まなくて、すいません。




