4-2-04 行動開始…良いのかそれで?
すいません、しばらく不定期になると思います。
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俺とハコは、一時主星の再建をドクターアンとセバスチャンに任せ、オリオン腕から銀河中央方面に向けて移動していた。
今回は、ハコの全長100kmを誇る拠点用大型移動要塞艦を使用し、その巨体からは考えられないスピードで亜空間を高速移動していたのだった。
「ねえ、なんで量子転移航法を使わないのさ? アッという間に予定ポイントに着けるんじゃないの」
[肯定。たしかに新航法クオンタムジャンプドライブを使用すれば時間の短縮にはなりますがそれに比例して膨大なエネルギーを消費することになります。現段階ではまだまだ時間的な猶予も存在しますので通常の亜空間航行でとばしております。3・4日無駄にしたところで誤差の範囲ですよ。それに節約して浮きました余剰エネルギーは、更なる固有空間の拡張とファクトリーへの供給に振り向けております。そして実は別に大きな理由もございます。これまでのコズミックドラゴンの反応を詳しく分析してみたところ、フルシンクロ状態の我々に過敏な反応を示している様子が伺えます。ですので作戦実行までお楽しみは取っておこうかと……]
「ふーん、どんな感覚器官をしてるんだろうね、研究したいけど無理だろうな~。それにしても君はいったいどれだけ固有空間を広げる気でいるのさ、もうかなりの空間を確保したと思ってたんだけど」
[肯定。今まで確保した固有空間でしたら、すでに太陽系がすっぽり入る程には広げることが出来ました。理想は小ぶりな銀河ぐらいでしょうか……]
「……君さ、そんなに広げてどんな意味があるのかな? まあ、彼処では俺達に取っての距離や質量は勿論、物理法則さえ意味を成さないって事がもう証明されてるけどさ……面倒くさいじゃん」
[肯定。私の内部固有空間では我々が全能の神であり悪魔ともなりえます。今回の作戦では、マスターを餌に私の固有空間に引きずり込んで死なない程度に袋叩きにしようと言うのが大筋での目的です。一網打尽にしてコズミックドラゴンを戦意喪失にまで追い込んで家畜として牧場でも始めようかと……ドクターからの情報によるとアンドロメダ銀河の竜種はとても美味しかったとお聞きしましたので……]
「……それは上から待ったがかかると思うよ。下手にイジメるとドラゴニア帝国と戦争に成るからね、それに種族が違うんじゃないかな~」
[否定。帝国などこちらの威容を見せつけて理解させれば、客寄せパンダのように自ずからドラゴンを差し出して来るものと考えられます。いえ、きっとそうなるでしょう]
「ハコが妄想するのは勝手だけど、国の威信ってものも有るだろうし話を聞くとプライドもそうとう高そうだし……ほどほどにね」
[肯定。では、ほどほどに見せつけてやりましょう、ホォ~ホホホホ]
「こんなんでほんとに大丈夫かな~」
[肯定。マスターは大船に乗った気持ちでいてください。その内そんな事言っていられないほどこき使いますからね]
「嗚呼~、ハイハイ……」
◆
「ハコは随分と鼻息を荒く出て行きよったが、ほんとに大丈夫かの~。下手に突付くと大ヤケドでは済まん気がするんじゃが……」
[昴様が付いております。たぶん大丈夫でございましょう。それにしてもシャシ様は一緒に付いていかなくて良かったのですか?]
「な~に、実際に作戦が実行されるのはずっと先じゃ、まだ慌てずともよかろう? 妾は肝心な時に一緒に居れればいいのじゃよ」
『おお、お主は余裕じゃな♪ まあ、普通は逆なんじゃがのう……船が勝手してマスターがストッパーていうのは儂も聞いたことがないのう……』
[ナ~ゴナゴナゴナ~(ドクターは、私が止めないと勝手に突っ走りますからね~)]
『……それでニビルの方はどこまで修復が進んで居るのか聞かせてもらえるんじゃろう? 一応、任された身としては詳しく知っておく事も必要じゃからの~……』
[ナ~ゴ、ナゴォ~(話をそらしましたね、まあいいんですけど~……)]
[そうですね、詳しくご説明いたしましょう。皆さん、ケレスの中央管制室へ移動いたしましょう]
そう、ここは無限工場衛星ケレス。
2年前、一度はハコと同化して取り込まれた同衛星だが、昴の創造チートにより上位互換の機能を備えたハコ本体から分離され、元あったアステロイドベルトに戻っていた。
今回、主星ニビルの修復を行う前線基地としてその能力をフルに運用することに成る。
かつて隠していた全容も、現在ではある程度の主要人物が訪れるまでには開放されていた。
それでも身内確定の者に限られるのは、仕方のない所ではある。
『しかし、お主も流暢に喋るようになったもんじゃのう……。儂が居た頃は丸っきり機械をしておったのに……』
[ほほほ、私も随分と勉強させて頂きました。昴様に御仕えするようになって正式に名前など頂いて、カルチャーショックを受けたのが良い刺激になったのでございましょう。以前は個としての認識も曖昧でございましたので……]
『ほほう、その辺を詳しく……』
[ナウナナン、ナ~ン(また脱線しておりますよ、ドクター)]
『むっ、ゴホン。それで今の進捗状況はどれくらいなんじゃ? 猶予はあと1年と聞いておるが……』
[はい、砕け散ったニビルをアステロイドベルトから再建するのが我々のミッションですが、随分と細かくなっておりますので大変でございます。ですがすでに全てのアステロイドにグラビティープローブの設置は済んでおります。適時、寄せ集めたアステロイドを材料に現在はシン・ニビルの核を製作中でございます]
「お主が核になれば早かろうに、何故そうせなんだのじゃ?」
[昴様は、シン・ニビルを移動惑星にするご予定のようです。キシャール様やエルフの大型脱出船に刺激されたようでございますね。それに短期間で岩石の塊を有人惑星に育てるより、惑星規模の宇宙船としたほうが手間がかからないと仰っておりましたよ。惑星規模の移動要塞のようなものですから、外部の煩い連中への示威行為にも持って来いでしょう]
『ふむ、それで儂に白羽の矢が立った訳じゃな』
[そういう事です。キシャール様と築き上げたノウハウを更に規模を大きくして、今度はシン・ニビルの再建という形で昇華させましょうという目論見ですな。勿論、ドクター専用のテリトリーも区割りされておりますのでご心配なく。どうですかな?]
『其処は、儂の好きにして良いということじゃな? 良かろう、ドンと任せるがいい』
「楽しそうじゃのう~、当然妾も混ぜてくれるんじゃろうのう」
「「姫さま、我儘言わないでください」」
「その方達も専用のドックが欲しかろう?」
「「専用ドック!」欲しい!」
「妾が主様に頼んでやるのじゃ、期待しておれよ」
『あんな事を言っておるが良いのか?』
[大丈夫でしょう、多分……、Maybe……。では、話を先に進めるとしましょう。現在、ケレス内でシン・ニビルの核になる7つの各パーツは建造が完了いたしました。シンクロ用の中枢センターを囲む6つの大型次元転換炉を正六面体に組み上げシン・ニビルの核といたします。皆様にはこの後、順次吸い寄せられてくるアステロイドを資材として惑星船を形作って頂きます。基本設計は昴様が済ませておりますのでバランスが崩れない範囲で隙間を埋めて頂きたいそうでございます]
『フフフ、それは豪気な話じゃな……。どれ、まずは設計図を見ながら割り振りを決めるとしようかのう、みんな、それで良いな?』
[「「「ハ~イ!」」」ナウン]
[皆さん程々に~と言っても、聞く耳は無いみたいですね~。セバスさん、私は知りませんからね]
[まあ、何とかなるでしょう。ラーフさんもお手伝いをお願いいたしますよ]
[仕方がありません、これも姫さまの宇宙船のさだめ、諦めるとしましょう]
[ホッホッホッホッホッ]




