4-2-03 銀河は大騒ぎ…そんなの知らんがな
本日、2話更新しました。
前話もよろしくおねがいします。
2275文字
現在の銀河の状況を説明するとしよう。
俺がハコと完全なるシンクロを果たした頃、銀河中心領域に生息する生物であるコズミックドラゴンが、原因不明の暴走を始めた。
銀河中心領域を太古から守り、コズミックドラゴンを神と崇めてきたドラゴニア帝国のドラゴニュート達は、銀河中心領域から飛び出して辺境に飛び去ったコズミックドラゴンの群れを慌てて追いかけることになったのだった。
ところがここで問題になったのが彼らの宇宙船。
もともとドラゴニュートは頑健な種族で長寿だったことから、恒星間国家とは名ばかりの旧式な移動手段しか持ち合わせていなかったらしい。
滅多に外遊などせず、もっぱら周りの星系国家の方が敬意を払い訪ねてくる事から、いざ自分たちで動こうとしたらまともな宇宙船が無い始末。
最初、星系外の商人から貨物船を調達したりしたらしいが、足の早い軍艦などはどう調達したら良いのか分からず、どうしようもない状況から懇意にする各星系国家の王族にSOSが届いたというわけである。
追跡していた先遣隊の話によると、飛び出したコズミックドラゴン達は最初の3日ほど、色々な方向に行ったり来たりとそれこそ狂ったように行き先を変え彷徨っていたらしいが、その後ある方向に向けて真っ直ぐに飛び始めたらしい。
その様子から何らかの理由で狂乱した群れのボスに引きずられて銀河中心領域を飛び出したことは分かったが、その原因までは推測も予想も立たなかった。
ドラゴニュートの中に存在するコズミックドラゴンとの意思疎通を可能とする巫女が、群れの中でも話のわかる温厚な個体に語りかけると、其処には食欲を満たすために飛び出したボスを止めるために群れが追いかけている事までは分かったらしい。
この時点でおよそ1年、星間国家や周辺の各王族から手段と知恵を借り、暴走したコズミックドラゴンをなんとか銀河中心領域に戻そうと奔走したところ、船団ごと移動できるロータスとピオニーの出番となったという訳である。
コズミックドラゴンも四六時中飛び続けて要られるわけではなく、最寄りの恒星やガスジャイアントで休憩しながら飛んでいる。
迷惑なのは、数百頭の巨大な宇宙生物に接近された有人惑星やその施設であり、下手に手を出すと手痛い報復を受けることだった。
さらにコズミックドラゴンを安易に傷つけようとすると群れの後を付いてくる船団と交戦状態に発展するのだった。
銀河の災厄、コズミックドラゴンの暴走に端を発した一連のトラブルは、現在銀河中心領域から真っ直ぐ太陽系に向けて移動してきており、なんとこれはハコによる情報解析によって『俺』が原因とわかってきた。
地球までの到達期間はあと2年ほど有るが、2年なんて待っていられる訳もなく早急に解決しなければならない。
そして、俺は……。
[では今回、マスターはトカゲの餌ですので覚悟だけはして置いてください]
「覚悟って何の覚悟だよ? 嫌だからな、爬虫類に美味しく食われるなんて言うのは……」
[大丈夫です。コズミックドラゴンは深宇宙の高等生物で爬虫類ではありません。高位の人種族以外で一番神に近い生物と云われております。成獣で大きな物は全長10kmほどと聞いております]
「君さ~、さっきトカゲって言ったじゃないか……そんなのが真っ直ぐ俺を目掛けて光速を超えて突っ込んでくるわけね。ハコは大丈夫って云うけどその根拠は?」
[前線に出ているピオニーとロータスから逐一情報を送って貰っております。我々は余裕を持って別銀河または被害の出にくい銀河腕の間の宙域に獲物を誘き出して罠にはめてやれば良いのです]
「そんな簡単にいくかな?」
[餌が特別ですから間違いなくハマるでしょう。あとはペットにするなり剥製にするなりマスターの思うがままです]
「いや、下手なことすると銀河大戦争に成るから……其処んところ忘れないように」
[チッ、面倒ですね……ドラドリアだかドラゴリラだか知りませんが喧嘩売ってくる気なら買ってあげましょう。マスター良いですよね?]
シュッ、シュッシュッ!
「な、なんかハコがヤル気満々なんだけど……これ、どうなってんだ? アルキオネ」
[ハァー、今回は仕方がありませんよ。マスターを先に見つけて育てたのは私なのに、今頃のこのこやってきて掻っ攫おうなんて、お灸が必要です!……と、トカゲに対するライバル心に火がついたものと思われます]
「俺を掻っ攫うってどういう事さ……そこんところ詳しく……」
[……仕方がありませんね、ご説明しましょう。今回のコズミックドラゴンの狂乱の理由がマスターであり、その思考されている欲求が食欲だと分かった時点で、ドラゴニア帝国がマスターを供物に提供しろと言ってきました。当然こちらとしては突っぱねましたけれどね]
[お母様を補足致しますと、この要求が発せられた時点でラクシュ王女様が切れられまして、デーヴァ王国と阿修羅王国を筆頭に天の川銀河連合はマスター側に付くけど、『ヤル気なら掛かってこいや~!』とドラゴニア帝国の外交担当を吊し上げて喧嘩を売ったらしいです……現在は謹慎中です。船団はヴィシュヌ女王とアプサラス王妃が仕切っておられますが、ドラゴニア帝国の先遣隊は事実上軟禁状態のようです]
「ラクシュ~……。それで俺達はどうするのさ?」
[神に近いなどと祭り上げられていますがたかがトカゲです、マスターとの格の違いと言うものを分からせてやろうかと……フフフ……]
「そういう認識なのね……あんまり生き物をイジメないように……」
[フフフ……誰に牙を剥いたのか骨身に刻んであげましょう]
「駄目だこりゃ……」




