4-2-02 ドラゴン追跡艦隊…ここにも居た馬鹿
更新を飛ばしていまいました、申し訳ありません
お詫びに本日、2話更新します。
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豪奢な会議室。
ここは、ロータスⅠ世内の王宮の外交用の会議室である。
上座には若いが偉っそうなドラゴニュートが座り、向かってその右側には貫禄のあるドラゴニュートの一団15名ほどが陣取り、そして左側にはヴィシュヌ女王、カーリー艦長、アプサラス王妃、ダーナ艦長 (アプサラスの筆頭護衛メイド) を始めドラゴニア帝国周辺の王族代表が25名ほどが相対して話し合いの席を設けていた。
部屋の隅には、ラクシュ王女やその他護衛や事務官がここでの会合の内容に耳をそばだてていた。
この見るからに若いが偉っそうなドラゴニュートは、ドラゴニア帝国第三皇子シャイン。
このコズミックドラゴンの群れの監視追跡艦隊の司令官だ。
この場での主導権を持っているようで、ヴィシュヌ女王達を詰問するような調子で話をしているようである。
「聞くところによると、我らの向かっているのはオリオン腕の辺境に位置する星系だというではないか、それも其処に存在するたった一人の人物を目標にしていると云うのは真の話であるか? にわかには信じられん話ではないか……」
この質問にはヴィシュヌ女王が代表して答えるようである。
「シャイン皇子、謎に包まれた最初期の御神体の迷走に始まり、この群れは2年間に渡って真っ直ぐに銀河外縁部に向けて移動しております。現在目指している方向には、我が娘の嫁ぎ先がございますので急ぎ情報収集を依頼いたしました。そしてこれまでの情報を精査した所、当初意味が分からずに居りました迷走の理由にもなるかと存じます」
「ホウ…、詳しく説明致せ……」
カーリー艦長が説明を引き継いだ。
「では、ご説明いたします。丁度2年前に端を発した御神体の大移動ですが、時を同じくしてオリオン腕の辺境に位置するソル恒星系第三惑星に生き残っておりましたウンサンギガ一族の現当主が種族的な進化を致しました。お聞き及びかと思いますが、先の天の川銀河連合内のクーデターを事なきにおさめ、直後の射手座銀河からの救援要請を個人で引き受け、大移住船団を組織し成功に治めております。この人物、ウンサンギガ一族第49代当主”天河 昴”が高位種族へと進化した事が原因ではないかと推測されます」
「???なぜだ、高が辺境の猿が一匹進化したからと言って、それがなぜ御神体の狂乱に繋がると云うのだ……、百歩譲ってそれが原因であると言うならば、贄として御神体に捧げれば良いではないか」
この言い草に切れた人物が一人……いつの間にかオーラを立ち上らせたラクシュ王女がシャイン皇子の背後に立って拳を振り上げているではありませんか。
直ぐさまヴィシュヌ女王が振り下ろされる拳を止めに入り、親子での格闘が始まりました。
守られたはずのシャイン皇子は、止めに入ったヴィシュヌ女王に椅子ごとケリ飛ばされ壁に激突してひっくり返っています。
………チッ、流石にドラゴニュート、頑丈ですね………
ヴィシュヌ女王が隠れて舌打ちをしていますがその間も親子の攻防は続いています。
「な、なにをするか? 無礼であろう」
「無礼? 無礼はどっちですか? 人の旦那様を高が辺境の猿ですって、言うに事欠いてトカゲの餌にしろとはなんですか……訂正しなさい!」
ガシガシッ、バシバシッ
涼しい顔でラクシュ王女の攻撃を捌きながらヴィシュヌ女王が呟きました。
「シャイン皇子、その様な軽はずみな発言はおやめください。下手をするとドラゴニア帝国其の物がこの世から消滅する事になりますよ」
「何だと、我を脅すのか……」
「イイエ、事実ですよ。かの人物にはそれだけの地力も実行力も有ると申し上げているのです。たぶん昴殿のその力を敏感に感じ取った御神体が接触を図るために向かっているのでは無いかと思われます」
「そんな事が信じられる訳がなかろう、ありえん!」
「師匠、このバカをどうにかしてください。こっちのバカ娘は私が抑えますので……」
「ハァ~、仕方がないのう。シャイン皇子よ、自分の物差しで物を測ってはならぬと何度言えば良いのだ。この宇宙にはどんな信じられない事も起こりうるのだといつも言っているではないか。己のその軽挙妄動で祖国が滅んだらなんとする?」
ヴィシュヌ女王から指名されたのは、仙人のような貫禄のある老齢のドラゴニュートでした。
その名を拳聖ブラドンと言い、シャイン皇子のお目付け役です。
今回、この監視追跡船団に集っている有志は、そのほとんどが拳聖ブラドンの弟子や友人たちです。
如何にシャイン皇子がドラゴニア帝国の第三皇子でもこれだけのお歴々を集められるわけもありません。
ましてや一国の女王であるヴィシュヌ女王を顎で使う様な事は、事実上無理です。
「お言葉ですが老師、我にはこの様な夢の様な話、納得することも信じる事も出来ません」
「これは教育を間違えたかのう……、お主の今いるこの宇宙船は誰が作ったか聞いて居るはずじゃが……」
「……たしか、今は滅んだ一族でウンサン、ギ、ガ……エッ、エエエ~」
「やっと気がついたか、この戯け者が……。かつて天帝の逆鱗に触れ滅んだと噂されていた一族が前にもまして力をつけて復活したという話はまだ耳に新しいわい。先程、カーリー艦長の説明にもあったはずなんじゃがな~……。それにしてもたった一人の種族進化が引き起こした現象としては、信じられないのも頷けるが……その御仁とは是非会ってみたいのう♪」
「フフフ、婿殿ならそのうち顔を出すのではありませんか。自分が原因だと知れば、直ぐにでも跳んでくるでしょう……文字通り、銀河を跳び回る御仁ですから」
「跳び回る?……そうか、そういう事か……これは一筋縄ではいかん筈だ。お主もエライ人物を婿に迎えるのう、ワハハハハ」
「老師、何の話をなさっているのですか?」
「お前はもう少し話の裏を読み分析する事を覚えねばならんな~。帰ったら教育のし直しじゃ……」
「そんな~……」




