4-1-08 新たな対立の構図
間に合わなかった^^;
3105文字 → 4150文字 加筆しました!
テラ同盟は、日本を筆頭にアメリカ・カナダ、イギリス・オーストラリアの他、イタリアを始めとするEU各国とソビエト連邦を主要メンバーとする地球人類の最大組織である。
そして、当然のようにそこには反対組織が存在する。
まず、中東からインドまでのイスラム・ヒンズー教国が主体のラーマヤナ同盟。
天の川銀河連合の代表種族が宗教上崇拝する神々であることを確認した彼らは、これに直接交渉を望んでいるが、今の所は意中の種族から相手にされていない……その事をテラ同盟の妨害だと逆恨みしている節がある様だが……ガネーシャ種族のバクーンがマスコットとして使われているのはご愛嬌……。
そして、中共が主体の親人類同盟。
ウンサンギガの特徴を持つ大陸人の集まりだが、遺伝子上まったく別の種族であることが証明されている……のを信用せずに、我らこそがウンサンギガの継承者種族であると主張するはた迷惑な奴ら。
アフリカの黒人主体のアフリカ連合。
人類のアフリカ起源説を看板に、最初の人類はアフリカで誕生したのだから人類の代表足り得るのは我々だと主張している団体。
その他、南米とミクロネシア小国、ニュージーランドなどは、日本を支持してテラ同盟準備国となっている。
テラ連盟は、人種や宗教などにはあまり拘らない日本的な思想の集合体で有るが、思想や宗教・人種などによる選民思想の強い団体と袂を分かつ事となった訳である。
◆
「地球を逃げ出すっていう最初の計画は無くなったんだけど、結局人類同士で揉める事になるんだね?」
[肯定。それは仕方のない事でしょう。もう少しお互いの距離が離れていれば、逆に仲良くすることで利益を得ることも出来て妥協出来ますが、我らウンサンギガの存在がそれを許しません。目と鼻の先に餌をぶら下げられた様な物ですからね~、この誘惑に勝てる野蛮人は少ないでしょう……アラッ、失礼しました。とにかく人類は、まず己の身の程を知ることから学び直さないと駄目だと思いますよ。もしくは一度完全に封じ込めるなりして躾けなければ、周りが迷惑です]
「随分と過激な意見だね? 国同士が行き来出来ないようにしてしまう事は可能だけど、そんな事をしたら中世以前に文明が退化するんじゃないかな……」
[肯定。其れぐらいの時代から教育し直さないと、この先も同じ問題で頭を悩ますことに成ると思いますよ。マスターが責任を感じる必要は無いと思いますが……]
「やっぱりこの間のはやり過ぎたかな~? でも日本の隣でドンパチ始められるのも迷惑だしね~……何にしても穏便には事が収まらないのは毎度の事か……」
[肯定。マドロッコシイ事ですね……、全てマスターが征服してしまえばいいのではありませんか? 私が効率を考えた場合にそれが一番の近道だと思いますよ]
「ハコのその意見も、結果も分かっては居るんだけどさ~、俺は第二のマルドゥークには成りたくない訳よ、他人にそう呼ばれるのも勘弁してほしいんだ……絶対にね……」
[肯定。マスターがマルドゥーク呼ばわりされるのは私も我慢が出来ません。分かりました! 各国首脳の個人的な弱みを握って脅しましょう、全宇宙に公表するぞ……と……ハズカシイ~!!!]
「それも地球人類の恥を晒すようでどうかと思うんだけど……」
[否定。すでに我々は独立した一種族として天の川銀河連合から認められたのです。地球人類とは別の種族と言い張りましょう! これは、決定事項です]
「まあいいけどね。そうすると極力地球にはタッチしない様に我慢するっていう事で、そうだね……マイア、日本の村はあのまま維持してるの?」
[ハイ、マスターの故郷ですから♪]
「村の環境維持の序でに、例の国のAIシステムの管制も頼めるかな? 想定外の事が起きた時だけで良いんだけどね、日本人レベルで生かさず殺さず国民皆んな中産階級ってな感じで……ただし『働かざる者食うべからず』は徹底してね。絶対にズルして怠ける奴が出てくるはずだから、最悪国外追放という事で……」
[了解しました。安定した良い暮らしを餌に死なない程度にコキ使えばいいんですね]
「まあ、ほどほどにね。搾取される訳では無いから皆んなで働けばそれだけ豊かになるはずなんだ、時間は掛かるだろうけれどね〜」
[ここまでお膳立てして貰って駄目だった時は、仕方がありません。我々は撤退するしか無いでしょう。もう手の施しようがありませんよ、それにチョッと見てみたいと思いませんか? 神に見放された人々の顔という物を……]
◆
各国の代表が集うテラ同盟の会議室で、相談役を務めるのは管制AIエウドーラ、ヒュアデスのサポートAIだった5人の内の一人である。
現在は立派に成長し、準AIではなく単独でここ軌道エレベーターでの采配を奮っていた。
「エウドーラ殿にお聞きしたい。ウンサンギガ帝国は地球に不干渉宣言したはずだが植民地を欲するのだろうか? 我々には理解できない部分が多いのだがご説明頂けないだろうか?」
今、質問をしたのはソビエト連邦代表のようだ。
他の国家代表も興味津々といったところだろうか。
[ご質問にお答えする前に、貴国の問題とされている彼の国の現状をもう一度説明いたしましょう。各国でも把握しているものとは思いますが彼の国は政治的指導層や富裕層が国家から逃げ出し無政府状態が1ヶ月以上経過しました。この事態に解決の見えない軍部の一部が軍事政権の樹立を目論みましたが、不安定な軍事政権の樹立を許したらターゲットにされるのは何処になるのか火を見るよりも明らかです。そこで国民が搾取されない国家システムと言える物を押し付けた訳です。あのシステムは国家としての体裁を整えてはくれますが国民は有無を言わさず働かされる事になります。システムは国民に奉仕しますが対して必要な労働を要求します。『働かざるもの食うべからず』を実践することになりますのでその全てが国民に還元されます。国民がシステムの要求に応じて労働すれば国は豊かになるでしょう。しかし、そのまた逆も形となるでしょう……要求された最低限の労働に答えなかった場合、国家は疲弊してゆくことになります。今まで耳に心地良かった政治家の言葉は、厳しい現実に置き換えられ隠されてきた現状や負わなければならない罪科も詳らかとなるでしょう。これから先、発展するか愚か者のまま国を滅ぼすかは彼の国の国民が決めてゆくのです]
「そのシステムは、国民を写す鏡となるわけですね?」
[そういう捉え方で間違えありません。ただし私からはおすすめはしません。ここに居る方々は全員職を失うことになるでしょうから♪]
アメリカ代表がつぶやいた。
「オウッ! それはノーサンキューだね。良くも悪くもフロンティアスピリットをなくしたら終わりだよ」
[独立心を持ち、管理される立場に我慢の出来ない者たちは必ず現れるでしょう。しかし、開示される正しい情報を元に私欲のない適切な政治を行える者がどれだけ出てくるか楽しみですね]
「そんな聖人君子が現れたら、うちに養子に欲しいところだね♪」
[表面上は優しく見えても、それぐらい厳しいシステムだということです。以上の説明でお分かり頂けたと思いますが、ウンサンギガは砂のひと粒さえも搾取は行っていません。したがって植民地などという謂れなき名称は控えて頂きたいとお伝えいたします]
「良く分かりました。先の発言は撤回いたします。申し訳ない」
「しかし、ミラーシステムということは全ての行ないが我が身に跳ね返るということだ。余程心身を律して行動しなければ地獄の苦しみとなるのでは無いだろうか? 私はゴメンだね……」
フランス代表の言葉に、その場に居た全員が頷くのだった。
◆
「エレクトラさんや……昴が使ったシステムって何がモデルになってるの? ま~訊いてる内容だと心当たりが無い訳じゃないんだけどさ……」
[はい、譲さまがお考えの物で間違っていないと思いますよ。あれは、宇宙船の艦内スタッフ管理システムを大規模に汎用化したものです。宇宙船は、一つの王国の様な物ですからね。国を一つの宇宙船として置き換えた物を元に綱紀にある程度余裕を持たせたシステムとなっている様ですね。実際の宇宙船の中でストライキや造反行為、違法行為等が有った場合、即時艦内裁判の後に過激なところだと船から宇宙空間に放り出されます]
「怖いね~……」
[異分子に吸わせる空気は、1ccも無いと言った船乗りの掟の様なものでしょうか。軍艦だった場合は、取り敢えず凍結処理されて寄港地で再度軍法会議ですし、商船だったとしても独房カプセルに閉じ込めて催眠ガスで眠らせておいて、契約不履行で寄港地で放り出されますね。この場合、もう二度と宇宙船には乗れません]
「やっぱりあれの応用か~、内容を訊いた時にどっかで見たことが有るな~と引っかかってたんだよ。でも、あれが元になってると成ると随分と優しい対応だよね」
[それは仕方がないでしょう。現実が分かっていない者にどれだけ説明したところで反発されるだけですよ。ま~中身は変わっていませんから、ジワジワと自分で自分の首を締めてもらいましょう。現実の情報は必要なだけ公開されますので、自分で調べて自分達で解決してもらう様に矯正しますよ]
「『こんな情報は嘘だ、信じられない!』と言われたらどうするんだい?」
[そんなのは簡単です。『信じられないなら此処から出ていきなさい』と云うだけですね。現実を直視出来ない反抗的な国民など何処の国でもいらないでしょう。国無しのホームレスになるだけの話ですよ。ただし、退去勧告に反して居座って出てゆかない場合は不法入国者として強制労働を課せられると思います。確かあそこを管理してるAIは、ヒュアデスの所のアムブロシアでしたね、ルールを破ったときの容赦の無さには定評があります。問答無用で国外追放にされますよ♪ あの娘の名前は、不老不死の食べ物ですが其れは猛毒でも有るんです。其れを食べるということは永遠の時の牢獄に繋がれる覚悟が必要になるのですから……]
「僕達にしたらもう当たり前の内容なんだけど、一般人には辛いだろうね~」
[永遠の時を生きると言うことは、優しい事よりも辛い事の方が多いと思いますよ。機械のAIでさえ変質するぐらいですから……]




