4-1-06 ある軍人の日記より
1973文字 前話のおまけです。
世暦2003年 某月 某日
俺は○国の軍人だ。
徴兵で軍人に成った俺だが、成績優秀ということで陸軍士官学校へと無事に進んだ。
優秀な成績で卒業を果たし、これでも一応、軍では高級将校をしている。
最近、へんな指令が来ることがある。
前々から有ったことだが、日本国へ少数の特殊部隊の派遣が増えている。
ところが最近はこれが、非常に良い効果を軍に発揮しているのだ。
軍でも手のつけられない鼻つまみ者が、日本から帰ってくると品行方正な真人間に成って帰ってくるように成ったのである。
どうも上の人間は、違った結果を望んでいた様だが、現場の人間に言わせると日本で行われているらしい特殊作戦というのを本国でも取り入れたいくらいである。
教官として呼べないものだろうか……。
世暦2005年 某月 某日
太平洋に巨大な塔が建ち、宇宙にまで手が届く時代が来た。
俺は陸軍だからほとんど関知しては居なかったが、昨年海軍がやらかした日本のメガフロート襲撃事件は、我軍の汚点とも言える。
腐った政治家に踊らされて、なんて馬鹿な事をしでかしたのだろう。
俺に奴らを止めるだけの発言力があればと、今更ながら悔やまれる思いだ。
それにしても日本の子供は、どんな教育をすればあんな天才に育つのか……。
うちの倅は今年10歳だが、その不出来が泣けてくる。
そのくせ小ズルく知恵が回るから手に負えない。
こないだは、親が陸軍の高級将校なのを傘に来て学校で虐めを主導していやがった。
母親は、大学に入れて徴兵を免除させる気のようだが、もう上の学校には入れずに一兵卒から鍛え直してやる、見ていろよ!
世暦2008年 某月 某日
前々から我が国の政治家は腐っていると思っていたが、ここに極まれりといったところだろうか。
とうとう、国を捨てて国外に逃げ出しやがった、それも団体で……。
全員、国家反逆罪で全世界に手配書を回してやった。
いい気味だ、バカヤロ~!
民主国家として政治家を育てるのは国民の役目であるはずなのに、国民も一緒に腐ってやがる。
国家元首は首がすげ変わった途端に一族郎党逮捕されて、絞首台に一直線だ。
利権のために政治家をやってる奴のなんと多いことか……真面目に政治家をやっていて最後に破滅が待ってるなんてどうやっても救われない。
いつからこんな国に成ってしまったんだろう……。
政府不在で国際社会を渡ってゆくことは不可能だろう。
今までも、何度か軍事クーデターの事は考えた事がある。
だが、軍が国を乗っ取ったところで、後の悲惨は世界中に数え上げたら切りがない。
軍人は飽く迄も軍人だ、政治家に成るような奴腹黒い奴らも、居ないことも無かったが先の政治家連中と一緒に逃げやがった。
今いる軍人は、何としても家族や国民を守ろうと志の有る奴らか、何処にも行き場のない奴らだ。
今から国を任せられる政治家が育つまで待っていることは出来ない。
幸いな事に今の世界は、他国を侵略してなど居られない状況だ。
何とか今のうちに国の体裁を整えなければならない。
こうなったら今まで計画を断念していた、軍事クーデターを成功させるしか方法は無いだろうとの結論に達したのだった。
XDayは、8月1日……覚悟はいいか?
世暦2008年 8月 1日
今日はXDayの当日、快晴!
ところが今日は、朝一番に我が国の軍事施設が全て何者かに占拠されたのだ。
見事な無血占拠だった、お手本にしたいくらいだ。
そして、この手引をしたのが数年前に日本に派遣されていた者達だった。
人が変わったように優秀で正義の軍人に成った彼らはその後、どんどん出世して重要なポストに就いていったのだ。
街がまだ寝静まっている頃、空を覆い尽くした見知らぬ飛行物体は、次々と重要な施設を占拠し、母艦と思われる高さ500mほどのビル……そう、縦に長いので高層ビルがそのまま空を飛んでいるようだった。
その母艦は、政治家や官僚が居なくなった国会議事堂の真正面の広場に静かに降り立ったのだった。
俺は手引をした彼らから、今回の事の経緯を聞くにしたがって、人とはここまで高潔になれるということを知ったのだった。
かの皇帝が、我が国の国民に向けたメッセージにおそらく嘘は無いだろう。
既に基地の入口に数基配置されたボックスユニットには、仕事を放り出して長蛇の列が出来ている。(今日はどうせ仕事には成らないだろうし、何か起こった場合は対処してくれるらしい)
そんな様子を眺めていたら、並んでる列で乱闘が始まった……まったく仕方のない連中だ、血の気が多いのにも困った物だと自ら止めに動こうとした……だが……。
途端に、ボックスユニットの天井から何かが飛び出して、鎮圧に向かったのには驚いた。
あれなら大概のことには直ぐに対処できそうだ。
せいぜい我々軍人が、この後お払い箱に成らないように努力をしなければと心に決めた一日だった。
この国の行く末が、楽しみでならない♪




