4-1-02 挙式…そして独立
3138文字 嫁の数修正!
世歴2008年6月吉日
冥王星軌道から開始した俺たちの太陽系惑星巡りは、結婚披露宴そっちのけで大好評だった。
ま〜良いんだけどね。
俺は客あしらいしなくて良いし、何てったって楽ができる。
ここんところ忙しく飛び回っていたから、嫁さん達とのコミュニケーションも疎かになっていて、昨夜は臍を曲げた彼女達に散々と玩具にされた。
結果、今朝は絞りカス状態にされて、今も気を張っていないと寝落ちしそうだ。
それに引き換え彼女達は、お肌もツヤツヤで元気イッパイだ。
まったく、限度という物を知らんのか? アイツらは。
今日が大事な日だって事は、全員が知ってる筈だろうに……。
「お疲れの様だね〜。イヤ〜人気者は辛い!」
「お義父さん、そんな事言ってないで止めてくださいよ。あんたの娘でしょう?」
「うちは女性上位でね、何をするにも私の意見が通った事は一度も無いのさ! 諦めてくれたまえ、若旦那………ところで昨夜はお楽しみだった様で♪ 8Pってよく体が持つな、あれ〜9Pだったかな〜? ジェニーさんはどうしたのかね? 兎に角若いって良いよね〜」
「ジェニーは式が終わった途端に飛び出して行きましたよ。ハァ〜 何にしても、限度と言う物があるんですけどね」
「君がそれを言うのかい? 私はもう何が起きても君が何とかするから丸投げする気でいるんだけどね〜。兎に角、銀河の事はよろしく頼むよ。みんな仲良くね♪」
「分かりました。幸せに出来る保証は有りませんが、一生背負っていく覚悟はしましたのでみんな纏めて俺の船に乗ってもらいますよ」
「君との苦労を選んだのはあの娘達だ。後悔は無いだろうさ♪ ついでに私たちも乗せてもらうがね……」
「ど〜ぞど〜ぞ。日本の保護は受けられなくなりましたが、銀河で一番安全だろう保護をお約束しますよ。それじゃ、もう一仕事して来ますかね……」
「頑張って来てくれたまえ、ウンサンギガ帝国・初代皇帝殿♪」
「うっ! それ面と向かって言われると恥ずかしいですね……」
◆
思い起こせばこの3年間、色々な事が有った。
国家間の戦争は下火になったけど、小規模なテロは無くならなかった。
その最たる物が民族紛争で、個人的民族的恨みと云うのはどんな事をしても無くならない物だ。
結局、どちらかが手の届かないところに逃げるか、消えるかしない限り無くなる事はなかった。
和解してやり直せるほど地球人類は、まだ成長しきっていないのだと言うことを嫌と言うほど分からされた。
貧富の差は、まだまだ改善されなければならないだろう。
貧しい者からの搾取構造、富裕層のマッチポンプはある程度が緩和された。
医療と食に関しての技術革新は、最優先で進めた。
が、その反面、餓死者と病死者の減少と共に人口爆発が起きはじめている。
既に今の地球には、70億を超える人間を養えるだけのキャパシティーは残されていないのだ。
数年、頑張っても数十年の内に何もかもを食い潰して人類は滅びるだろう。
人類は出来るだけ早く地球を出て、この星を休ませなければならないと俺は考える。
すでに、橋頭堡となる軌道エレベーターは作った。
でも未だ人類は、宇宙で暮らしてゆくには未熟である。
これから先、その住処を宇宙に移し、成熟した一種族として認められて行くには長〜い年月が必要だろう。
しかし、地球の寿命はそれを待ってはくれないと思う。
星の延命を図る為にも、どこかに緩衝地帯となる場所が必要なのだ。
それじゃ月を明け渡すのかって?
イヤイヤ〜、あれは無理!
あれは、今じゃ準惑星サイズの要塞だから。
対天の川銀河連合用にセントラル達が改造しまくったせいで、見た目と質量は昔のままだけれど、まったく別の兵器になってるから……。
で、どうしよかとそんな諸々を大人達に相談したら、「それは、そもそも昴君がやるべき事では無いだろう!」 と怒られた。
君が、やろうと想ば出来てしまうだけの力を持つに至ったのは分かる。
だが、人類の未来を背負う必要は、そもそも君には無いだろう、と言うのだ。
共に歩むのと、全てやってしまうのとでは結果も過程も全てが違う。
それに俺は、既に随分とやり過ぎているとも言われた。
早すぎる技術革新は不幸も呼ぶのだから、間に合う程度のスピードで良いのだそうだ。
あとは、逆に相談するから地球の方でもう余計な事はするなと念を押される始末。
天の川銀河連合から出されていた運斬技牙一族討伐令は、3年前に無事解除された。
もう、ビクビクして逃げ隠れする必要は無いのだ。
……ま〜隠れていたかは、別としてではあるのだが……。
この3年間で俺は、太陽系に一つの惑星を作り上げる事に成功した。
アステロイドベルト、元は運斬技牙の主星ニビルだった小惑星帯をかき集めて一つの惑星として形にしたのである。
これが結構大変だった。
バラバラの小惑星をそのまま接着剤でくっ付ける訳にも行かないので、星の核と骨組みをまず作ってから隙間を埋めていったのだ。
どうせなら動ける方がいいよねと色々と手を加えていたのが、俺のこの3年間のライフワークとなっていたりする。
そして、出来上がったのが移動惑星『ニビル』であり、最近出来たばかりの俺達の新居でもある訳だ。
で、これだけの惑星を所有するというならチャンと宣言しておいた方がいいだろうとなった。
俺は今、嫁達を引き連れて新居の宣言の為カメラの前に立っている。
「こんにちは、天河昴です。本日、無事に結婚いたしました事をご報告いたします。同時に兼ねてより再建しておりました惑星に新居を移そうと思います。この星は、かつて運斬技牙一族の主星ニビルだった小惑星帯を再構築して再建を試みた惑星です。みなさんもご存知のとおり、私は運斬技牙一族の49代目頭首としてこの惑星を手掛けるにあたって一つの決意を持っていました。それは運斬技牙の地球からの独立とその地盤作りでした。そして、この度それらの目標をほぼ達成した事で、運斬技牙一族の独立を宣言したいと思います。本日只今より再建惑星ニビルを主星として、ウンサンギガ帝国の設立を宣言いたします。そして初代皇帝には運斬技牙一族の49代目頭首の私、天河昴が就任いたしました。」
この昴の映像に被る様に、3人の人物が映像に現れた。
一人目は、阿修羅族の王 ビマシッタラ・阿修羅王。
二人目は、デーヴァ族の王 ヴィシュヌ王女。
そして最後は前銀河天帝であり、現在は三眼族の王に復権したエア。
3人を代表して阿修羅王が喋り出した。
『我は阿修羅族の王 ビマシッタラ・阿修羅王である。3種族を代表し天の川銀河連合の名代として、この度のウンサンギガ帝国の設立を支持するものである。新たなる銀河の朋友を歓迎し共に歩む事を望む。そして婿殿、シャシを頼むぞ!』
グハッ! ここでそれを言うのかよ、勘弁してくれ、王様。
『デーヴァ族からも一言お祝いの言葉を送りましょう。この新国家建国が銀河に花咲く大輪とならん事を祈ります』
最後にエア様からも一言ある様だ……
『前天帝として朕からも謝罪をしよう。朕の出した討伐令により運斬技牙一族には辛い刻と主星崩壊という痛手を負わせる事となった。天河皇帝には『昔の事はもういいので今後は仲良くしてね♪』との有り難い言葉も頂いた。その言葉通り未来永劫の友好を約束しよう。此度は新国家の建国に立ち会えた事を嬉しく思う』
エア様〜、……俺が3年前に話した時の録音、そのまんま使いやがった。
「我が帝国は、天の川銀河連合及び複数の星間国家の信任の元に建国を宣言いたします。此れよりは一つの国家として行動いたします。つきましては、株式会社タウルスは国営企業となります。そして今回の慶次を記念して株式会社タウルスの所有する軌道エレベーターを地球政府へ譲渡いたします」
この宣言は、リアルタイムで地球全土に放送されたのだった。




