1-2-04 お宅訪問?…何じゃコリャ~! 21/5/1
20210501 加筆修正
7974文字 → 9485文字
2002年8月3日 土曜日
荒垣だ。
今日は、俺の公務も冴島の講義も無く、天河の所へ行くにはもってこいの日だ。
公用車を使おうかとも思ったが、今回は警察庁からの人員も一緒ということで、そちらの車両に便乗させてもらっている。
遠征には、警視庁警備部から警護課第4係の14 人が俺達3人と同行している。
3人というのは、俺の嫁の美郷が付いて来ているからだ。
そして今回、警護対象が複数に及ぶためにその把握と顔合わせ、それに警護に当たる地域が田舎ということで、その確認のために随分と大人数での訪問になった。
今回の顔合わせ、実際には俺達は囮も兼ねている。
我々の移動で引きずり出されるだろう不審人物やスパイなどを、公安と警視庁の特別捜査チームが一網打尽にして検挙する手筈になっている。
そんな訳で、なるべく目立たないように目立ってくれという難しい注文が来たのにはまいった。
ま~、俺達はどうせ神輿になったつもりで、後は専門家に任せるとしよう。
どうせ素人がジタバタしたところで、どうしようもない事だろう。
午前中2時間ほどを掛けて、お土産などを買うために寄り道をしながらドライブを楽しみ、天河邸へ向かう事になった。
そして丁度、正午に天河邸に到着したんだが……なんなんだここは?
田舎の森の中の一軒家には見えるが……雰囲気が聞いてたのと全然違う。
第一印象は普通の一軒家の様だが生け垣の中に、偽装した柵が仕掛けてある。
そして、庭が広いな~……羨ましいがそれよりも、最初に相談されてから調べた住所には想定していた建物、リフォームした古民家は見当たらなかった。
「荒垣事務次官、指定の住所はこちらで間違いありませんよね。聞いていた日本家屋とは、見た感じ様子が違っているようですが?」
「ああ、ここで間違いない。ここの筈なんだ。チョット待ってくれ、連絡してみる」
……ピポパ……プルルルー……ガチャン……
「はい、天河」
「おう、俺だ荒垣だ。今、表についたんだが、入っていいのか?」
「あっ、今鍵を開けますね。門が開いたら、そのまま入ってください」
……ゴ・ゴ・ゴ・ゴッ……と門扉がオートで開きだした……そして……
『良くいらっしゃいました。車のまま奥までお入りください。ロータリーを左回りにお願いします。裏に駐車場がありますので……』
と、門から音声による案内があった。
「そう云う訳らしい。行ってくれ」
「了解しました。後続も続け」
『『『了解!』』』
今日は、マイクロバスを含めて4台編成だ。
目の前の母屋の裏には、個人の邸宅としては広すぎる駐車スペースがあった。
軽く10台は停められるだろう屋根付き車庫と、喫煙所兼用の東屋だ。
他に屋根なしの部分は、大型バスが3台は停められるだろう。
「これは、田舎の古民家なんてもんじゃないな。母屋の大きさは申請されてるのと変わってはいないようだが……、東京でも滅多に見ないような現代建築の建物になっているな」
「ええ、そうですね。思ったより護りやすそうで少し安心しました」
天河が迎えに出てきたが、俺たちの大人数にびっくりしているようだ。
「先輩、こんな田舎までよくいらっしゃいました。狭いところですがどうぞ……と言いたいとこですが家だとこの人数は一度に入れないですね。会社の会議室なら入れるかな……ちょっと待ってください」
……なにか操作しているな、あの天河が手に持っているプレートは何だ?
「今日は休みなので、会社の方は自由に使って良いそうです。妻と息子は後から来ますので、皆さんは会社の方に移動をお願いします。私が案内しますよ」
天河を同乗させて全員、車ごと移動中……母屋の裏から林をを抜けて奥へ100mほど征くと……。
「……おい天河、ここは一体どれくらいの広さになるんだ?」
「そうですね、延べ東京ドーム3つ分くらいあるんじゃなかったかな。あとで詳しいデータをお渡ししますよ。会社立ち上げてから周りの土地を買い占めましてね、うちの昴がいじってたので私もまだ全部把握してなくて……アハハハ♪ あっ、そこを真っ直ぐ入るとすぐです。社屋前の駐車場に自由に停めちゃってください」
「これ全部、昴くんが一人でやったのか……、半端ね~な」
同行していたSPも開いた口が塞がらない様子だが、事の実態をまだ詳しく知らないから落ち着いてるな……。
あらためて見ると会社社屋も平屋だが、見た感じどこかの研究施設って感じだな。
これ地下有るだろ~、絶対に……。
玄関入り口には、『株式会社 TAURUS』と有る。
譲がさっきの板を玄関にかざすと、閉まっていた窓や入り口のシャッターが一気に開き始めた。
あれは、リモコンにもなってんのか?
うちにも一つ欲しいな……。
「丁度、うまい具合に買い占めた敷地内に手頃な廃屋が有りましてね、それを撤去して更地にしたところで、直ぐに行政から新築の許可がおりまして……、会社の建屋として建て替えて登記し直しました。元は2階建ての割と大きな宿屋だったようなんですが、地上1階地下2階の3階建て建築になっています。見た目よりもずっと広いですよ」
お前、広いって平屋部分だけで200坪ぐらい有るんだが……広すぎるだろう。
正面中央から玄関を入って左に大会議室と書いてある……そこそこ広いな……学校の教室2つ分くらい有るか。
建物は平屋、深い森の中に在る。
遠目にはこんな現代建築物が在ることは、上空からでも確認しないと分からないだろう。
上手く考えてあるな。
電線も見当たら無いな……地下ケーブルでも通してあるのか?
窓から外を伺ってみたが、自然に溶け込むように防護柵が施設してあるようだ。
「これだけの建物を維持するのだけでも大変だろう。会社は儲かってるようだな」
「そうでもないんですよ。会社設立で貯金は全部無くなりましたし、あとは土地の買収と税金でほとんど持っていかれましたよ。今は食べていくのがやっとでしょうかね。ここの光熱費が掛からないのが救いかな~、あとは固定資産税くらいですかね」
「光熱費掛からないっていうけど、さっきシャッター空いてたし、ここのドアも全部自動ドアだよな~明かりも点いてるし……。エッ、これも自家発電か?」
「あっお茶も出さないで申し訳ありません。壁のところに全自動の給湯付いてますので申し訳ありませんが、セルフでお願いできますか。コップ置くと各種飲み物が出ますので、お好みのものをどうぞ。え~と、作ったの昴なんで詳しくは本人に聞いてください。たぶん嬉々として勝手に説明初めますから……」
全員が一息ついて落ち着いた頃、20歳くらいの女性と小学生にしては少し背の高いスラリとした少年が現れた。
……ちなみに天河家全員メガネをしています……これは目の発光を誤魔化す為のものですが、元々天河夫妻はメガネをかけておりました……
「お待たせしました。家族も来たようなので改めて自己紹介を致します。私が天河譲、40歳、当家の家長をしております。こちらが妻の希美、41歳、株式会社タウルスの社長です。そして長男の昴、12歳、小学校6年になります。皆さんには色々とご迷惑をお掛けすると思いますが、どうかよろしくお願いいたします」
[そして私がAIのハコ、2歳です。譲さま、家族を紹介するのですから私もご紹介いただくのが筋でございます]
みんな無言で会議室前方、音声のしたほうを向いた。
会議室のホワイトボードが発光し、『VoiceOnly』と表示されている。
なんじゃこりゃ!
今の音声は、何なんだ。
まだ他にも家族がいるのか?
譲の方に視線を向けると頭を抱えて突っ伏している……どうした?
奥さんも片手を頬に当てて、困ったわネ~のポーズ。
昴くんは、腹を抱えて笑いを堪えている。
そしてホワイトボードには、更にカラフルに表示が増えた。
[[[[[[[お母様だけズルいです。私達も紹介してください!]]]]]]]
[と言う訳で、サポートAI。長女のマイアです。希美さまの秘書を務めております]
[サポートAI。次女、エレクトラでございます。譲さまの補佐をしております]
[サポートAI。三女のタイゲタ、よろしく。天河家の防犯や警備の責任者]
[サポートAI。四女、アルキオネですわ。昴さまの研究開発の管理をしております]
[サポートAI。五女のケラエノよ。情報収集と防諜が専門かな]
[サポートAI。六女、アステローペです。皆様の健康管理と医療関係の責任者です]
[サポートAI。末の七女、メローペです。色んな雑用何でもござれです]
[[[[[[[我らサポートAI、プレアデス・シスターズで~す♪]]]]]]]
譲は、天井を見上げて放心状態。
希美さんはさっきと逆の頬を抑えて、呆れ顔。
昴くんは息ができないらしく、涙を流しながらヒーヒー言っている。
「希美さん、どうすんの? 隠すはずじゃなかったっけ?」
「これだけの人間が常時出入りしたら、どうせバレるわよ。(宇宙船さえ隠しとけばなんとかなるでしょ)」
「そうだよ父さん。(遅かれ早かれバレるなら、知っててもらったほうがSPの人も護りやすいでしょ)」
「荒垣先輩、お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。詳しくは、昴がこの後、説明すると思いますが、これがうちの家族です」
「「「よろしくおねがいします」」」
[[[[[[[[よろしくお願いいたします]]]]]]]]
ブッ魂消た!
AIって人工知能だよな……あんな普通の人みたいに喋れるもんなのか?
「おい冴島、AIってあんな普通に人みたいなのか?」
「そんな訳あるかよ、ありえね~よ。……ちょっと落ち着くまで時間をくれ、頼む……」
あまりの衝撃に、みんなどんなリアクションをして良いのか分からず固まってしまった。
しかし、機転を利かせた希美さんが席を立ってみんなの金縛りを解いたのだった。
「皆さんお昼はまだですよね? こちらでご用意した物で良ければ召し上がってくださいな。一息入れてから改めて打ち合わせといたしましょう」
そうしたら待っていた様に入り口が勝手に開き、円筒形の物体が8台入ってきた。
滑らかに動くその円筒に、みんな目が吸い寄せられる。
色違い8色の円筒は、先程のAIの音声で食事の配膳を始めた。
ニコニコしながらそれを眺めていた昴くんが、俺の方に碧い円筒と共に来た。
「こんにちは、今日は遠い所をよくおいで下さいました」 ペコリ
[ようこそ、天河家へ。御用のある時は、遠慮なくお声をお掛け下さい。天河邸とこちらの社屋は、オールリモートでコントロールできますので、殆どのご要望にお応えできると存じます。私は、天河家のマザーAIのハコと申します。よろしくお願い申し上げます]
「俺は、荒垣 聡、君のお父さんの大学時代の先輩だ。同じ天文部にいてよく観測にいってた。よろしく頼むよ」
「知ってますよ! 山登りのクマさん♪」
「「「「「「「「「「「「「ププッ!」」」」」」」」」」」」」
……ギロリ……
「山で撮った写真をたくさん持ってきたんだ。後で見せてあげるよ」
「わ~~、嬉しいです♪」
こうして話すと普通のこどもだな。
「俺は冴島 浩司、荒垣の幼馴染で某工科大学の准教授をやってる。昴くんがどんな子か興味があってね、今日はこいつに付いてきたんだ。この間からびっくりしてばかりだよ。まさか人工知能まで実用化しているとは思っていなかったよ。共同研究を申し込みたいくらいだ、本気で考えておいてくれないかい?」
「はい、よろしくおねがいします。それじゃ俺の工作を見てくれた大学の先生って、貴方ですね。あとでもっと凄いの見せますね」
「イヤイヤ、今日はもうお腹いっぱいだよ。どうせこれからは長い付き合いになると思うし、そんなに慌てなくても大丈夫さ」
「は~い、分かりました」
うちの奥さんは、女性警察官と一緒に希美さんに挨拶に行っている。
あれは化粧品の交渉だな、鼻息が荒いし目の色が変わってる。
確かに天河家の人は若く綺麗だが……、あっ大臣たちの件も伝えておかないと……。
◆
全員の食事も終わり、いい感じにリラックスしたところで昴くんから説明が開始された。
何故か白衣を着て、ホワイトボードの前に立っている。
おっ、ホワイトボードに昴くんが話している物の写真や説明が分かりやすく出てくるようだ。
「僕の父、天河譲から紹介のありました息子の昴と申します。4月生まれの12歳です。説明することは沢山ありますが、最初にいくつか大事なことをお伝えしておきます」
1つ、俺が研究しているのは、物を生み出す技術です、ここ大事です。
2つ、破壊から生み出される物もあると言う人もいますが、直接破壊活動に結びつくものは基本作りたくありません。だから余程のことが無ければ武器は作りませんし、俺の周りでは武器が無駄になるような物を沢山見かけるかもしれません。
3つ、俺の発明で不幸になる人がなるべく少なくなるよう手を貸してください。
4つ、俺の発明を悪用しようとしても、それがわかった時点で、自壊する仕組みが色々な所に仕込んであります。そして仕込まれている物を排除した時点で、僕の発明は機能を失います。
5つ、お金は生活に不自由のない程度あればいいので、僕の発明で出た利益のほとんどを基金として活用していく予定です。
「僕は、まだ12歳の子供です。知識は、あっても経験がありません。駄目な事は、ハッキリ駄目と叱ってください」
……パチパチパチ……
ふむ、チャント最低限の教育はされてるんだな。
癇癪持ちの我が儘小僧じゃなくて安心した。
「それじゃ代表して質問させてもらうよ。武器が無駄になるっていうのはどういう物かな?」
「ウ~ン、沢山ありますけどそうですね、この窓ガラスは何で出来てるか分かりますか?」
「普通の石英じゃないのかい? 又はアクリルガラスとかかな」
「このガラスは木から出来ています。セルロースナノファイバーを多重積層させた樹脂を加工して作りました。ナノサイズにしたセルロース繊維に撚りを掛けて繋いでいるところがみそです。炭素繊維だと真っ黒な板になっちゃいますがセルロースナノファイバーなら透明の板が作れます。重さや強度も炭素繊維に近く、重さは鋼鉄の5分の1、強度は5倍あります。ウ~ン、紙でできてると言えば分かりやすいかな。日本の製紙技術は世界一だと思ってますけど、その行き着く先の1つですね。そういう訳で、鉄砲の弾も弾き返します。着色も出来ますし、無駄な材木や雑草からも作れて、色んな物を軽く丈夫にしちゃいましょう。植物繊維ですから土地さえあればいくらでも再生産できますし、セルロースですから生産廃棄の環境負荷がとても少なくてすみます。繊維のまま使用してもアラミド繊維なみに強靭ですから、コレでコートを作ったら防弾チョッキ要りませんよね」
「うっ、炭素繊維では駄目なのかい?」
「炭素繊維も優秀な素材ですが、製造に其れなりのエネルギーと化石燃料が必要ですし、廃棄する場合は焼成し直して再利用する方法しかありません。結局そのままでは捨てられませんよね」
「分かった、他には何かあるかい?」
「アルキオネ、適当なの何か有るかな?」
[そうですね、昴さまの真骨頂といったらナノ技術です。皆さんここ大事なとこですよ~、後でテストに出るかもしれません。でもメモとっちゃ駄目ですよ~。医療用ナノマシンによる、遺伝子治療でしょうね]
……ガタッガタッ……ガタッガタッガタッ……
[皆さん、落ち着いて席に戻ってください]
「あ~冴島だが、アルキオネさんでいいのかな? 本当にその遺伝子治療が可能なのかね?」
「昴さまの処方する医療用ナノマシンを用いれば、正常なDNAマップさえ確認できれば可能であると言えるでしょう。現在、皆さんは実物をその目にしていますよ」
「あら、アルキオネ。ここでバラしちゃうの?」
[希美さま、どうせバレます。ここは信用を絆ぐためにも関係者には、知らせておいたほうが得策と考えます]
「そう、貴方がそう言うなら任せるわ」
「今の話だと天河家の人間が若いのは、そのセイに聞こえるが?」
[肯定とさせていただきます。冴島さま]
「ここで、こんな爆弾落とされるとは思わなかったよ。そうすると、ゆくゆくは生体の欠損再生も可能になるのかな」
[現在は、まだ実現していませんが、可能な未来です。即死に至っていない状態で、延命するだけならば現在でも可能ですよ。あっ脳だけは、再生できませんので何としても頭だけは守ってください。臓器の再生や疾患した神経の再生など夢が広がりますよね~、冴島先生]
……実際には、すでに全て可能ですがここでは、まだ秘密です……
[まだまだ有りますが、私達のような流暢に喋るAIなんかも便利ですよね。ちなみに株式会社タウルスの電話受付はマイア姉さんが全て受け持っていますが、世界中から掛かってくる電話を一度に100件以上、各国語でオペレーションを熟しています]
[そうね~、昨日は、3000件超えてたかしら? 殆どが『ノルン』の問合せか冷やかし、質の悪いのだと商品の買い占めや会社の乗っ取り、あとは脅迫や嫌がらせもあるわね。言葉が分からないと思って好き勝手な事を怒鳴りつけてくる者も居るんだけれど、こちらが全ての言葉や意味を分かっていて、何処から掛けてきているかを知られていると分かると慌てて電話を切るわね。そういう時はこちらから切られた電話に『悪い子はいねが~? 取っ捕まえて食っっちまうぞ~!』て、掛けてやると、もう掛けてこなくなるわね♪]
「マイアさん……君は何処からの電話なのか、全て把握しているのかい?」
[もちろんよ。瞬時に回線をたどってウラを取るのは常識ね。私達AIに掛かれば、どんな電子的な偽装も意味はないわね。何なら今からペンタゴンの……『ちょ~っと待った!』]
「その話は、今は無しで御願いね! 秘書のマイアさん……」
[イエス、希美さま!]
[失礼しました。少し脱線もありましたが、概ねAIの有効性もお分かりになったと思います。特に機器の制御や各種オペレーションは得意分野ですね。人のように疲れませんから休息も要りません。膨大な数を一度に熟して情報の整合性を取ることも出来ます。100人のオペレーターが電話を受けてその内容と顧客の整合性を取ることなどは事実上無理ですが、AIには即座に実行可能です。この意味がお分かりになりますか?]
とんでもない話になってきたぞ。
新エネルギーがどうのなんて、一発で吹き飛んじまったぞ。
「昴くんに関する件の責任者は私だが、新しい治療法に関することについては、一度持ち帰って再度検討するしかないよ。今日はここに専門の知識のある者も来ていない。兎に角後は、警護関係の打ち合わせを進めさせてもらって、その辺は専門家に任せようと思う。みんな分かっていると思うが本日ここで見聞きした事は、職務に関すること以外、上司であっても他言無用だ。私の許可なく情報を漏らした場合は、厳重な処分があるものと覚悟してくれたまえ。では、権堂主任、あとはよろしく頼む」
◆
俺の名は、権堂 勇魚 50歳、警護課第4係の主任をしている。
大きな体と名前から、付いたあだ名が『ゴンドウクジラ』、そのまんまである。
今日は、重要な発明をした子供と関係者の護衛という事で第4係全員で乗り込んで来た訳だが、最初は名前と住所しか情報がない状態での出発だった。
機密事項といったって、もう少しマル対の情報を開示してくれても良いんじゃないかと掛け合ってみたが取り合ってもらえず、仕方なく今回関わる人員全員で訪問した訳だが、俺たちをそっちのけで展開される状況に目を回すしか無かったんだ。
聞いていた住所には、広大な敷地に目立たない様に最先端の近代建築が建ち、案内に出てきたマル対の父親の話だと、そのマル対が全てを整備したと聞こえる。
そんなまさか?
マル対は、12歳の子供のハズだ。
大人でも、専門家が何年も掛かりそうな整備を出来るはずがない。
話半分に聞き流しながら、マル対家族との対面となった訳だがここにカオスが待っていた。
AIってなんですか?
自在に走り回る円筒形のロボットの様な物、出された料理は、う~ん普通だった。
その後、耳に入ってくる話の半分も理解できず……新素材?
ナノマシン?
遺伝子治療は何となく分かるが、欠損部位の再生治療?
SFですか?
真面目な話なんですか……、そうですか。
もう頭は、オーバーヒート寸前。
でもこっちに話を振る荒垣事務次官……もう、勘弁してください。
そんな前置きは良いですから、分かってますよ。
これは日本どころか、世界が引っくり返る事だってね。
これは、責任重大どころの話じゃなくなってきましたな~、ハハハハ……。
「ハイ、ご紹介いただきました。権堂勇魚警部です。警視庁警備部・警護課第4係の主任を努めております。今後の天河家、特に昴くんの護衛任務に就くことになります。本日は、担当警護につく人員14名全員でうかがいました。大人数で押しかけまして申し訳ありません」
「丁寧なご挨拶を有難うございます。昴の警護が必要かどうかは別として、世の中の常識をビシッと教えて頂けると有り難いんですが……。父親の私が言うのは可笑しいのかもしれませんが、兎に角ブッ飛んだ息子なんでよろしくお願いいたします。我が家とこの村の警備状況は、サポートAIのタイゲタが把握しておりますので、後ほど確認をお願いします」
「分かりました、1つお聞きしたいのですがこちらのライフラインの確認だけさせてください。先程訪問時に確認しながら来たつもりなんですが、どこにも見当たらなかったので……」
すると、紫色の円筒が前に出てきて喋りだした。
[それは、私からご説明いたしましょう。わたくし、アルキオネと申します。以後お見知りおきください。先ず、通信ラインは山頂の国立天文台XX天文観測所への光通信施設の際に引かせていただいた業務用回線が地下ケーブルにてオンラインとなっております。天文観測所業務の補助を行っておりましたので特例として、繋いで頂いております。電力ですが、高効率太陽光発電により全てを賄っております。日中は夜間と非常時の為に蓄電しており、常時1ヶ月分を高性能蓄電材に蓄電して確保しており、それ以外は売電しております。生活用水は、地下水を利用しておりますので水道は来ておりません。ちなみにマザーハコの悪乗りで掘り当てた温泉もございます。まだ無認可ですので使用する場合は、自己責任でお願いいたします。湯の効能は、美肌、疲労回復、血行促進などです。分析上人体に悪影響の有るものは、検出されておりませんのでご安心ください。わたくしからは以上です]
「温泉も有るんですか?」
[肯定。社屋地下の大浴場がございます。平時は、社員と地域住民にだけ開放しております]
「それで、駐車場があんなに広いんですな」
「住民は、パーソナルチェックに通った人物しか入場できません。この村には、診療所もありませんので、ついでに村民の健康チェックも行っております。温泉に入って健康管理も出来る事になりますので、地域住民には概ね好評です」
「至れり尽くせりですな、ここに住みたいかもしれません」
[ぜひ歓迎いたします。実際に出ていった村人の来訪も増えており、帰村する傾向がみえて来ました。村での生活基盤が確立できれば、過疎の弊害が縮小すると予想できます]
「ちなみにお聞きしますが、このサービスは何時頃から? 」
[今年、ゴールデンウイーク明けからになります。完成した社屋施設のお披露目を行いまして、その翌日から行っております]
……村の人間にはダダ漏れじゃね……全部で50人は居ないが……




