1-2-03 官僚だから‥頑張るのだ! 21/4/30
20210430 加筆修正
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もう16時か……省に帰ってビデオを確認したら、次の根回しして帰るか……。
「次官、お帰りなさいませ、先程からお客様が……不在だと言っても帰ってくれないんです」
ナニ、どこのどいつだ?
「ああっ、ただいま。それで誰が来てるんだい?」
「あの~、法務大臣と外務大臣と国土交通大臣と文部科学大臣が連れ立ってお待ちです」
「なに~~~!」
ど・う・ゆ・う・こ・と・だ……、何が起こっているんだ?
「ああ、済まなかったね。後は、私が応対しよう。人数分のお茶を頼むよ」
「はい、分かりました。あとはお願いいたします」
……来客用・応接室……
……トントントントン……ガチャリ……
「おまたせして申し訳ありません。皆さんお揃いで本日はどういったご要件でしょうか? 」
外務大臣
「こんにちは! 荒垣くん。忙しいところを押しかけちゃって御免なさいね。君も知ってる通り私は元通産省の人間で外務大臣なんて畑違いな事をしているんだけど、この頃特に気になるのがお肌の具合なのよ。そこに朝の大臣会議で降って湧いたように耳にしたのよ、貴方にはノルンを手に入れる伝手が有るって言う話をね。その後は、経済産業大臣を締め上げて~……って、この話は忘れて頂戴。荒垣くんが、株式会社タウルスの関係者と先輩後輩だと聞いたので、こうして有志でうかがった次第なのよ」
法務大臣
「そう私もね~、是非ノルンを試したくて……大臣になったのは良いけれどメディアへの露出も増えたでしょう。あまりみっともない所は見せたくないのよ。コレでも女ですからね」
国土交通大臣
「私もね、今は大臣なんてしてるけどこれでも元女優でしょ。人の目がどうしても気になる物なのよ。それでね、どうしてもノルンを試してみたいのよ。是非、手に入らないかしら?」
文部科学大臣
「私なんて元が一般人だから大臣になるまでメディアへの露出なんて考えた事もなかったのよ。まさか写真一枚撮られるのがこんなに世の中に影響するなんて思わなかったし……」
「「「「是非、私達に紹介して頂戴、お願いよ!」」」」」
「あっああ……、ノルンの件ですか。そちらは、私の後輩の奥さんが始めた商売なんですよ。今度、夫婦で会いますので繋ぎをつけましょう。ここで安請け合いも出来ませんが多分大丈夫だと思いますよ。私の方で抱えてる重要案件がありまして、それも今お話に出てきたタウルスについてなんです。是非、皆さんにも有志になっていただけると、私としても心強いんですが如何ですか? 」
法務大臣
「有志って、法を犯す訳じゃないでしょ? それなら大丈夫、私達も力になるわよ!」
「「「ええっ、よろしくってよ!」」」
「はっ、はあ~。よろしくお願いいたします」
……これは、強力な女子力が発揮されそうだ……
◆
いや~びっくりした……、女とはあそこまで拘るもんなのか、否ッ拘る女だからこそあの地位に居るんだな。
はぁ~、女は怖い怖い。
冴島の所でコピーしたビデオを再生しながら、大臣達の事を考えていたが4人集まるとすごい圧力だ。
あれを拒否していたら、今頃どうなっていたか……考えるだけで恐ろしい。
イヤッ、もうやめよう。
思わぬ味方の出現に喜んでいいのか悩んでいいのか、悶々としながらビデオを見るのだった。
あれっ、コイツには見覚えがあるぞ。
何時だったか資源エネルギー庁に行った時に……、そうだ新エネルギー課の課長だ。
名前まで覚えてないが、エネルギーに関しての許認可は資源エネルギー庁だけが持ってるからって、次官になる時に挨拶に行ったんだよな。
でもどういう事だ?
新エネルギー課の課長が俺たちの後をつけるってのは、長官の方に情報が流れたのであれば、ちゃんとアポを取るはずだよな。
それと、この一緒に映ってる奴、なんか胡散臭いというか東洋系だが日本人じゃないんじゃないか?
もしかすると外国に情報を売ったか?
俺の顔の見聞にでも来たんだろう……不味いな~、冴島にも一報入れとくか……ついでに天河の方にもメールをしておこう。
俺が尾行を受けて付きまとわれたので調べてほしい、と公安の方にはさっきのビデオを投げておいたし、これで尻尾は掴めるだろう。
ある程度情報が漏れるのは、仕方がないと思っていたが、余りにも近くにネズミがいて呆気にとられる思いだ。
そういえば子供達は今は夏休みか……俺も夏休みがほしい……。
……ピポパポ……プルルーープルルーー……ガチャ……
「ハイ、冴島……」
「荒垣だ。さっきの犬は多分新エネルギー課の課長だ。一緒にいる奴は、分からんが公安の方に捜査を依頼した」
「そうか~、腹ん中に虫がいたか。ああっその横の奴な、K国の産業スパイだぞ。前に俺んところに、入ろうとして失敗した奴だ。そん時は逃したが今度来たら取っ捕まえてやる」
「うはっ、前科持ちかよ……公安の方は、早く片がつくかもしれないな。でもコレで情報が拡散したと見て動いたほうが良さそうだな。お前も気をつけてくれ、それじゃまたな」
「おうっ、今日はご馳走さん。じゃ~な」
……翌日、内閣府・総理官邸……
「おはよう御座います。総理」
「おはよう、朝早くからどうしたんだね? 経済産業大臣」
「ハイ。昨日、画期的な発電システムの情報が私の所に届きまして、今詳しい調査を行って居ります。情報の触りだけでもお耳に入れておこうと思いまして、総理はメディアを上手にお使いになる、情報は力ですからな」
「そう、情報は力だよ。マスコミを嫌う政治家は多いが毛嫌いするばかりでは、もうこの時代やっていけないよ。それに毒も上手く使えば薬になる」
「はい、ご尤もです。今回発明された発電システムですが、水から直接電気を発電するシステムだそうです。可動試験は、某工科大学で滞りなく行われ確認出来たそうです。まだ、安定性と生産性に少々難が有るそうですが日本はものづくりの国です。特に小型化と商用可は、得意技ですからな、何とかするでしょう。唯、国外の反応がどういったものになるか心配ではあります」
「その情報は、すでに外国にまで広まっているのかね? 不味いじゃないか! 原子力に変わる発電システムとなる話だろう、どんな事をしても実用化に漕ぎ着け給え。私の方でも根回ししようじゃないか」
「はい、有難うございます。この件の責任者には、経済産業省事務次官の荒垣くんになってもらっています。総理からも、よろしくご配慮いただければありがたいと思います」
「わかった、荒垣くんだね。彼は若いが出来る人物だと聞いている、頑張って欲しいね」
……どんどんと話に尾ひれがついていきます……
◆
2002年7月29日、午前10時
今日の事務次官等会議は最初に俺の議事から開始となる。
通常内閣府外局の長官を入れて、18名のところに何故か20名が控えていた。
確かにオブザーバーとして資源エネルギー庁の長官を呼んではあるが……なぜお前がここに居る……新エネルギー課の課長さんよ……。
睨みつけたら視線を外していたが、席を立つ気配は一向に無いようだ。
「資源エネルギー庁長官、なぜ本日の会議に新エネルギー課の課長が同席しているのかご説明いただきたい。本日ご同席を願ったのは長官だけの筈ですが?」
「荒垣事務次官。本日は、新発電システムの情報と各省庁への連絡打ち合わせとお聞きしました。私が声をかけられたのもその為と聞きます。だが、私は経済には詳しいが、事エネルギーに関しては門外漢です。そこで実務に詳しい新エネルギー課の課長を同伴しました。事前の連絡を怠ったことはお詫び致しますので、彼の同席の許可をお願います」
……チッ……
「……仕方がありませんね、今回は特例として許可いたしましょう。では、定刻となりますので、本日の事務次官等会議を実施いたします。まず、本日の一番目は、私が議事に提出した件です。お手元の資料を御覧ください。先に述べておきますがマル秘と記載の通り、総理と経済産業大臣の指示により持ち出し禁止となりますので会議終了時には回収いたしますのでよろしくお願いいたします。今回の新発電システムは、…………。説明は、以上になります、ご質問をどうぞ?」
環境省事務次官
「私からよろしいですか? 今回の新しい発電装置による有害物質などは確認されていますか? 環境省としましては先ずそこのところをお聞きたいですな」
「今の所、有害な物質及び環境への影響は確認されておりません。某工科大学准教授の説明では、水素を取り出す水そのものに問題のない状況であれば、排出されるのは人体には無害な気体だけだそうです。現在、燃料に使用できる水がどの程度まで精製されているものが必要なのか実験を繰り返してしている段階とのことです。詳しくは後日、政府発表とともに詳しいデータの公表を行う予定です。とにかく、今迄に無い発電システムです。皆さん、現時点ではまだ半信半疑の事と思いますが、どうか御協力をお願いいたします」
総務省事務次官
「今回、総理の強い要望もありまして皆さんにお願いします。既存の発電に変わる画期的なシステムであるこの水素発電装置は、間違いなく日本の、いいえ世界のエネルギー市場を書き換える発明となるでしょう。バブルが崩壊して以来、続く不況に終止符を打つ一矢になる事と認識を強くし、各省の御尽力をお願いしたい」
その後、会議は進み最後となった。
「このあと、文部科学省、外務省、警察庁の方は少々お時間を頂きたい、総務省の小会議室に場所を移して本件の事でお話があります」
……総務省・小会議室……
「皆さんに残って頂いたのには訳があります。実は、極秘で御協力を頂きたいからなのです。これからその訳を御説明いたします」
文部科学省事務次官
「私が残されるということは、教育機関に関することかな?」
「はい、それもここで御説明いたします。まず、先の会議にて説明された水素発電装置ですが、肝となるコアユニットの開発者の説明は一切しておりません。資料にも記載を控えさせていただきました。それは、開発者の保護が第一であるためなのです、ただここで問題になるのが開発者の立場なんですが、皆さんどんな人間が開発したと思いますか?」
文部科学省事務次官
「大学や研究機関からのそういった報告は一切受けていないね、教育関係者では無いだろう、民間人かな?」
外務省事務次官
「海外にいるエネルギー関係の邦人にも、そういった情報は無いね。開発者は日本人なんだろう?」
「はい、間違いなく日本人です」
警察庁長官
「民間人の発明家でも聞いたことがないですね。マッドな危険思考の人間じゃないんだろう? ということは前歴がない若い人間なんじゃないですか?」
「流石に鋭いですね。実は、開発者は12歳の小学生なんです」
文部科学省事務次官
「なっ、なんだって!? それは本当かね?」
「はい、間違いありません。そう云った訳で保護対象者は開発者の小学生とその家族及び関係者となります。彼は、先の発明、いや、あれは工作でしょうね。あれ以外にも沢山の作品があるらしいんです。父親の話では夏休みの工作の一部らしいですからね。皆さん、私の言っている事がご理解いただけますか?」
文部科学省事務次官
「……あれが工作……ブツブツブツブツ……」
警察庁長官
「それで、保護というと何かしらの外圧が働くと言うことですね。子供という事ですし、誘拐して金にしようとする人間も出てくるでしょうね」
外務省事務次官
「これだけ画期的な発明となると海外の動きにも気が抜けませんな。この情報はどこまで広がっているか予想はできますか? 」
「実に残念な事ですが、獅子身中の虫が既に海外へ情報を売った可能性があります。公安には先日、調査依頼を出しておいたのですが、警察庁にその情報は入っていますか?」
警察庁長官
「フムッ、先日の件はこれ絡みですか。まだ一部ですが報告が届いて来ています。先日、荒垣事務次官を尾行していたストーカーは、K国産業省のスパイです。以前から国際組織犯罪対策課で内偵している男でした。そして、一緒に写っていたのは今日会議に出席していた新エネルギー課課長だったことが確認できました」
外務省事務次官
「なんですって? K国に情報を流したのは彼なんですか? なんて事をしてくれたんだ……外務省は色々とあって、やっと落ち着いたばかりだって云うのに……」
警察庁長官
「今回は絶対に見逃すわけには行きませんな。一網打尽にしてやりましょう。そうすると既に発明の情報は、ある程度海外に流れたと見て動いたほうが良さそうですね。腕利きを捜査に当たらせましょう。そうですね、専属のSP、護衛チームをつける事になると思います。詳しいマル対の情報をお願いできますか」
「はい。後日、私と妻、それに検証に立ち会った某工科大学准教授とで顔合わせを行いますので、その時に同行していただけると有り難いですのね。え~そう云うわけで文部科学省には、小学校の方にご配慮頂けるようお願いしたいのですが……、聞こえていますか?」
文部科学省事務次官
「……ブツブツ……、エッ、ああぁ、聞こえていますとも、開発者の小学生に対する配慮ですな!」
「ええ、どうも底の抜けた天才らしくてですね、MITの工科大学院の博士課程論文をすらすらと書き出すような子らしいんですよ。なんでも7000余りある世界中の言語もすべて理解して話せるらしいですよ」
文部科学省事務次官・外務省事務次官
「……」
警察庁長官
「そりゃ~また、びっくりなモンスターチルドレンですな♪」
「星好きで性格のおとなしい子らしいんですが、准教授の話だとそういう天才は往々にしてやらかすらしいので、周りの大人がしっかり見てないと駄目らしいんですよ」
警察庁長官
「ウ~ン、それはまた責任重大な話ですな」




