3-4-14 完成!銀河間万能移民船ハコ
さあ、検証を続けましょう。
[茶々をを入れて仕舞い申し訳ありません、検証を次の段階へ進めましょうか。
マスターが、図らずもヴィシュヌ女王の姿をリアルタイムで確認してしまったと言う事は、ここからデーヴァ族主星まで約8万光年の距離を一瞬で見通した事になります。
マスターの存在と能力にシンクロしている今、私の一瞬で飛べる距離はマスターの認識出来る距離に比例します。
転移に必要なエネルギーは、最大でも高速亜空間航行に比べて3倍ほどに成ると想定されますが、私のエネルギー保有量から言えば雀の涙です。
ほぼ無限に転移は可能だと予測できます。
かのアンドロメダ銀河までおよそ255万光年ですから32回の連続転移で跳ぶことも可能だと想定されますね・・所要時間3分ほどでしょうか]
「えっ、3分でアンドロメダまで跳べるの?ヤロウよ♪」
[否定。
少し落ち着いてお待ち下さい。
まずは、最初の長距離転移を実行し確認いたしましょう。
船体への負荷がどの程度かかる物かまだ想定もできませんし、亜空間航行とは違ったアプローチとなります。
我々の歴史の中でもこれだけの超長距離転移による航法は、経験がありませんので一度跳んでから詳細を煮詰めましょう。
それでは準備は出来ています、タイミングはマスターへ一任いたします]
「了解、それじゃ跳ぶよ!
目標は、天の川銀河連合中央ステーションから3天文単位、転移!」
その瞬間、巨大な蒼き宝石が一瞬でその空間から掻き消えた。
そしておよそ3秒後、昴が指定した座標にハコは転移していた。
[転移座標の確認が終了しました、転移成功です。
現在転移時の状態を分析中・・解析終了、マスターのテレポートにシンクロした形で船体の量子テレポートが実行された模様。
船体の再構築後通常空間への復帰まで5ミリ秒、転移開始から2.872秒掛かりました、マスターが当該座標へのテレポートに使用された時間で間違いありません]
「へ~ここまで7万2千光年くらいだよね、3秒か~♪」
[肯定。
船体のセンシング完了しました、安全確認まで2秒です、終了しました。
先程の転移に使用されたエネルギー量は、改良型亜空間航行3日分に相当します]
「ウ~ン、燃費的にはそんなに変わんないね。
時間の節約にはなる?」
[肯定。
時間的には3日の距離を3秒で跳んだことになりますね。
それでいて燃料消費は、ほぼ同等です。
消費時間を86400分の1に短縮したことになります。
素晴らしい成果です。
この後、何回か距離を変えて消費エネルギー比率の検証も必要になりますが、取り敢えず保有エネルギーと消費されるエネルギーに問題は発生していません]
「燃料が足らなくて途中で実体化とか、実体化出来なくて亜空間に溶けるな~んて事にならなくて良かったよ、ほんと洒落にならないもんね~」
[肯定。
先程、連続転移をヤロウ!とおっしゃって居た方の言葉とも思えませんが・・]
「ウッ、勘弁してよ~。
でも、この新航法って俺のテレポートとハコ無しだと成り立たないよね。
他の船はどうすんの?」
[肯定。
基本、私が抱えて飛ぶことになりますね。
緊急時には置いていきますが、そのうち追いついてくるでしょう・・]
[[[[[[[エ~ひどーい]]]]]ブーブー]]
[・・外野は置いておいて、安全マージンを最大に取って再転移までに3秒頂きます。
先程と同じ距離を何の問題も無く35回連続転移したとすると、3分30秒でアンドロメダ銀河に到達出来ると想定されます。
しかし、どんな障害や回避事項が発生するか分かりませんので、まずは距離を変えながら連続転移を5回ほど行って見ましょう。
目標は大マゼラン雲、片道16万3千光年のお散歩です]
「オオッ、大マゼラン銀河!
あれって、フェルディナンド・マザランが世界周航の時に記録した事にちなんで名付けられたんだよね~、それより前はケープの雲とか呼ばれてたんだったかな~」
[肯定。
流石によくご存知ですね。
これまでの活動でも、詳しい情報の無い近傍の銀河系です。
この際ですので超空間通信対応の探査用プローブをバラ撒いて来ようかと考えています]
「ふむふむ、ハコはその辺抜かりがないよね~。
『転ばぬ先の杖』は、うちの家訓みたいなもんだしね、良いんじゃない。
これだけ距離が有るなら、早期の情報は武器に成るだろうし、それに射手座矮小楕円銀河の例も有るし・・」
[肯定。
どういう訳かこのところ、立て続けに騒動が起きています。
これも力持つ者の台頭に依るものなのか、因果律の収束が起こっているのかも知れません。
激動の時代とよく云われる事がありますが、文明や時代の変革期には同じように歴史に残るような騒動や事件が起こるものです。
監視観測の手数は、無理をしても出来るだけ沢山広くするに限ります]
こうして、今まで一つも話題にのぼらなかった銀河、大マゼラン雲への情報収集の散歩にゆくことになったのだった。
何も起こらなければ良いんだけど、こんな事を考えてる時点でフラッグが立ってたりして・・まさかね~・・。




