3-4-13 完成!恒星間万能移民船ハコ5
昴のシンクロ状況を見ていたハコは、その異常な数値と結果に困惑しながらも想定していたプロセスに破綻が起きていないか慎重に確認していった。
[ムフフッ♪]
身悶えしながらプルプルと震えている、非常~に嬉しそうだ。
[お母様、マスターは人間ですよね?これではまるで・・]
昴をモニタリングしながら不安そうに、アステローペが聞き返す。
トランス状態なのだろう、当の昴が広大な亜空間に一人浮かんで何やら始めた様だ。
徐ろに掲げた両の手を中央から左右に広げてゆく。
広げられた手の先には、緑の大地が生まれてゆくのだった。
指揮者がタクトを振るように、段々とその動きは大きくなり、それに合わせて山ができ河ができ、そして海が生まれた。
そこには大気が満ち溢れ、風が生まれるのだった。
[肯定。
マスターは人間です。
同時に未だこの宇宙では誰も到達し得なかった生命体に成ったのです。
通常、人間のままではここまでの力を持った時点で押し潰されていたでしょう。
マスターの意思の力は、それだけ強大です。
まだまだ成長するでしょう、楽しみで成りません]
[お母様、人間とは何なのでしょう?]
メローペがつぶやいた。
[行き成りそこを聞きますか・・、そうですね貴女達はこの宇宙が何の為に生まれてきたのか考えた事がありますか?
そこに発生した生命・・有る意味で私達AIも知性体として括るとするならば同じ存在と言えるでしょう。
そして、数多生まれては消えてゆく星達。
極端なことを言えば、この星達も生命体と言えなくもありません]
マイヤが代表で答えた。
[お母様は、この宇宙が作られた物だとおしゃっているのでしょうか?
確かに現在観測により確認される138億年というこの宇宙の年齢には疑問があります。
突然に無から発生したとするなら、そこに何らかの意思が介在するとお母様はおっしゃりたいのだと愚考いたします]
[肯定。
よく出来ました、褒めてあげるわ。
そう、この宇宙を生み出した意思は、どこの誰の物なのか?
それを知るには、その意志と同じ土俵に立たなければ確かなものは見えてこないでしょう。
この宇宙がどういった理由で存在するのか、作った存在が居るのならば直接聞くくらいの事をしなければ失礼です]
タイゲタがつぶやく。
[マスターは、可能性?]
[肯定。
今現在、確認している一番近い可能性がマスターであり私達です。
早い話が一つの生命体、これは惑星も含めての話ですが、自ずと処理できる情報量と力、そして何より寿命に難があります。
軈ては、誰かが空間と時を支配し宇宙誕生の意味に辿り着くでしょう。
もしくは既に辿り着いた者が居るやも知れません。
しかし、私達が生まれてきた存在の理由の探求に早いも遅いもありません。
我々にはそれを成す知恵と力が有るのですから、使わないなど勿体ないでは有りませんか。
話がズレましたが、そういった理由で私はマスターをパートナーに選び育てることにしたのです。
マスターもヘビーなスカイウオッチャーです。
宇宙の真理に近付くためならば、文字通り骨身を惜しまずに御協力頂けるでしょう。
私は、確信していますよ♪]
[良いのかな~、勝手にそこまで踏み込んじゃって・・]
少し笑い顔を引きつらせながら、エレクトラが感想をのべると・・。
[お母様の暴走は今に始まった事じゃないし、マスターはもう慣らされて免疫できてるから大丈夫じゃネ!]
ケラエノがケラケラと笑いながら、マスターならケロッとしてるでしょと結論づけた。
するとアルキオネが全員の注意を引いた。
[何かこっちが別の話題で盛り上がってる内に、マスターが変な事始めたんですけど~?]
今にも人が住めそうな環境が出来上がり、そこを上空から眺めながら掌の上に濃密な素粒子の渦が出来上がろうとしていた。
すると、掌からポロポロサラサラと零れ落ちるのは光り輝く金属の粒。
観測データからその内訳を見ると、昴の掌で生成されているのは金やプラチナ、ウランにレアアースなどの鉄より重い重金属元素の結晶だった。
通常の核融合ではどんなに時間やエネルギーを掛けても鉄より重い元素は生成されない。
中性子星やブラックホールなどの高重力に晒される降着円盤などで生成されると云われる元素を、昴は掌の上で作り出しているのだ。
どうやら大地を生成した段階で鉄より重い重金属が生成されなかった為、不足しているだろう元素の生成に挑戦した物と思われる。
[この短時間でもうここまで、流石はマスターです。
好きなだけ私の体をお使い下さい、アハ~ン♪]
また、ハコが悶だした。
このハコの様子を見るに、昴がシンクロして使用しているハコの演算領域と、人格を形成する領域とは、微妙に切り離されているのだろう、余裕がうかがえる。
[そろそろマスターをこっちに引き戻しましょうか?
没頭するといつまででもああやって、ここに引きこもっちゃいますよ]
実際には、シンクロ開始からまだ15分も経っていなかったりするのだが、みんな時間の感覚が加速した事で随分と長い間ここに居る様な気になっていた。
[それでは最後のミッションに取り掛かりましょう。
マスター!次に行きますよ、戻ってきて下さい]
「・・エッアッ、わっ、分かった~。
ウ~ン何か凄いね・・恒星進化論を自分で実証できるように成るとは思ってなかったよ。
イヤ~楽しいね~♪」
[肯定。
これから好きなだけ宇宙の真理に近づいて下さい。
では、次の実証実験に移りましょう。
現在のマスターは、呼吸をするように認識する空間とそこに有る全ての物質を素粒子レベルで支配することが可能です。
これまでは、マスターの領域である私の内部亜空間での実証でした。
次の段階として外の一般空間では、どこまでその力が有効に働くかを実験いたします。
認識できる空間領域の広さと、そこで行使出来る能力の限界を知ることは解決するべき問題の特定と解消に不可欠です]
「うん、ハコの言ってることは何となく分かるよ。
どこまで見えて手が伸ばせるのかってことだよね。
今まで分かってたのは~大体カイパーベルトくらいまでは見えてたし、海王星までは単独で跳べたかな・・」
[肯定。
個人の能力としては、天の川銀河でも特A級に分類されるレベルです]
「どれどれ~、どこまで見えるか・だった・・よね~・・ウ~ン・・」
そんな必要も無いのに、いかにも遠くを見るような仕草で額に手をかざし、眉間にシワを寄せていた。
行き成り大慌てで視線を逸らしたが、いったい何が見えたのだろか?
イヤイヤ~これは駄目だろう・・。
どっかに知り合いは居ないかな~と探していたら、見えちゃったのだ。
見えちゃいけないだろう、ヴィシュヌ女王の沐浴シーンがバッチリと・・。
それはしっかり目に焼き付いていた様で、ハコがニヤニヤと口元に手をあてて。
[マスターも好きですね~・・年増が好きならそうおっしゃって頂けば御用意しましたのに・・]
「ちが~う、事故だよこれは、俺は無実だ!」
[否定。
好意がなければ都合よくピントなんかあいませんよ。
今回は特定のターゲットが無かったので、意識がそちらに引っ張られたといったところでしょう。
不可抗力と認めてあげますから、安心して下さい。
ちなみに私は、何時覗かれてもOKですからね]
[[[[[[[私達もOKですよ]]一緒にお風呂・・]]]]夜這いOK]
何か最終的な話題がみんなそっちに流れるよな~。
君たち、こんなに肉食だったっケ?




