3-4-09 完成!恒星間万能移民船ハコ1 23/3/30
20230330 加筆修正
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太陽系に帰ってきた俺達は、呆気ないほどすんなりと受け入れられた。
イヤ~今更なので碌に隠蔽もしないでさ、言い訳にしかならないのかもしれないけどそれなりの数の艦隊で堂々と帰って来ちゃったのにである、地球の目の前である月へと……。
これが以前の地球なら、世界中が上を下へとてんやわんやの大騒ぎになってそうなところなんだけど実際にはそうは成らなかったのだ。
地球上でバチバチと火花を散らせていた悪意のようなものが、めっきりと薄れて別の星かと見間違うばかりだったのには驚いたのだけれど。
確かにけっして無くなった訳ではないけれど、地球全体を覆っていたドス黒い霞が晴れているように見えたのは気の所為だけじゃないと思う。
聞けば俺の居ない間に、オーディンやゼウス達が人類の意識改革(という名の洗脳工作)を率先して行ってくれていたらしい。
お疲れ様と云っておこう、本当に対応が面倒くさくなっていたので助かった。
人類はこの後、宇宙に出て往く事になるのに先が思いやられていたのである。
どうなる事かと心配したところで成るようにしか成らないよねって、半ば諦めてもいたのだけどんね。
最後には逃げ出すつもりでいたし、面倒は見きれないってのが本音では有ったんだよ。
ただ、嘗て長きに亘る放浪を続けてやっとこさ地球にたどり着いたオーディン達の話を聞いていると、簡単に故郷の星を捨てるのも考え物なのかと思ってしまうのでありますよ。
この時は、故郷に帰ってきて気が抜けていた、という事も在るでしょう。
まさかこんな事になるなんて・・俺は予想もしていなかったのである。
◆
俺は、大きな勘違いをしていたようです。
ハコは、もうとっくに完成している物と思いこんでいたのでした。
だって銀河中央に来る前に完成させて来るって言ってたし、あれだけ自由に動き回ってたんだもん。
[マスター、やっと私の最後の準備が整いました。仕上げをお願いいたします。私をマスター色に染め上げて頂きますね♪]
「エッ!」
[マスターも15歳に成られましたので、私との完全なシンクロ作業を行います。シンクロと同時にマスターの封印は全て開放されます。そして私は、完全にマスターの物となるのです♪ 5年間の長かった婚約期間は終わりを告げ、完全なパートナーと成り、未来永劫の時を共に生きるのです]
「封印が開放されるってどういう事? 俺、まだ何か封印されてたの?」
[現在のマスターは、その潜在意識の1割も使えないようにリミッターが施されています。自力で一度リミッターを外されましたが、あれでも想定の3割ほどです。その後の一族のアソシエーションにより開放できる潜在能力の敷居が下がってはいましたが、完全開放までにはほど遠いレベルですよ。それにいくら強化されたとはいえ、その小さな体の脳では自分の力に耐えられずに弾け飛んでしまう事が分かっておりました。そこで、私とシンクロすることでその全能力を使用可能にする事が可能となります。元より運残技牙のコアシステムは、一族の能力を拡張開放する為の道具として開発されました。途中からコアの性能アップや管制AIの導入により各種の転用が進んだことで、本来の主旨がネジ曲がり、一族の個の能力の拡張開放という存在意義そのものが忘れ去られていったのです。私達コアが便利に成り過ぎたために起こった弊害ですね。元々個体数の少なかった運残技牙一族は、自分達の代わりに何でもしてくれる管制AI達の存在により、本来の使用目的を忘れていったのです]
「エエ~、それでイイじゃん。今のままでも不便じゃないし……」
[否定。それではいけないのです。(私の願望の為にも)私と一つと成り、マスターには文字通り神に成って頂きます。拒否権は有りませんので御容赦ください。では、シスターズはマスターを私のコア中枢へ、無駄な抵抗は出来ませんからご安心下さい]
[[[[[[了解致しました]ハーイ]痛くないですよ♪]腐腐腐w]ヤットですか……]待ち草臥れましたよ、まったく♪]
「エッ! うううっ嘘っ体が動かない! 安心なんか出来る訳無いいだろう~、あのグサッと刺されたのはまだ覚えてるぞ。オイッ!やめろ、お前らどこ触ってんだ~、そこは駄目~!」
それからはもう抵抗も虚しく、ハコ本体のコア中枢へとドナドナされて行ったのであった。
そう云えばハコとの付き合いはそれなりだけど、ここに入るのは初めてだったりするんだよね。
[肯定。私の中に入る最初の殿方はマスターが最初です。当たり前では有りませんか、生涯のパートナーと成るのですから♪]
[ちなみに私達もこうして御母様の中に入るのは、これが初めてだったりするんですよ。私達シスターズの生まれ故郷ですから、もともと情報は持っていますけれど物理的にお邪魔するのは初めてです]
[肯定。そんなのは当たり前です! マスターより先に貴方達を招くはずが有りません]
[これは、ご馳走様でした・・マスター、後で私達の中枢へもお招きしますね♪]
[[[[[[お招きしますね!]]]]]]
「・・ああっ、うん・・って、そうじゃないだろ~~・・」
俺はこの後どうなってしまうのだろうか……、誰か助けて!




