3-3-05 15歳、激動の年 23/1/20
20230120 加筆修正
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2005年の春
この年に起こった日本の教育環境の激変は、そのまま世界中に広がり浸透していった。
昨年の異星人の来訪に始まり、攻撃的な宇宙生物の侵略、軌道エレベーターの建設が及ぼした影響は、もう地球は宇宙に一人ぼっちではないと云うことを強く印象づける事となった。
これまで遅々として進まなかった宇宙開発は、強制的な終わりを告げる事になり、問答無用で宇宙外交時代が始まる事になったのだ。
もうこれまでの様に狭い地球の内側で、主導権争いなどしている場合では無くなったのだ。
”井の中の蛙大海を知らず”とはよく言ったもので、外宇宙の星間国家や巨大星間組織の攻防などが知らされる事になった世界各国の代表や政治家達、そろって悲鳴を上げる事になったのだった。
宇宙海賊や他星系の犯罪組織一つをとっても、今の地球の国家戦力ではまともな防御もままならず、捕縛や逮捕など夢のまた夢の話である事など現実が知らされるに至って、それまで鼻息の荒かった軍部も静かにならざるおえなかった。
そしてここに、止めが刺されることになる。
今までは、バクーンが太陽系は自分の縄張りと睨みを効かせていたから無事だったけれど、『もうそろそろ隠居するから後はよろしくね!』と、建設工事が進められている軌道エレベーター開通のお祝いメッセージでブチ挙げたから大騒ぎ。
追い打ちを掛けるように、太陽系に現れた銀色に輝く直径300kmの宇宙船は、その巨体を2つ目の月のように空に輝かせている。
ここに至って、国連も既に自分たちの対応できる範疇を超えているとして白旗を挙げる事となり、消滅するかに思われたが名を変えて生き残っていた。
現在、地球連邦政府の組織発足に向けて、各国首脳が喧々囂々の駆け引きを繰り広げている中、他の銀河からのエグソダスに起因する侵略計画やその顛末の一部が伝えられると、なんとか主導権を握りたい地球連邦政府準備委員会という名の元国連が、日本とメガフロートに対して煩く接触して来るようになった。
無視されているのは、お約束である。
英国はこれまでどおりの距離感で皇室との関係を継続し、かたや合衆国は今まで通り日本の同盟国を気取って今まで以上にフレンドリーに接している。
軌道エレベーターが完成した暁には、共同でスペースコロニー作ろうよと話を持ちかけているらしいが、日本政府にそれを言われても困るよとスルーしているようだ。
先に説明された元国連やその他の国々があまりにも煩いので、日本政府が発表した公式見解は、次のような内容だった。
『現在の我々を取り巻く地球外の存在への折衝や外交において、日本政府は一切関わっておりません。不確かな情報ですが一部日本にある一族企業が繋がりを持っているらしい事は認識しております。何分、不確かな情報ですので政府としても保証はできかねます。ですから、詳しい内容等については日本政府の預かり知らない案件であるとだけお知らせ致します』と、公式に発表されたのだ。
この発表を受け、全世界の国家及び企業の他に一般の世論が渦中のある企業、メガフロートのスポンサー企業である(株)タウルス、そしてそれを創設した天河一家に注目するのは、当然の帰結と言っていい終着点だった。
今年15歳になる御曹司はメガフロートに所属し学園に在籍している。
その一投足は、度々世界中から注目を集める事で知らぬ者が居ない天河一家の一粒種。
バチカンも認める生きる聖人であり、既に地球一といってよいほどの技術者であり天才である。
非公式ながら、メガフロートに留学しているらしい他星系の王女や王族複数と婚約しているという不確かな情報も聞こえてくる。
既に地球は疎か太陽系さえも飛び出して天の川銀河で、その存在が取り沙汰されている大人物だが、その真実を地球で詳しく知る者は皆無に等しかった。
◆
「何で俺は、秋葉原なんかに来てるんだろう?」
[肯定。私がお答えしましょう、Dr.アンの付添です。現状であの方を止められるのがマスターしか居なかったと云う、至極簡単な結論に達するのに、そう時間は掛かりませんでした]
「何でそこにエンリルも混ざってるのさ? それにあの黒い取り巻き達は、いったい何なのさ?」
[Dr.アンは、最後に地球に下りたのが1万5千年ほど前だそうなんですが、当時エンリル様も一緒に地球へ下りていたそうですよ。随分と様変わりした地上を直接ご覧になりたいとそうおっしゃっていました]
「百歩譲って日本はいいとしても、よりにもよって秋葉原に団体では無いんじゃないかな……ちょっと周りを見て見なよ! この人集りと行列……どうすんのさ、これ……」
[肯定。マスターが心配するほどの事は無いのでは有りませんか? ほとんどのギャラリーがブラックナースをコスプレイヤーの団体だと認識している様ですし、何方かと云いますとリアルメイド仕様の私達、プレアデスシスターズの方が注目を集めているようですよ]
「えっ、なんで?」
[ハァ~…忘れたのですか? 私達は、この格好で日々ゴミ回収に日本中を走り回っております。下手な芸能人やアイドルなどよりも知名度は高いと認識しておりましたが……]
「ああっ、それを忘れてた! しばらく留守にしてたからすっかり忘れてたよ」
『いや~儂らがアンドロメダをフラフラとしている間に、生き残った子孫は実験惑星でなんて~進化をしちまったんだい? まあ、当初の予想の斜め上で儂は凄く楽しくてビックリだよ♪』
[そうよね~、これも文化っていうのかしら~?]
「漫画やアニメは、日本の誇る立派な文化だと思いますよ。今じゃ、現実の方がビックリな状況になってますけどね」
『全く、これも一族の血の為せる業なのかね~? そう言えば昴ンところの爺さん達の土産を渡した時の過激な反応……あんまりにも予想道り過ぎで笑っちまったよ♪』
「確かにあの土産には、俺も興奮しましたよ! リアル人型機動兵器、それもほぼ完成していてブラッシュアップが済んでいる現物ですからね。師匠たちに言わせると、お宝の塊ですよ♪ 彼らは、リバースエンジニアリングの鬼ですからね、教えられた技術を”ハイ、そうですか”と受け取るよりも、現物見せて”どうだ~凄いだろう”って言ったほうが燃えるんですよね。この後、どんな魔改造品が出来上がってくるのかが楽しみですけどね~」
[あなた達のその捻れた思考回路と言うか~負けん気の強さは、何処から来るのかしらね~?]
『あの頃に昴達みたいなのがもう少し居たらウンサンギガの運命も変わっていたかもしれんが、今さら過ぎた事をとやかく言ってもどうにもならんな。これからの時代を作るのはお主達じゃからな、俺等は、燃料だけ投下して高みの見物と洒落込もうかのう♪ それで、今後の老後の世話は頼んだぞ、49代目♪』
「えっ、そこ俺が面倒見るんですか? だいたい面倒見る必要無いでしょうが、あんたら!」
『そんな事はない! 間違いなく起こるだろう面倒事の後始末はお主の仕事だ。後の始末は任せた♪』
[そうよ~、昴くん。私達の楽しい老後のために頑張ってね♪]
「……コイツラ~……俺は、好きな事がしたいんだ! 勝手にするからな、お前らの面倒なんて見ね~からな!」
[あら~そんな事を云っていいのかいら~……]
『そうじゃ、われらには現地球人の常識など通用せんからな。後は、察しろと云うところじゃがな♪』
「ハァ~……、何でこんなのが現代に生き残ってるんだ!」
[否定。こんなのだから生き残っているのでは? 『憎まれっ子、世に憚る』とも言いますからね]
『腐腐腐っ、お主には先にご愁傷さまとだけ云っておこう。さあ、未踏の境地へ征くぞ! エンリル。者共、儂に着いて参れ♪』
[ハイハイ♪]
「「「「「「「Oh~♪」」」」」」」
[マスター、諦めるのも人生ですよ……]
「ノォ~~!!!」




