第五十一話 許可
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「皆さん揃いましたので、これより生徒会会議を始めたいと思います」
生徒会の司会進行役はもちろんこの人、クロームさんだ。
「まずは昨日の学園周辺報告からですが、異常はないそうです」
生徒会の活動には、放課後を使い、学園周辺に異常はないかを調べる仕事がある。
これは、俺たちが入学した日から開始された活動だそうだ。
そもそも学園周辺には、草原で魔物は生息していない。
が、【ヤタの森】のように、他の場所に生息している魔物が、学園周辺に移動してくる可能性もある。
それを早めに対処するために、生徒会は毎日、学園周辺を調べているのだ。
未だに魔物が出現したことはないが……
「次に……前にファルース様が提案してくださった、あの件の返事が返ってきました」
『あの件』と聞いて、生徒会のメンバーが息を飲んだ。
トピアリーさんなんて、誰にかわからないが、祈りを捧げている。
(そんなに凄いことなのか……)
『あの件』に俺の期待が高まる。
「最大30名なら大丈夫だそうです」
クロームさんがそう言った瞬間、トピアリーさんが勢いよく立ち上がり……
「本当ですか!」
と、声を上げた。目のキラキラ感が半端ない。
「私も良かったですわ……本当に……」
会長さんの目がギラッと光り、一瞬だけ俺を見て微笑んだ気がした。
「30名でしたらファルース家で、館の準備をしておきますわ。あと……生徒会のメンバーは決定として……後の14名を決めないといけませんわね」
どこに行くか知らないが、俺の参加が決定している。
「10日後に、迎えが来るそうです。その間にすることが二つあります。まずは、ファルース様の言うとうり、残り最大14名の生徒を選ばなければいけません」
(10日後って! そんな急で人が集まるのか? それに授業どうするんだよ!?)
10日後は、休みでも何でもない、普通に授業があっている。
流石に休んでも大丈夫なような許可をシルドさんから取っていると思うけど……
「二つ目は、学園長であるシルド様に、許可を貰わなければいけません」
「え!? 許可もらってないの!」
驚きすぎて、思わず声に出してしまった。
「そもそも、リフホーネ遠征訓練自体を学園長に話してませんもの」
どうやら『あの件』は『リフホーネ遠征訓練』のことのようだ。
【リフホーネ遠征訓練】では、リフホーネの魔法騎士団の団員に魔法や魔物との戦い方を教わることができるらしい。
「でも大丈夫ですわよ。普通の学園長なら、今更ダメだとは言えませんもの」
会長さんは、『普通の』を強調して言った。
学園側(生徒会)が頼んで許可を貰った後に断るのは、リフホーネ側に失礼になるし、学園のイメージも下がる。
だから、普通の学園長なら、許可を出すしかなくなるのだ。
しかし……ツバサ学園の学園長であるシルドさんは……
(普通じゃない……変人だ。常識は通用しない……と、思う)
そんなことを思っていると、隣にいる人に話しかけられた。
「酷いいいようですねソラ君。これでも私は、世界一の魔法使いですよ? 変人ではなく天才です。確かに私はリフホーネの国王である、ミストールさんと知り合いですから、そうゆう意味では、常識は通用しませんが……」
「また俺の顔に書いて…………えっ!? 何でシルドさんがいるんですか!? 」
いつの間にかシルドさんが、俺の横に立っていた。
「何でって……私は、リフホーネ遠征訓練の許可を出しに来たんですよ。私は普通の学園長ですから」
シルドさんの発言にみんなが驚く。
みんなは心の中で、こう思っているんだろう『なんで知ってるんだよ』
と、
「許可は出しますが、一つ忠告を……ソラ君、何か起こるかもしれませんし、起こらないかもしれない。けれど、気を付けて下さい。私は仕事が残っていますので、これで失礼します。生徒会の皆さんも気を付けて……」
シルドさんはそう言い残し、生徒会室から出て行った。
(『気を付けて下さい』か……)
【リフホーネ遠征訓練】なんだから、リフホーネで訓練するだけ、強化合宿みたいなものだろう。
なにも気を付ける事は無いはずだ。




