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一人だけ別の場所に召喚された勇者(仮)  作者: 鳩ゆうら
第2章 学園生活開始
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第三十ニ話 模擬戦

 この学園の模擬戦とは、魔法で作られた魔物を倒していき、時間内に多くの魔物を倒してポイントの高い方が勝ちというものだ。人同士が戦うのではない。


『模擬戦ルール書』に書いてあったルールの中で重要そうだったのは、この四つだった。

 一,武器や魔法は自由に使って良いが魔道具の持ち込みは禁止

 二,相手の行動を阻害してはならない

 三,50分後に終了を告げる合図がなる

 四,模擬魔物一体につき、1ポイントが与えられる


 そして今日、多くの観客が見守る中、俺は生徒会長であるマリナ・ファルースさんと模擬戦をする事になっている。


 俺と会長さんは、ドーム状の建物の入場口で模擬戦の開始の合図を待っている。


(わたくし)に挑んだことを後悔させてあげますわ」

「模擬戦を挑んできたのは……会長さんの方でしたよね?」


 会長さんは一瞬だけ怯んだが……


「貴方が上級魔法を使えるかを確認するために始めた模擬戦ですが、(わたくし)が勝たせてもらいますわ」


(無視かい! 大体、模擬戦をする意味があるのか?)


 俺は今、模擬戦なんかせずに魔法訓練用の教室で上級魔法を見せたら良かったのではと思っている。

 何故わざわざ模擬戦にしたのかが分からない。


 マリナ・ファルースさんは、少し抜けているところがあるのだろうか?


そんな事を考えていると会長さんが、


「そろそろ模擬戦が始まりますわよ」




 俺たちはスタートラインに並ぶ、目の前には森が広がっていた。先程、俺と会長さんの二人がシルドさんから聞いた話では、この森は『ヤタの森』がモデルだそうで、模擬魔物もヤタの森に生息している魔物らしい。シルドさんがルーブビレに来ていた理由も、ヤタの森の設定を作るためだったそうだ。


 模擬戦の始まりの合図が、会場内になり響いた瞬間


「アクアフォース」


 アクアフォースを全身に掛けて、森の中を走り出した。


「えっ!?……ちょと……待ちな……」


 後ろから、会長さんの声が聞こえた気がしたが、観客席の生徒たちの歓声により、よく聞こえなかった。


移動していると、5体の魔物の群れを見つけた。


「こいつら……本当に模擬魔物か?」


 目の前にいる うさぎの魔物(名前を忘れた)は、ヤタの森で見たことがあるが、本物の魔物にしか見えない。


 俺は試しに魔法ではなく、長剣を使って、一体の魔物を倒してみた。すると、斬られた魔物は光となって跡形もなく消えてしまった。


「凄いなこの技術は……」


 斬った感覚は少し違うが、動きや動作は、本物の魔物と同じに見える。木はどうだろうと思い斬ってみると、本物の木だった。

 風属性の上級魔法に地面から木を生やす魔法がある。その魔法を使ったのだろう。


「スクリューストーム」


 俺が魔法を唱えた瞬間、竜巻のようなものが現れて、もの凄い勢いで回転しながら、魔物を襲った。


 うさぎ魔物は一体も残らずに光となって消え、倒れた木だけが残った。


 観客席の生徒たちから歓声が上がる。俺と会長さんの行動は、魔法で中継されているのだ。


「次行くか」


 俺はアクアフォースを使いながら移動して、魔物を見つけて倒すのを繰り返した。




「あと15分くらいか……」


 そう言いながら、魔物を探していると……


『チャンスタイム! 残り時間にこの魔物にとどめを刺した方に……なっ! なんと! 1000体分のポイントを差し上げます。初めての試みですので後で感想を聞かせてください』


何処からか、シルドさんの声が聞こえてきた。


「今までのポイントは、何だったんだよ!」


 1000体分のポイントがある魔物を倒せたら、50体ぐらいの魔物を倒してきた意味が無くなる。


『この魔物は、私が目で見た情報と友人から聞いた話で構成しています。本物とはあるものが再現できなくて、強さが全然違うでしょうが、私的にはよくできていると思います。それでは、チャンスタイム始まりです』


 シルドさんのチャンスタイム始まりの合図と同時に聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。

 観客席から悲鳴が上がる


「まさか!」


 俺は鳴き声のした方に急いで向かう。そこには、雷を纏っていないフーライラの姿があった。

 再現できなかったのは、纏っている雷のことだったのだ。


 「カナタ・ソラ! こっこの魔物は、貴方に任せますわ」


 いつの間にか隣には、会長さんがいた。よく見ると、フーライラを見て足が震えている。

 ルーブビレであった事は、ツバサ学園に知らない人はいないぐらい有名になっている。

 雷を纏っていなくても、見た感じはフーライラだ。会長さんでも怖いのだろう。


「いいんですか? 俺が倒しちゃいますけど?」

「ゆっ譲ってあげますわ……先輩として」


 正直このフーライラは、見た目だけだと思うのだが……


「スパイラル・フレイム」


 フーライラが炎の渦に飲み込まれる。そして直ぐに光となって消えた。


「……………終わり!?」


 様子見として放った魔法によってフーライラは、消えてしまった。


 呆然と立ち尽くす俺と会長さん。観客席もシーンとなっていた。




結局模擬戦は、俺の大勝利で終わったのだか……


「ソラ君酷いじゃないですか。盛り上がるだろうと思ってせっかく準備した模擬フーライラを一発の魔法で倒すなんて、ソラ君を驚かすためにわざわざ出したんですよ。なのに……」


 話が長くなりそうだったのでシルドさんが話している途中に割り込む……


「俺は悪くないですよ。それに、大体盛り上がるどころか、怖がっていたそうじゃないですか!」

「……………………………」


 リラたちに聞いた話では、泣いていた生徒もいたらしい。

 初お披露目となった模擬フーライラの出番は、その日のうちに永遠に無くなった。

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