第二十二話 シルドさん
「やぁ二人とも、あの時は助かったよ。あのままだったら、私は死んでいたかもしれない。それにしても、ペルスさんは凄いね。私の怪我なんて一瞬で治ったよ。しかも今年は、娘さんが我が学園に受験するらしいからね。楽しみで仕方がないよ。それに、勇者の一人も受験が決まっているし、校長として嬉しい限りだよ。あっ! 自己紹介がまだだったね。私の名前は、シルド・レイン。今日は、この前のお礼と勧誘に来たんだよ」
手をしきりに動かしながら、シルドさんは、自分のことを話す。
俺とリラはというと、よく舌の回るシルドさんに、圧倒されていた。こんなに喋る人だったのかと……
俺たちは、それぞれ自己紹介をした。
「ソラ君にリーラさんだね。改めて、あの時はありがとう。ジーラちゃんから聞いてるよ。短期間で、上級魔法を、いくつも扱えるようになったらしいね。後で思い出したんだけど、ソラ君が持っていた剣は、聖剣アルダートだよね。聖剣が扱えるってことは、勇者ツバサの血縁者ってことかな? 確かにリフホーネで見た、勇者ツバサの肖像画にも似ているよ」
俺が、『聖剣アルダート』のことは秘密にしてくださいと、言おうと口を開こうとしたら……
「誰にも言わないから安心してよ。これでも、口は固いほうだし。遠目から見たから、よく分からなかったけど、フーライラを上空で倒した、あの輝きの正体もソラ君だね」
内緒にしてくれるそうだが、口が硬そうには見えない。
それよりシルドさんは、ジーラさんのことを、『ちゃん』付けして呼んだのだ。そっちの方が気になる。
俺はジーラさんの方を向いた。
「私も、誰にも言わないから大丈夫よ。あと……あの人はお喋りだけれど口は固いわ」
シルドさんがジーラさんのことを、『ちゃん』付けしたから、ジーラさんを見たのに、ジーラさんは、『私にも内緒にしてくれ』と、言う風に解釈したようだ。
どうやら、ジーラさんとシルドさんは知り合いのようだ。
「シルドさん。俺たちを勧誘って? 」
シルドさんは、手をポンと鳴らし……
「忘れるところだったよ。実は……二人には、我が学園に入学して欲しいんだ。学園には、多くの上級魔法が扱える先生や武器の扱いに長けている先生がいるから、ソラ君たちにはオススメだよ」
俺もいろいろな上級魔法を覚えたり、力任せではない剣技も鍛えたいが……
「こんな大変な時に、学園に通っても良いんでしょうか? 」
現在マフカースは、新魔王軍によって被害が増えている状況で、手に負えないから勇者召喚を行ったのに、そんな中で、強くなる為とは言っても、学園に通うのは抵抗がある。俺の学園もとい学校は、遊ぶイメージしかないからだ。
「新魔王軍のことなら、大丈夫だと思うよ。フーライラが倒された次の日から、新魔王軍の攻撃がピタリと止まったそうだから。勇者が召喚されて、焦った魔王軍が先制攻撃として、フーライラをこの街を襲わせたのでしょうが……」
しかし、そのフーライラは俺が倒した。魔王軍は、まさかフーライラが、倒されるとは思っていなかっただろう。
これにより、新魔王軍は、迂闊に行動することができなくなった。
今回現れたフーライラが、700年前と同一魔物だとは知らないようだが、前から思っていたが、どうやって、そんなに早く他の街や国と連絡を取っているのだろうか?
俺はジーラさんに聞いてみた。
「情報の交換にはこれを使っているのよ」
ジーラさんがポケットから出したのは、パカパカ式の携帯だった。ジーラさんによるとこれは、勇者ツバサが作ったと言われている魔道具で、魔道具名は、『ケータイ』だ。『ケータイ』は、各街や国のギルドマスターが一つずつ持っているそうだ。
「それで……ソラ君どうですか? 生徒もソラ君と同じぐらいの年ですよ。それに、勇者の一人も通いますよ。お二人だったら試験も簡単だと思いますし、特待生なら、入学金と授業料が免除されます。リラさんは乗り気だよ」
俺はリラを見ると……
「ソラ! 私……もっと強くなりたい! 行ってみようよ!」
「シルドさん。俺……試験を受けます」
俺は学園に行くことを決めた。
「シルドさん、学園の名前ってなんて言うんですか? 」
これから通うかもしれない、学園の名前ぐらいは、知っておきたいと思い、シルドさんに聞いたのだが……
「それは……まぁいかいじゃないですか、着いた時のお楽しみですよ……」
(シルドさんの言葉数が少ない!? )
俺は嫌な予感がした。
「私だって! 言葉数くらい、少ない事もありますよ!」
(心を読まれた!? )
「ソラ……顔に出てるよ。今『心を読まれたとか!?』って思ったでしょ? 」
「えっ!? 」
俺はそんなに分かりやすい顔をしているのか、周りを見ると、ジーラさんとシルドさんが頷いた。俺は、バカで思っている事が、顔に出るらしい。
(まぁ、別に良いけどね)
「良くないよ」




