第十三話 思わぬ収穫
ペルスさんから【女神の指輪】を受け取ってから一週間が過ぎた。
俺たちは、今も同じ宿の同じ部屋に泊まっている。リラのお陰で、だいぶマフカースの文字を読める様になっていたが、未だにリラの隣で寝るのは慣れない。
それと、俺以外の人が俺が王族の血を持っている事や勇者であることを他の人に話してはいけないという決まりができた。
俺の存在はマフカースを混乱させるらしい。
魔法の方は、火属性、風属性、水属性の中級魔法を全般、上級魔法を少しだけ扱える様になった。
リラは、水属性魔法の中級を少しと、風属性魔法の中級・上級魔法を全般扱える様になっていた。
リラは【風の巫女】だけあって、風属性の魔法を扱える様になるのは、俺より早い。
俺たちは今日も酒場にある訓練場で訓練を受けていた。
「もうあなたたち二人に教えることは何もないわ。まさか、上級魔法も扱える様になるとはね。その才能が羨ましいくらいよ」
上級魔法を扱える様になるのには、少し手こずった。
が、俺たちは、ジーラさんが扱える魔法をほとんど扱える様になっている。
「ジーラさんが親切に教えてくれたお陰ですよ」
俺は本当に、ジーラさんに感謝している。
ジーラさんのお陰で、俺は確実に強くなることができたからだ。
「ありがとうね。そう思ってくれているなら、私も魔法を教えた甲斐があったわ。明日から、ソラくんたちはどうするつもりなの?」
「取り敢えず、一週間ぐらいギルドのクエストを受けてみようと思います」
俺たちは、冒険者登録をしたのに、未だにクエストを一つも受けた事がない。
だから、マーシさんから貰ったお金も残り僅かしかないのだ。旅をするにはお金が必要だ。
しかし、俺たちにはそのお金がない。
だから、一週間の間はこの街でクエストを受けようと思っている。
「そうね。ソラくんたちならそろそろクエストを受けても大丈夫よ。って言いたいところだけど、二人の実力だけ見たらやっとってくらいなのよね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日、俺とリラはクエストを受けるためにギルドに向かう。
ギルドでクエストを受けるには、クエストボードから自分のランクにあった、クエストを選び、受付嬢のいるクエストカウンターまで持っていけばいい。
なので俺たちは、ギルドに着いた後、クエストボードのある場所に向かった。
「えっと……俺たちが受けれるクエストは」
クエストボードには、沢山のクエスト依頼書が貼ってあった。
その中から、初級冒険者(ランク1〜10)でも受ける事ができるクエストを探す。
受けれるクエストは、薬草などの植物を集める採取系と【ヤタの森】の魔物の討伐だけだ。
ヤタの森とは、ルーブビレから出て南西の方角にある森で、ヤトの森は初級冒険者でも倒す事ができるほど弱い魔物が生息している事で有名な森だと前にジーラさんに聞いた。
「リラこれで良いか?」
俺は一つのクエスト依頼書を取って渡した。
クエスト
・ヤトの森に生息している魔物の十匹の討伐
報酬 銀貨3枚
・受注条件 レベル1〜10の初級冒険者
依頼主 ギルド
クエストの受注条件はギルドの職員と依頼主が相談して決められている。
このクエストは、ギルドが初級冒険者にもクエストの経験を積ませるために作ったものだ。
だから、クエストボードには同じ内容のクエストが、いくつか貼ってある。
「私もそのクエストで良いと思うよ」
俺とリラは、クエスト依頼書を持って、ギルドカウンターに向かう。
ギルドカウンターには、これぞ冒険者! という見た目の人が沢山並んでいた
(順番が回ってくるまで長そうだなぁ)
ギルドの受付嬢は全部で4人。みんな忙しそうだった。
俺たちは最後尾に並んで順番を待つ。
並んでいる間に俺は、自分の格好と他の冒険者の格好を比べていた。
冒険者たちは防具を身に着けていたり、ローブを身に着けているのに対して、俺が着ているのは、ロナテーナで貰った普通の服だった。
俺だけ場違いな場所にいるみたいだ。
(お金に余裕ができたら防具も買わないとな)
リラは防具でもローブでも無いが、狩りに適した、動きやすそうな格好をしていた。
「そう言えば、リラって弓を持って無いの?」
ロナテーナのエルフの人たちは、弓矢を背負っていた。
この世界ではエルフの武器は弓矢らしいのだが、リラは弓矢を持っていない。
リラは困った顔になる。
「えっとね……実は……その……私エルフなのに……弓矢を扱うのが下手でね……だっだから私は弓矢を持っていないの!」
「えっ! ……。えーーー!?」
俺の声がギルド内に響く、ギルドの中にいた冒険者の視線が俺に集まった。
「すっすいません! 大きな声を出してしまって!」
俺は急いで頭を下げて謝る。
「ソラ驚きすぎ」
「すまん」
俺たちの順番が来たのは意外にも早かった。
「お久しぶりです」
「お久しぶりですね、ソラさん、リラさん。冒険者登録をした時以来ですね」
俺はフランさんにクエスト依頼書を渡した。
「ヤトの森で魔物の討伐ですね」
そう言ってフランさんは机の引き出しから、カードを2枚取り出して、俺とリラに渡す。
「お二人は討伐クエストが初めてなのでこれを差し上げます。これは討伐したモンスターの名前が記録される【討伐カード】です。クエストの対象ではない魔物でも危険度が高い魔物でしたら討伐報酬が貰うことができます。それではギルドカードの時と同様に魔力を流してください」
俺たちは討伐カードに魔力を流した。
すると文字が浮かび上がる。
討伐カード
ソラ・カナタ 初級冒険者
魔物討伐歴
エートス 危険ランクA 報酬 未
討伐カード
リーラ・レイシャン 初級冒険者
魔物討伐歴
なし
と書かれていた。フランさんは俺の討伐カードを見て驚いた顔をする。
「流石ソラさんですね。既に危険ランクAの魔物を討伐しているなんて。報酬を渡す準備をするので、討伐カードを一旦預かってもよろしいでしょうか?」
(えっ! 報酬貰えるの!)
俺は討伐カードをフランさんに渡した。フランさんが討伐カードを何かにかざした後、フランさんは俺に討伐カードを返す。
討伐カード
ソラ・カナタ 初級冒険者
魔物討伐歴
エートス 危険ランクA 報酬 完
報酬が未から完に変わっていた。
「ソラさん。これが討伐報酬です」
フランさんは小さな袋を俺に渡した。中には大金貨が5枚入っていた。
「こっこんなに貰っていいんですか!」
大金貨5枚は日本円で500万の価値がある。
(日本でもこんな大金貰ったことないぞ)
「ソラさんが討伐した魔物は危険ランクAのエートスですので、クエストの討伐依頼でしたらもっと報酬が貰えますよ」
この世界の魔物には、S.A.B.C.D.E.Fの危険ランクが付けられている。Sが一番強くて、Fが一番弱い。Aランクの魔物は上級冒険者が5人以上集まって勝てるレベルらしい。
「話は戻りますが、クエスト期限は今日までとなっています」
「わかりました。行ってきます」
「ソラさんたちなら大丈夫そうですが、気を付けて行ってらっしゃいませ」
(クエストに行く意味がなくなったんだけどなぁ〜)
俺たちが、クエストを受ける理由は、旅をする為に、お金を集めるためだった。
そのお金が集まったのだ。クエストを受ける理由がない。
(まぁいっか)
俺はリラと初クエストに向かった。




