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ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。  作者: Sakusaku


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4: 業務について話し合うための会議を予定する

 005


 目も当てられない状態で目が覚めた……正直に言うと、昨夜何を言ったのかほとんど覚えていない。


「はあ………」


 目をこすりながら起き上がると、メールが届いていた。


『放課後、ジリンカフェで会いましょう……』


 送り主は……菅原……サメ……


「誰だっけ……」


 昨夜、女の子に会ったような気はぼんやりとするのだが……このメッセージを送ってきた子と同じ人物かどうかも定かじゃない。


「放課後って……今何時だ……」


 時計を見ると、もう午後だった。


「……そんなに酔ってたのか、俺」


 階下に降りると、食卓の上にラップをかけた朝食が置いてあった。


 妹のメモには「遅起きしないでくださいね、お兄ちゃん……全部食べてね……せっかく作ったんだから」と書いてあった。


 彼女はいつもこうしてメモを残す……俺とはあまり話さないから。


「………はあ……」


 朝食をレンジで温めて食べ、それからシャワーを浴びた。




 俺は高校時代の制服に着替えた。


 長袖シャツに紺色のニットベスト、黒いスラックス。黒いブルーライトカットメガネを額に乗せ、右耳だけピアスをつけた。


 この格好をする理由は単純だ……もう一度10代に戻りたいだけ。高校時代に制服を着ていたのも俺だけだったが。


「ちょっと出てきます……」


 菅原という女の子にどこの学校か聞いてみると、宮嶋私立女子高等学校と返ってきた。


「あれ……じゃあこの子、俺の後輩じゃないか……」


 俺と妹も同じ学校に通っていた。同じ学校の子に会うとは思わなかった……


 俺が通っていたのは普通の私立校で、ある程度裕福な家の子しか通えない学校だった。そこそこ整った環境のお嬢様学校だったが、どうやら共学から女子校に変わったらしい。さらに宮嶋私立芸能学校の分校もあり、学内アイドルグループのコンテストも開催されていた。


 俺がそこに入れたのは青山という苗字のおかげだった……かつて商家として栄えた由緒ある家柄で、俺と妹は二人とも中学からここの入学枠をもらっていた。


「校門の前で待つのがいいか」


 校門の前に立ってタバコに火をつけた。しばらく吸っていると、何かが「やめろ」と告げているような気がした。


 しかし俺は気にしなかった……そのまま吸い続けた。


 やがて下校のチャイムが鳴り……生徒たちが次々と出てきた。何人かが俺を、まるで変質者でも見るような目で見ていた。


「ここ女子校だったのを完全に忘れてた」


 やがて一人の女の子が姿を現した。どこへ行っても忘れるはずのない、短い銀髪の女の子。


「おい……君、菅原か?」


「あ……えっと……」


「菅原さん、この人誰?」「あなた誰ですか?……怪しすぎるから通報しますよ……」


「えっ」


 ただ声をかけただけで……通報されるのか。


 彼女は慌てて俺の手を掴むと、その場からさっさと離れた。


「ごめんね!今日用事があって……じゃあね!!」


「あ……うん」


 何なんだこれは……


 ジリンカフェにて。


「聞いてください!……わたし、VTuberのことは他の人に隠してるんで……絶対に喋らないでくださいよ……」


「待って!俺はそんなこと言うつもりは全然ない」


 昨夜何をしたのか、少しずつ思い出してきた……俺はこの子にVTuberにしてやると約束していたのだ。


 しかも告白までしていた。


「それなら良かったです……はい、これ」


 彼女がモバイルバッテリーを返してきた……そうか、昨夜別れるとき持って帰るのを忘れたんだった。


「……一つ聞いていいか?……なんでVTuberになりたいのか、だけど……」


「お答えできません……」


 ……何か事情があるんだな……まあいい……他人のプライベートには踏み込まない。


「じゃあ仕事の話をしよう……頭の中にモデルのイメージはある?キャラクターは考えてるか?」


 学校へ向かう道中でYouTubeのVTuberをいくつか見てきたので、多少はわかってきた。


「もうモデルのラフは描いてあります……正面、横、後ろ、衣装の各パーツも……」


「へえ……上手いな……」


 描かれていたのは、サメの着ぐるみを着た小さな女の子のキャラクターだった。青い髪に青い瞳、鋭い牙。顔立ちは本人に負けず劣らず愛らしい。設定には「サメから人間に変異したため、生活費を稼ぐためにVTuberとして人間社会で暮らしている。ゲームとお絵描きが好き」と書いてあった。


「ところで……サメモデルのVTuberって、もういるんじゃないか?」


 たしかかなり有名な子がいたはずだ。


「サメモデルのVTuberは31人もいるんですよ……一人増えたって別にいいじゃないですか」


 苗字がサメで、サメも好き……なかなかのギャップだ。


「サメが好きなのか……」


「好きですよ……サメってかっこいいじゃないですか……自慢するわけじゃないけど、世に出たサメ映画は全部観てますから……」


「ほお……」


 成田良悟先生(『デュラララ‼』『Fate/strange Fake』著者)かよこの子……もし二人が会ったらサメ映画トークで盛り上がること間違いなしだな。


「じゃあ……モデルのデザインは決まった……絵を描くのは君に任せよう……」


「わかりました……」


「次はモデルを動かせるようにする人……業界に知り合いが多少いるから……連絡してみる。安心してもらえるように、なるべく女性の人に頼んでみるよ……」


「ありがとうございます……」


「機材については……ウェブカメラ、モニター二枚、高スペックのPC……合わせると五十万円は超えるな……」


 彼女はまた暗い顔になった……


「お金のことは俺が何とかする……」


「い……いいんですか!」


「VTuberとして活動を始めたら……自分を売り込んで有名になれ……そうしたら、その時でいいから返してくれ……」


「……頑張ります!……」


「よし!」


「ここまでしてくれて……本当にありがとう」


「まあ……約束したからには……やり遂げないとな……」


 彼女はしばらく黙っていた……それからぽつりと言った。


「青山……さん……」


「アキトでいいよ」


「じゃあ、アキトさん……昨夜のこと……告白してくれたじゃないですか……」


 タバコが手から落ちそうになった……言い間違いだったと言い訳することもできる……でも一度言ってしまった以上、もうどうにもならない。


「その……すぐに付き合うのはちょっと早い気がするから……とりあえず……お互いのことをもっと知ってからでいいですか……」


 様子を見るってことか……まるで婚約みたいだな。


「いいよ……俺は全然構わない……」


「そうですか……」


 そして彼女は微笑んだ……花が咲いたように、美しい笑顔だった。

ふと自分の子供時代を振り返ることがよくあるのですが、アキトはそうした「過去を省みる自分」を体現する存在であり、一方のサメちゃんは未来へと突き進もうとする子供です。そんな対照的な二人の心が、彼らを引き合わせたのです。

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