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ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。  作者: Sakusaku
ARC 2:才能あふれる「バッドガール」にして小悪魔なVTuber、リリロア・ ララ。

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32: 悪戯っ子な後輩と声なき少女 2

 033


「へえ……榎本さんって合気道やってるんですか!? あ! 忘れてた……手話……使わないと……」


 渋谷のあるカフェで……知り合ったばかりの二人の女の子が楽しそうに話し込んでいた……


「ふふ……ルリ……カワさん……って……面白い……人ですね……」


「へえ……あ、来た来た」


 二人が注文した飲み物が届いた……


「お待たせして……申し訳ございません……今日はお客様が多くて……本当にすみません」


 それを聞いたルリは、きょとんとした様子で尋ねた。


「え……これ、遅かったんですか……?」


 そう言いながらユリカのほうを振り返ると、ユリカは首を横に振った。たいして遅くなかったという意味なのだろう。


「それとも私たち、話が盛り上がりすぎて時間忘れてたとか……?」


「はは……はははははは!」


 二人は笑いが止まらなくなり、店員さんはどうしたらいいか分からない様子だった……


「えっと……あの……」


 店員さんの顔立ちはまだ幼く……夏休みのアルバイトの学生に違いない。だからこういう場面への対応に慣れていないのだろう。


 店員さんの様子を見たユリカは、スマホを取り出してメッセージを書いた……


 〔大丈夫です……お仕事お疲れ様です٩ (๑❛ᴗ❛๑) ۶ ファイトー〜〕


 ユリカのメッセージを読んだ店員さんは、顔を赤くしてすぐに笑顔になった。


「あ……ありがとうございます……!」


 ユリカは店員さんに手を振った。ルリはその光景を瞬きもせず見つめていた。


 ユリカは首をかしげ、どうしてルリがそんなに見つめているのか不思議に思ったが、ルリはスマホをいじるふりをしてごまかした……


「んー! 美味しい!」


「……んー……」


 二人はそれぞれ自分の話をしながら、飲み物をちびちび飲んでいた……


「そっか……お家は……道場……なんですね……」


「はい……私自身……両親から……次の……後継者に……なるよう……期待されてるんです……」


「そう……」


 わずかではあったが、ユリカが道場の継承について話した瞬間、その表情が少し寂しげだったことにルリはすぐ気づいた……


 この子……私と同じなんだ……


「……」


「それじゃあ……つまり……ユリカさんは……大柄な男の人も……投げ飛ばせる……ってことですね……」


 ユリカは一瞬呆気に取られた顔をしたが、すぐに気を取り直した。


「無理……ですよ……それは……映画の中……だけの……話です……」


「え……見てみたい……です……あなたが……悪者の……首根っこを……蹴り飛ばす……ところ……」


「あはは!!」


 彼女は笑った……


「やっ……笑わないで……ください!!」


 ルリはとても恥ずかしくなり、照れ隠しに飲み物を飲んだ……


「ルリ……カワ……さんって……本当に……面白い……人ですね……」


「ちょっと!……」


 ルリの声が少し大きすぎたようで……店中の人が二人のほうを見た……


「………あの……」


「………………」


 二人は顔を見合わせ、それからお互いを指差した。


「彼女が悪いんです!」


「あ!!……」


 店にいたカップルたちは二人に微笑みかけてきた……笑っている人もいて……


 ユリカとルリはしばらく呆然としていた……


 この二人はまったく気づいていなかった。店にいた全員がすっかり二人に見惚れていたことに……まったく……なんとも可愛らしい二人だ……


 店中のそんな反応を見て、二人は顔を見合わせ、また笑い合った……


 そして二人は店を出た。


「つまり……ルリ……カワさんは……家の……野菜運送会社を……継ぎたく……ないんですね……」


「はい……私……誰かに……あれこれ……指図されるのが……嫌いなんです……」


「……………」


「なんというか……小さい頃から……よく……両親に……あれもダメ……これもダメって……言われ続けてて……いつも……私の将来の……道を……勝手に決められて……」


「東京に……来てから……友達もできて……先輩にも……出会えて……すごく楽しかった……です……でも結局……私は……」


 ルリの表情はとても暗かった……同じ境遇にあるユリカは、その気持ちがよく分かった。


 だから彼女はルリの頭を優しく撫でた……


「よしよし……」


「…………」


 そしてすぐにメッセージを書いた……


「大丈夫ですよ……あなたはちゃんと乗り越えてきたじゃないですか……ε=== (っ≧ω≦) っ」


 ルリの心はすぐに軽くなった……


「あの……その絵文字、女の子口説く時に使うやつですよ」


「あ!!! あああ!!!」


「はは!!」


 自分がからかい返されたと気づいたユリカは、すぐに頬を膨らませて拗ねた。


「ふふ……可愛いなあ……」


 二人はいつもの道を歩いていた……ユウタが二人が一緒に歩いているのを見ていることには、まったく気づかずに。


「どうしたの?」


「いや……別に……」


 彼は今日もこっそりいつもの「レンタル彼女」とデートしていた……


「あんたさぁ……こんな可愛い『彼女』がいるのに、まだ他の女に目移りするわけ?」


「え? してないって……」


「じゃあちょっとお仕置きしないとね……今すぐ水族館連れてって」


「ちょっと待てよ……ゲームセンター行くはずだったろ……」


「やだ……もう飽きた……早く連れてって……」


「はい……彼女様……」


 ほとんど毎回こんな調子だった……


 ユリカとルリは話しながら歩き続け、ある路地に入ってしまった……そこには不良が四人、タバコを吸いながら立っていた。


「あ……」


「ん?……」


 不良たち四、五人は二人の女の子を見て、怖い顔をした。


「どこ行くの、お嬢さんたち……俺らと遊んでいったほうがいいって……」


 不良漫画から抜け出てきたような、お決まりのセリフだった……


「……すみません……道を間違えました……」


 ルリはユリカの手を引いて立ち去ろうとしたが……不良たちに先回りされて行く手を塞がれた……


 しかも四人のうち一人がナイフを取り出して脅してきた……


「なあ……お嬢ちゃん、そのスカートの中のパンティー脱いでくれない?」


「そんなに長くはかからないって……一時間くらいだから」


「一時間って何だよ! 俺ら四人いるんだから四時間だろ」


「二人いるから二倍……つまり一日中、いや一晩中付き合ってもらうってことだな……へへ……」


 ナイフを持った男はユリカの首元にナイフを突きつけ、スカートをめくろうとした。


「やめなさい!」


 ルリはユリカに触ろうとする不良の手を払いのけたが、代わりに強く頬を叩かれた……


「………うっ!!! うっ!!!!」


 ユリカも相手に立ち向かおうとしたが、すぐに頬を叩き返された……


「抵抗するなよ……助け呼んでみろよ……死体と一発やることになるだけだぜ……」


 相手は平然とした顔でおぞましいことを口にした……その言葉を聞いて、残りの三人も笑い始めた……


 ユリカに手を出そうとしていた男が、たまたま別の方向を向いた瞬間、ユリカは相手をつついた。


「ん?」


 そして彼女は思い切り相手の顔を殴りつけた……不良の鼻はぐしゃりと折れた。


「ぎゃああああ!!!!」


「てめえ!……」


 ナイフを持った男がユリカに切りつけようとしたが、彼女は華奢な手で相手の手首を叩き折り、ナイフは地面に落ちた……我に返ったルリはそのナイフを遠くへ蹴り飛ばした。


 ユリカは二、三度跳ねると、ナイフを持っていた不良の顔めがけて蹴りを放ち、たった一撃で気絶させた……


 彼女は立ち尽くす残り二人の不良を、本物の殺気を込めた目で睨みつけた……


 不良の一人が左右を見回し、ルリを人質に取ろうとしたが、ユリカのほうが速かった。


 彼女は走り出し、もう一人の不良の顔を殴った……


「うおおおおお!!!!」


 そして最後の不良を掴み、地面に思い切り叩きつけた。


「ぐえっ!!!!」


 さらに相手を思い切り踏みつけた……


「はぁはぁ……」


 四人全員が気絶したことを確認すると、ユリカはすぐにルリのもとへ駆け寄った。


「あ……あ!!!!」


 今は少し動揺していて、慌てすぎて手話がうまく使えなかった。でもルリは相手が何を言いたいのか、なんとなく察することができた。


「大丈夫です……私、怪我してませんから……」


「うっ!!! うっ!!!」


 彼女は眉をひそめ、激しく首を横に振った。そしてルリに読んでもらうためのメモを書いた。


「ダメです!……傷口が感染したらどうするんですか! (≧Д≦)」


「…………」


「ふん!」


 そして彼女はルリの背中を押して路地から連れ出した……


「ど……どこ行くんですか、これ!!」


「うっ!! うっ!!」


 たぶん、手当てしに行くという意味だろう。


「ありがとうございます……」


 幸い、コンビニで救急セットが売られていたので、二人は近くの公園のベンチに座って手当てをすることにした……


「うーん……」


「あの……榎本さん……」


「うん?」


「その……さっき助けてくれた時……あなた……かっこ……かっこよかったです!!」


 それを聞いたユリカは、まるで満開の牡丹の花のように、満面の笑みを浮かべた……


 彼女はまた手話を使った……


「あなたが……私を……守ろうとしてくれた時も……かっこよかった……ですよ……」


 二人はお互いに微笑み合った……そしてルリは、ユリカを彼女の家の道場まで送っていった……

実は、百合ジャンルでこういうキャラクターを書くのは今回が初めてなんです。皆さん、この百合カップリングは気に入っていただけましたか?正直なところ、この二人を思いついたのは高校生の頃だったんですが、実際に執筆に取り掛かったのは21歳になってからでした(笑)。

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