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ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。  作者: Sakusaku


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10/23

10: 昔の友人に会いに行きます……

 011


「よ……バルちゃん」


 [あれ……誰かと思えば、お前か]


 水曜日の朝、お客さんのところへ行く前に……学生時代の別の親友に電話をかけた。彼は少し変わったところがある……でも、性格が変わっているわけじゃない。


「お前はまた番号変えてるし……やっと繋がったと思ったら、西尾に頭下げて番号聞き出さないといけないんだから……」


 [しょうがないだろ……俺の社会的立場上、同じ番号をずっと使うわけにはいかないんだよ]


 そう……この友人、久志昴は、関東一帯に影響力を持つ久志組のトップだ。これほどの勢力を誇るのは、他の組がすべて消えてしまったからでもある。先ほど名前の出た西尾は、今は恋人のキヨミちゃんと二人で私立探偵をやっている後輩だ。なかなかかっこいいコンビだと思う。


「更屋敷のお嬢さんもそうだよ……まあいい……ところで車いっぱい持ってるだろ?……一台貸してくれないか……子どもたちをコミケに連れていこうと思って……」


 [まあ、いいけど……お前、免許持ってるよな?……もし警察に止められて車の出所を調べられたら、生かしておけないからな……]


 静かに人を脅すこの喋り方……まったく変わってないな。


「とっくに取ってるよ……心配しなくていい……それで、貸してくれるよな?……」


 [ファミリーカーならあるけど……夕方に取りに来ればいいよ……]


「ああ……あと、忘れてた……十七日に、星野の結婚のお祝いを兼ねた集まりを家でやろうと思ってるんだ。できれば来てくれないか……」


 [そうか……もう結婚式も近いな……旧友にもずいぶん会ってないし……あ、この!……リタ!……パパ、電話してるんだぞ!]


「え……」


 [あ!アキトおじさん!!……うちに来るの!?]


「おお!リタちゃん……久しぶりだな……声を聞く限り、ずいぶん大きくなったみたいだな……ママは元気にしてるか?」


 [うん!ママ、最近ずっとよくなってるよ……最近はみんなでピクニックにも行ったんだよ!!]


「いいなあ……おじさんも行きたかったなあ……」


 少し電話を奪い合うような音がして……


 [ごめんな……最近、毎日おじさんに会いたいって言ってるんだよ……]


「ああ……わかるよ、子どもってそういうもんだから……じゃあ夕方に行くよ……いろいろお願いすることもあるし……」


 [うん……夕方にな……こら!……リタ……]


 [またねー!!!!]


「ああ……また夕方に……」


 電話を切った……真夏の空が今にも顔を焦がしそうなくらい照りつけている。当然、今日は母校の夏服に着替えていた。半袖シャツに左胸の小さなポケット、少し薄手の黒いスラックス。


「みんな、それぞれ幸せに暮らしてるんだな……」


 菅原に会う前の自分なら、ため息をついてこう思っただろう。幸せを手にできないのは俺だけだ、と。


 でも今は菅原がいる……俺が一番大切に思っている人が。消えていた幸せが、またゆっくりと戻ってきているような気がする。


「これからも……この幸せを守っていかないとな……」



 夕方。和風の大邸宅。久志家。


「おじさん!!!」


 玄関を開けるなり、リタちゃんが全力で飛びついてきた。


「ちょっと!ずいぶん背が伸びたな……前は膝くらいまでしかなかったのに……」


「リタ!!そんなふうにおじさんに飛びかかっちゃダメよ……」


 リタちゃんは父親の言葉を一切無視した。肩によじ登って、そのままちょこんと座ってしまった。


「やったー!!背が高くなった!」


「ちょっと待て!……」


「なんの騒ぎよ……あら……どうしたのアキトくん」


 淡い青色の髪をした、体の弱そうな女性がリビングから出てきた。


「よ、スミちゃん……具合はよくなった?」


「うん……」


 彼女はバルちゃんの奥さん、久志澄だ。体があまり丈夫ではない……高校時代にバルちゃんの子を妊娠して退学することになったから。まだ若かったせいか、リタちゃんを産んでから体調が優れず、それからずっと入院生活が続いていた。


 でも、こうして歩いて話しかけてくれる姿を見ると、素直に嬉しかった。


「車を借りに来たついでに……姪っ子と遊んでいこうかと思って……」


「やったー!」


 リタちゃんの部屋へ向かおうとしたとき、組の構成員が片づけをしているのが見えた。


「前田さん……」


 筋骨隆々の知人の若者に声をかけた。


「子どもの世話って楽しいですか?」


 彼は何も言わず、中指を立てた……俺は笑いながら、リタちゃんの部屋へ上がった。


 ---


「ね、おじさん!……一緒に踊ろうよ!」


「踊り?……おじさんはちょっと体がついていかないかも……」


「じゃあ踊ろ!」


 バルちゃんが心配するのもわかる……若いパパは大変だな。リタちゃんがYouTubeでVTuberの動画を開いた。よくフィードに上がってくるミュージックビデオで……かなり有名な曲だろう。


「これ……ゲンキちゃんじゃないか……」


「おじさん、知ってるの!?」


「これだけ有名なVTuberを知らない人はいないよ……」


「さあさあ……構えて!……曲が始まるよ!」


 俺は動画のリズムに合わせてぴったり踊ってみせた。リタちゃんは目を丸くして……負けじと踊り始めた。


「サビが来た……ここでおじさんに勝つよ!!」


「できるもんならやってみな……」


「~キュート キュート キュート!~みんな一緒に腰を振って!~キュート キュート キュート!~揺れて揺れてシェイク!~キュート キュート キュート!~わたしはダンスのプリンセス~いち……に……エレガント ドライブ!!!!!」


 曲が終わった。


「はあ……はあ……信じられない……おじさんがあんなに上手いなんて……」


「当然だろ……でもリタちゃんも上手いよ……あんな早いサビを歌いながら踊れるなんて……」


「そうかな……」


 二人で並んで話していたが……なんていうか……体のあちこちが痛い……俺まだ二十五なんだけどな。


「歌手になりたいの?」


「うん……ミュージックビデオを見るたびに、歌や踊りにすごく感動するの……かっこよく踊ってる人もたくさんいるし……だからずっと練習してるんだ」


 歌いながら踊るというのはコンサート向きで、ミュージックビデオを撮るには踊りの練習が欠かせないわけだが……


「ね、リタちゃんさ……これだけ頑張ってるんだから……おじさん的には、リタちゃんはすごいと思うよ」


「本当に!?」


「本当だよ……おじさんは、できてもいないのに褒めるタイプじゃないからな……知ってるだろ?」


「ありがとう!……もっと頑張るね……」


 彼女は俺に笑いかけてくれた……踊り疲れていたのが嘘みたいに、さっぱり消えてしまったようだった。


 遊び疲れた後、家の人たちと一緒に夕食を食べた。前の組長だったおじさんにも会えた。相変わらず優しかった。


 それから車を取りに行ったのだが……


「これが、お前んちのファミリーカーか……」


「そうだよ」


 邸宅の玄関前に停まっていたのは、メルセデス・ベンツGLS……しかもMAYBACH 600、このシリーズで最も高い仕様だった。


「お前がヤクザだってこと、すっかり忘れてたよ……」


 生きてきた中で高級車は何台も見てきたが……一度も運転したことはない。


「まあいい……どこかにぶつけなければそれでいい」


「ドアを開けるのも怖いんだけど……」


 せっかく貸してくれたんだから乗るしかない。SUVだからファミリーカーとしては正しいが、内装はどう見てもファミリーカーではなかった。


「勘弁してくれ……エアコンをつけるくらいは許してくれよ……」


 エンジンをかけるだけで体が固まった。


「またねー!!おじさん!!」


「おう!!時間ができたら遊びに来るよ!!」


 そうして走り出した……


「……ママ……」


「何?」


「ねえ、大きくなったら……アキトおじさんと結婚したいな……」


「はあ!?!?」


「ちょっと……パパをそうやっていじめないの……」


「だってパパをからかうの、楽しいんだもん……」


「ちょっと待て!!パパをそんなに驚かせるんじゃない!!!」


くそっ……祖母はいつも、貧しい家庭の子供たちを「お前なんかより何百万倍も立派だ」と持ち上げては、私が書いた小説を「ゴミ同然」とこき下ろしてばかりいた。でも、この物語が本として出版され――あわよくばアニメ化にでもなれば――その時こそ、今度は私が「あいつ」を見下してやる番だ。

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