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0008. 召喚完了。また会えたね

言われるがままに、ヨルムさんと若菜さんの後をついて行って着いた「A訓練場」は、思った以上に広く、サッカー場半面ほどの広さがあった。外壁も5メートル位はありそうだ。


これなら周りから見られる心配も無いし、外なので建物を壊す心配もない。

あとは、どうやって召喚させるんだろう。少しどうすればいいのか悩んでいると、横からヨルムさんに声をかけられた。


「こちらの世界に来たばかりで、どうやって幻獣を召喚させるかまだわからんじゃろうから、簡単に教えてやる。まぁ、大したことではないんじゃがな。召喚は詠唱しても、無詠唱でも大丈夫じゃ。

召喚したい幻獣を強くイメージすると、『カチッ』と繋がった感覚ができる。そうなったら、召喚したい場所を決めて『召喚』と念じれば、現出できるはずじゃ。

もし召喚できなければ、繋がりが不完全か、召喚場所が確定できていないかのどちらかじゃ。もう一度、やり直せば良いぞ」


なんか思ってたのと違うけど、聞いた感じは簡単そうだ。

それじゃぁ、さっそく狐火ちゃんを召喚して、一緒にモフモフりながら楽しみますかね!


念のため、私から5メートル位離れたところに狐火ちゃんを召喚しようとイメージしてみる。

んっ、何か繋がった?微妙な感じだけど、とりあえず初めてだから、このままやっちゃうかな。


(――『召喚』っと)


さすがに某アニメのように、仲間をボールから出すときに大声を出すのは恥ずかしいので無詠唱にした。

アレ?何か、召喚しようと思ってた先が一瞬光ったけど、召喚されていない。


「おっ、惜しかったな。最初でそこまでいければ、すぐに召喚できると思うぞ。もう少しイメージをハッキリさせ、繋がりを強くすれば大丈夫じゃ」


なるほど、的確なアドバイスだ。

さて、さっきよりも明確に、狐火ちゃんの姿を心に描いてみよう。


(BGM:挿入歌『光の中から、おかえりなさい!〜至高のモフモフ再臨〜』開始)

※最初はハープやクリスタルボウル、静かなストリングスを用いた、神秘的でアンビエントな和風オーケストラ。広い訓練場の静寂の中、ゆったりとしたアルペジオが響き渡る。

(ポロン……、ポロロロロン……)


目を閉じ、息を潜めて、意識を集中させる。

思い出すのは、九つの尻尾。ほむらのあたたかさ。極上の毛並み。


おっ、ほんとだ。さっきよりも繋がった感じが強くなった。

ストリングスが重なり、徐々に魔力が高まっていくような、力強い音楽が頭の中でクレッシェンドしていく。


心の奥で、確かな『カチッ』という音が鳴った。見えたよ、繋がりの糸。

(AI・ファイ0027の秘匿ログ:警告。個体名『琴音』の【魔使力SSS】が周囲の魔素を強制収束。親和性補正により、通常の召喚シークエンスを『神話級(Mythology)』へ書き換えます)



これならいける!


私は目を見開き、心の中で叫んだ。


(――『召喚』ッ!!)

(サビ直前:音楽がふっと止まるブレイクの直後、眩い光を思わせるウィンドチャイムとシンバルの音が炸裂! ピアノとブラスを加えた明るく壮大なポップオーケストラへ!)

(シャララララランッ!!ズバーーーン!!)


その瞬間、頭の中で流れていた音楽がふっと止まった。

一瞬の静寂ブレイクの直後。


眩い光を思わせるウィンドチャイムとシンバルの音が鳴り響き、一気に明るく、感動的なオーケストラポップスが私の脳内で弾けた!


さっきと同じ場所に、冗談みたいな太さの、虹色と金が混ざり合った巨大な光の柱が上空に向かってブチ上がった。

あまりの光量に視界が真っ白に染まり、六花の街全体の空間が一瞬歪んだような感覚さえある。



眩い光を思わせるウィンドチャイムとシンバルの音が鳴り響き、一気に明るく、感動的なオーケストラポップス(『光の中から、おかえりなさい!』)が私の脳内で弾けた!


さっきと同じ場所に、先ほどよりも遥かに強い光の柱が立ち昇り、その中から――愛しの狐火ちゃんが現れたのだ!


「おかえりなさい、私の狐火きつねびちゃん!!」


私は駆け寄り、思いきりその小さな体を抱きしめた。

ふかふかの毛並み、極上のぬくもり。やっぱりモフモフは絶対の正義ね!超Kawaii!!


少し離れた場所で、ヨルム支部長と若菜さんは言葉を失い、石像のように固まっていた。

あまりに規格外の光景に、叫ぶことすら忘れてしまったかのように。


「……若菜、見たか。あれはただの召喚ではない……『神降ろし』に近いぞ」

ヨルムが絞り出すような小声で囁く。その額には、一筋の冷や汗が流れていた。


「ええ、支部長……。訓練場の外の廊下で、警備員たちがプレッシャーに耐えかねて跪いている気配がします。……まさか、これほどまでの威光とは」


「お前さんはすぐに、本部への報告書を書き直せ。それと、あの娘を……琴音を、絶対に不機嫌にさせるな。今の召喚は、彼女の『歓喜』が魔素を増幅させた結果じゃ。もしあれが『怒り』だったらと思うと……ゾッとするわい」


二人がそんな密談をしていることなど露知らず。


私にとっては「愛しいモフモフとの再会」なのだ。周りの目なんて気にしてられない。

私は狐火ちゃんの首筋に顔を埋め、ゴロゴロと喉を鳴らす音を堪能しながら顔をほころばせた。


「おっ、うまく召喚できたようじゃな。やはり、お前さんの幻獣は『正三位』かぁ。カードでわかってたとはいえ、実際に見ると違うな。

それと、召喚は練習すればもっと早くできるようになるから、練習を怠るなよ。戦いのときは、瞬時に追加召喚出来ないと、死ぬことになるからな」


「召喚って、みんな練習しないと出来ないの?全員、こんな練習したの?それと『正三位』って、何?」


「いや、神格の低い幻獣は、練習をせずとも召喚できるし、召喚までの時間も短いぞ。じゃが、琴音が仲間にしたような神格の高い幻獣は、主との繋がりを大切にしている個体が多いと聞いとる。

そのため、繋がりをしっかり作るために練習が必要なんじゃ。練習しないと今みたいに召喚するまでに時間がかかってしまうぞ」


なるほどね。今回の件でクレームが来る前に非召喚にして、繋がりをしっかり認識しないと召喚出来ないということを認識させつつ、練習を含めて、この話を聞かせようと思ったのね。


「それと『正三位』は、この冬早国での神格の格付けじゃぞ。国によって神格の格付け表現が違うから、お前さん達異邦人は気にする事はないと思うが。

気になるなら、図書室にでも神格の序列を説明している本があるから読んでみてくれ。それにお前さん達だって、『SR』とか『SSR』等と呼んでおるじゃろ」


「なるほどね、わかったわ。それにしても、見ただけでよく正三位ってわかったわね」


「あぁ、それはちょっと秘密じゃが、わしは『神格のオーラ』が見えるのじゃ。オーラの色合いでお前さんの幻獣が正三位ってわかったのじゃよ」


「ちょっと秘密って……私に言ってよかったの?簡単に話してもいいことじゃないんじゃない?」


「琴音さん、嘘ですよ。支部長の能力は秘密でも何でもないので、自由にしゃべっちゃってください」


横から、若菜さんの冷ややかな声が飛んできた。


「支部長、初めての人にウソ付かないでください。相変わらず、毎回毎回そのようなことをして何が楽しいのですか」

「えぇじゃんか、こう言っとけば、わしへの尊敬の念が出とったのに……毎回邪魔しおって、若菜は。若菜の言動はあれか、好きな子に意地悪したいっちゅう、人族の感情文化なんじゃろ」


「支部長。私にそのような感情は一切ありません。毎回言ってますが、その発言、セクハラになりますよ。今回も本部への報告案件に足しておきますから。本部にキツく怒られてくださいね。何度も怒られてるのに、変わらないクサレオヤジがぁ!」


ぐっ、なんだこの幼稚園児を叱るようなやり取りは。

若菜さんの目が猛吹雪の北極のような感じで支部長を射殺せそう。若菜さんは、怒らせちゃいけない人なんだね。

しっかりと心に「怒らせない」と誓いを立てておこう。

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