↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】八百万の幻獣物語 〜「ただモフモフしたいだけなんです!」愛とスキルを『モフモフ』に注ぎ込んだ戦闘力ゼロの社畜OL。懐かれすぎた神獣とのスローライフの裏で、今日もギルドが胃痛で泣いています〜  作者: 蒼葵美
【第5章】 愛着のオーバーフロー:生産ギルド編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/61

0048. 初調合も無事に完了

「……さあ、アンネさん。この『とっても美味しそうなタレ』を、スライムさんのコアにかけちゃいますね!」


私は琥珀色に輝く――生産ギルドの常識と物理法則を「圧倒的な旨味」で蹂躙した――安定剤の小瓶を手に、作業台の上で神々しく光る虹晶(こうしょう)スライムの神核に向き合った。


「……かけちゃいますね、じゃないわよ。それは調合界の禁忌(アボミネーション)よ。……でも、もう止めないわ。止める気力が、今の私には1ミリも残っていないもの」


アンネさんは特級調合室の隅で、真っ白な灰のように燃え尽きて椅子に深く沈み込んでいた。その手元には、なぜか彼女自身が無意識のうちに、ギルドの公式台帳へ『本日の献立:極上・幻獣白湯(ぱいたん)スープ』と書き込んでいるメモが握られている。


(BGM:『奇跡の仕上げ 〜穏やかなハープ〜』開始)

※激しく吹き荒れていた魔力の光が収まり、釜の中から「神話級」の輝きを放つ成果物が現れる瞬間に流れる清らかな旋律。これまでのドタバタを浄化するようなハープの繊細な調べが、理外の存在(オーパーツ)が誕生した神聖さと、それを作った本人の無垢な愛情を象徴する「究極の癒やし」のBGM。


「えいっ」


私が小瓶を傾けると、とろりとした極上の安定剤(スープ)が、虹晶コアの表面を優しく、そして美味しそうに包み込んだ。

その瞬間、単なる「魔力安定化」とは一線を画す、未知の現象が起きた。


【System Detect:高次元コアとバグ成分(極上旨味)の融合を確認】

【System Process:魔素の暴走を抑制……いいえ、『圧倒的な満足感』による強制鎮静化を開始します】

【Stabilization Status:100%(Gourmet Satiety / 満腹度カンスト)】

【Result:The Core has stopped vibrating due to 'Feeling Full'.(結果:コアは『お腹いっぱい』のため、活動を完全停止しました)】


「……あ、光が落ち着きました! ギラギラした虹色だったのが、なんだかポカポカ温かい夕焼けみたいな色になりましたよ、狐火ちゃん!」


「クゥーン(……腹八分目って感じだな)」


狐火ちゃんが満足げに尻尾を振ると、調合室を埋め尽くしていた殺人的な魔圧が嘘のようにスゥッと消え去り、代わりにこの世のものとは思えない『安心感(と猛烈な空腹感)』を誘う香りが部屋を優しく満たした。


虹晶コアは今や、周囲の魔素を吸い取って生態系を狂わせる怪物ではなく、ただそこに存在するだけで周囲の者を「幸せな空腹」へと誘う、平和すぎる(?)秘宝へと生まれ変わったのだ。


---


「……はい、アンネさん。これでお片付けも完了です! ギルドの倉庫に入れても大丈夫になりましたよね?」


「……ええ、そうね。魔圧は完全に消え去ったわ。もう何も怖くないわ。……台帳には『精神安定効果(飯テロ)を伴う特殊安定化コア』とでも書いておくわよ。……嘘は言っていないもの。この匂いを嗅いだら、戦う気なんて失せてお腹が鳴るだけだわ……」


アンネさんは幽霊のような足取りで立ち上がると、震える手で夕焼け色に輝くコアを受け取り、厳重なロックのかかったギルドの最高機密金庫へと運んでいった。


「アンネさん、色々教えていただいてありがとうございました! 狐火ちゃんとの初調合、とっても楽しかったです!」


「……そう。それは本当に良かったわね。……お願いだから、今日はもうまっすぐ宿に帰って。私はこれから、この特級調合室に染み付いた『美味しすぎる匂い』を消臭するために、一晩かけて無臭化の激薬を散布しなきゃいけないのよ……。でないと、明日から職員たちがここを『お昼寝兼お食事ルーム』にしちゃうわ……」


「あはは、アンネさんは冗談が上手ですねぇ。お疲れ様でした!」


私は元気よく手を振り、狐火ちゃんと一緒に生産ギルドを後にした。

夕暮れの街を歩きながら、私は自分のステータス画面に新しく追加された『生産ギルド:虹光の零位』の文字を眺め、幸せな気分に浸る。


(BGM:『穏やかな終幕 〜のどかなフルート〜』開始)

※極限の緊張状態から解放され、実験室を後にする際の安堵感を表現した楽曲 。フルートののどかな音色が、再び琴音の日常(スローライフ)が戻ってきたことを告げ、心地よい疲労感と共に次なる旅路への期待を繋ぐ、作業を締めくくるにふさわしい終幕の調べ。


「今日はうまく安定剤も作れたし、虹光の零位にもなれたし、とってもいい一日だったわね!」


「クゥ!」


私がのんびりと宿へ向かっているその裏で。

生産ギルドの全職員が「なんだこの天国のような匂いは!」「腹が減った! 厨房はどこだ!」と鼻をヒクつかせ、仕事を放り出して暴動一歩手前の騒ぎになっていたことなど、私は知る由もなかった。


私の「のんびりスローライフ」は、着実に、けれど決定的に、世界の常識を美味しく塗り替えながら進んでいくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。